ブッダの教えとマインドフルネス③ 「心」を観察する

先回まではマインドフルネスの確立のために「身体」(第1回)と「感覚」(第2回)を観察することの話をしました。今この瞬間にマインドフルになることになれると、次の段階では「心」そのものにマインドフルネスを向けることができるようになります。

さて、ここでいう「心」とはわかりやすくするために意識の中に生じている感情、そして思考(認識)と捉えます。マインドフルネスが高まると自ずと、自分の心において生じることにも気づきやすくなるでしょう。PCに例えるならばメモリが増設されたようなイメージでしょうか。

心の観察の一つ目は「感情」です。ビジネスの文脈においても感情を上手く扱えることの必要性は認識されているところです。とはいえ、感情とはなかなかにやっかいなもので、上手に扱える人は少ないでしょう。だからこそマインドフルネスになることが大切です。感情に意識的になれていないと、いつの間にか大きな感情の波に呑まれたり振り回されたりするものです。感情を適切に扱うには、生じている感情にマインドフルになり客観的に眺めることが必要です。

練習としては普段のように座り、呼吸や感覚ではなく、自分の中に生じている「感情」に意識を向けてみます。感情を普段から抑圧している人には最初は難しいかもしれませんが、マインドフルネス瞑想を続けると自ずと感情への知覚も高まるでしょう。さぁ、今この瞬間あなたの心にはどのような感情が生じているでしょうか?怒りを見つけるかもしれませんし、悲しみや寂しさ、喜びを見つけるかもしれません。感情は一つというよりも、複数同時に生じることも多いでしょう。それがネガティブなものであれ、ポジティブなものであれ、見つけたら素直にその感情があることを認めてみます。自分が感情を持っていることを認め(実はこの段階ですでに感情に呑まれずに適度な距離ができます)、ただその感情が生じていることを観察しましょう。呼吸や感覚と同じでこれもまた変化する現象にすぎません。感情は認め、客観的に観察できると自ずと浄化されていく傾向にあります。

心の観察の二つ目は「思考」です。今この瞬間、あなたの心にはどのような思考が生じているでしょうか?マインドフルネス瞑想を始めて驚くことは、自分の心に自動思考(雑念)がたくさん生じていることに気づくことです。私たちが主体的に心をコントロールしているようでいて、以外にも多くの自動思考に影響を受けていたりします。マインドフルネスが高まり、自分の中で生じてくる思考に気づく余裕が出てきたら、その思考をあるがままに観察してみましょう。この時、思考について考えたり、分析したりはしません。思考がまるで水の底から湧いてくる泡のようにやがては水面に出て消えていくのを見守りましょう。必要のない思考や思い込み、ネガティブな思考がまたネガティブな感情を作りだしているサイクルに気づくことができるかもしれません。

感情や思考がクリアーになることは仕事においても相乗効果を生むとともに、仕事をしながら自分の心が自ずと成長していくというサイクルに入ることも意味するでしょう。

次回は「心のプロセス」、仏教の中では「ダルマ」と言われる自然法則の観察に触れていきます。

松村 憲

ABOUTこの記事をかいた人

瞑想経験15年以上。大阪大学大学院博士前期課程修了。認定プロセスワーカー。臨床心理士。
マインドフルネス瞑想の土台となっている10日間のヴィパッサナー瞑想リトリート(※)に15回参加。タイ、インドなどの長期りトリートで修行を積む。
 深層心理学のユング心理学にルーツを持つプロセスワークの専門家。身体性やマインドフルネスを早くより研究、実践し、個人の心理のみならず、関係性やグループ、組織を対象に仕事をしている。ビジネスシーンにおいては、個人のポテンシャルやリーダーシップを深く引き出すコーチングや、バランストグロース・フェローとして専門性を活かして、組織開発やコンサルティングに従事。近年は企業におけるマインドフルネス研修にも取り組む。
著書に『日本一わかりやすいマインドフルネス瞑想”今この瞬間”に心と身体をつなぐ』BABジャパン2015、共訳書にアーノルド・ミンデル著『プロセスマインド』春秋社2013などがある。