ブッダの教えとマインドフルネス ① 「身体」を意識する

最初の数回コラムはマインドフルネスの原点である、ブッダの教えを少し紐解いてみたいと思っています。

マインドフルネスとは「気づき」とも訳され、仏教用語では「念」という言葉が当てられます。この気づきを確かなものにするためには、身体・感覚・心・法という四つに心を向け、気づきを確立することが大切になります。 今回は「身体」に注目してみましょう。

私たちが日々あたり前のように生きているこの身体ですが、古くから哲学の対象となるように不思議なものです。この身体が「在る」ということを考える、あるいは捉えるだけでも意味深いことではないでしょうか? 身体がない人がもしいるとしたら、その人は存在しているといいにくいでしょう。つまり、身体を意識することで、「私」という存在の居所がクリアーになります。現代は身体を忘れがちな社会ですが、身体を忘れると「私」の心は居所を失い彷徨うでしょう。

心の成長や進化を体系的にまとめあげたアメリカの思想家ケン・ウィルバーによれば、自我が確立して心が成熟した時、その先にあるのは心と身体の統合である「ケンタウロス」というステージになります。私たちが身体をあらためて意識する必要があるのは心理的な成長でもあるのです。だからマインドフルネスが話題になり、ヨガ、マラソン、フィットネス、アウトドアなど身体に意識を向けるような活動が盛んとなっているのだと思います。

ケン・ウィルバー(wiki)

 

身体の観察に含まれる第一のものは「呼吸」です。生まれてから死の瞬間まで続く息はまさに生命の象徴です。この呼吸が入ってくるままに、出ていくままに気づきます。今この瞬間、あなたはどんな呼吸をしているでしょう?緊張した時、どんな呼吸をしているでしょう?またリラックスしている時は?呼吸を少しでも意識する、その瞬間を日常の中に持つことがマインドフルネスへの入り口です。
他に「ここ」を意識してみてください。あなたは今どこにいるでしょう?場所、部屋のどこにいるか、空間のどこにいるかを意識することはできるでしょうか?手を挙げてヒラヒラ動かしながら、「ここに手がある」と気づいてみてください。動きを意識することで、今ここに心が定まりやすくなります。動きから身体を意識するやり方は、マインドフルネス瞑想の可能性を広げてくれるでしょう。歩く時の一歩一歩を意識してみましょう。

また、身体の一つ一つの部位に意識を向けることもできます。触れることでもいいでしょう。あるいは皮膚や筋肉や血液や内蔵や骨でさえ、新陳代謝を繰り返す中で変化し続けていることに気づきを持ってみます。私たちは自分の心にしがみつくものですが、実は身体は瞬間瞬間に変化しています。身体は自分が自然の一部だということにも気づかせてくれるでしょう。

次回は、気づきの確立に欠かせない「感覚」について触れていきます。

松村憲

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

ABOUTこの記事をかいた人

瞑想経験15年以上。大阪大学大学院博士前期課程修了。認定プロセスワーカー。臨床心理士。
マインドフルネス瞑想の土台となっている10日間のヴィパッサナー瞑想リトリート(※)に15回参加。タイ、インドなどの長期りトリートで修行を積む。
 深層心理学のユング心理学にルーツを持つプロセスワークの専門家。身体性やマインドフルネスを早くより研究、実践し、個人の心理のみならず、関係性やグループ、組織を対象に仕事をしている。ビジネスシーンにおいては、個人のポテンシャルやリーダーシップを深く引き出すコーチングや、バランストグロース・フェローとして専門性を活かして、組織開発やコンサルティングに従事。近年は企業におけるマインドフルネス研修にも取り組む。
著書に『日本一わかりやすいマインドフルネス瞑想”今この瞬間”に心と身体をつなぐ』BABジャパン2015、共訳書にアーノルド・ミンデル著『プロセスマインド』春秋社2013などがある。