【経験者に聞く】リーダーは、瞑想をどうビジネスに活かしているのか 第3回

マインドフルネスを取り入れているビジネスリーダー達は、どのように瞑想など日々の実践を行っているのでしょうか。また実践により起こった変化は? 小島美佳がビジネスリーダーにインタビューします。

第3回は、研修コンサルタントおよびロジカル・シンキング研修講師としてご活躍で、個人でもパーソナルコーチングをされている宮崎健輔さんにお話をお聞きしました。

瞑想を始めたきっかけは、本との出会い。

——瞑想を始めたきっかけについて教えてください。

苫米地英人が入り口でしたね。彼が初期の頃に書いた『洗脳護身術』(三才ブックス)。要は変性意識の生成方法、変性意識下においてどのようなことができるかというのを、科学、気功、そしてカルト教団の洗脳といった観点から多角的に見ていった本で、当時においてはかなり踏み込んだ内容が書かれていました。その変性意識の生成方法の中に、当然、座禅や瞑想みたいなのが入っていて、それを自分でやってみたのが最初ですね。

——おもしろいですね。なぜその本を手に取ろうと思ったのですか?

もともと自己啓発でコーチングの本を読んでいまして、ルー・タイスが当時アメリカでやっていたTPIEを軸に、苫米地英人が日本でも展開していたコーチングの本をたまたま手に取ったと。そこで彼を知って「おもしろい人だな。どんな本を書くんだろう、この人は?」と思って。そのうちにものすごいタイトルの本を見つけたので買って来たということですね。

好奇心の塊なので、おもしろいと思ったら突き進みました。「瞑想って何だろう?」と。

——最初に経験した瞑想はどんなものでしたか?

洗脳護身術』に書いてあった、いわゆる「深く長く、呼吸をする」というものですね。「丹田とおでこ、足先、指先に同時に集中しながら呼吸をすると変性意識になれる」と書いてあったので、それをやってみました。やってみたら、すごい感覚に入るというか、世界と自分が切り離されたというか、今までに味わったことのないような不思議な感覚があって、「あぁ、こういう感覚があるんだな。へぇ、おもしろい」みたいな(笑)

——「うわ、何だこりゃ、おもしろい!」と思って続けてみたという感じですかね。

そうですね。6〜7年前でしたが、本に書かれている通りに忠実にやったら数回でできたんですよね。好奇心の塊なので、おもしろいと思ったら突き進むって感じで。「瞑想って何だろう?」と思って、そのまま突き進んで行きましたね。

——そのあとは、どんな感じの瞑想を勉強されましたか?

世の中にはいろんな手法の瞑想があるということは、調べていくとわかるじゃないですか。例えば、お寺に行って座禅もしたし、クンダリニーヨガの本や苫米地英人のDVDを買ったり、気功をやってみたりと、本当にいろいろやりましたね~(笑)。

 

日々、軽い瞑想で落ち着きと高い集中力を取り戻す。

——いろいろ探求されてきて、最近はどんな風に生活の中で瞑想を実践されていますか?

大きく分けて2つありますね。1つは仕事で、いわゆるマインドフルネスが必要とされるような時。「落ち着いてないな」「焦ってるな」「仕事に追われてるな」という時に、少しでいいので一呼吸置く。足の裏に感覚を集中して、呼吸に意識を集中して、1分間でもいいので瞑想する。そういうのは日々、軽い瞑想としてやっていますね。もう1つの深い瞑想は、技術的な問題としてしっかりやり続けなければならないという感じですね。

——まず、軽い瞑想についてお聞かせください。仕事で「自分が焦っている」というのは、どうやってわかりますか?

体感覚ですかね。胸がざわついているとか、歩き回っているとか。焦っているから会議室へ早めに行って「集中しとこう、準備しとこう」みたいな。人が来る前にすごく考えごとをしているから、会議室の机の周りをぐるぐる廻っていたりとか(笑)。そういう時とかに体感覚で、焦っていることに気づきますね。

——他に、仕事中に軽い瞑想をすることはありますか?

集中したい時はやりますね。例えば「今から資料作るぞ」「何かに取りかかるぞ」みたいな時は、姿勢を正して椅子に座って、足の裏を意識して、丹田とおでこを意識して、30秒くらいでいいので呼吸に意識を向ける。そうすると、すーっと心が落ち着いて「よしやろう」と集中力が高い状態で仕事を始められます。

 

時には40〜50分間の瞑想で、非常に深い瞑想状態を味わう。

——もう1つの深い瞑想はどんな感じですか?

深い瞑想は不定期に「そろそろやらないと」と思った時にやりますね。昔、深い変性意識状態に入った時の体感をアンカーにして、事前に設定しておいたトリガーで取り出せばいつでもその時の体感は出せます。例えば、クンダリニー系とか大周天とか気持ちよかった時の記憶を「右手の中指の内側を親指で押す」というトリガーを作っておいて取り出すと、「おー、すごい気持ちいい!」みたいな感覚になるんですね。言っていること、ちょっと危ないと思われそうですが(笑)。

そうは言っても、日常生活の中や、オフィスの中ではやっぱりそういう感覚には没入はできないですし、アンカーの体感も時間が経つと弱まってしまいます。なので、たまにきちんと40~50分時間をとって、いわゆる座禅っぽい姿勢で、音楽を流して長い呼吸をして、深い瞑想状態を味わうようにはしています。座禅っぽい姿勢と言いながらも、僕はちゃんと足が組めないんで適当ですけど(笑)。

<宮崎健輔氏プロフィール> 法人向け教育・研修事業の営業リーダーを経て、現在は研修コンサルタント。ロジカル・シンキング研修講師。個人でパーソナルコーチングも行なっている。 グロービス経営大学院卒業。趣味はギター、瞑想、気功、読書など。

 

瞑想を6〜7年続けて身についたものは、落ち着きと俯瞰力。

——瞑想を始めてだいたい6〜7年くらいということですが、始める前と今、どんな違いがありますか?

まず、落ち着きと俯瞰力が身につきましたね。どちらかというと僕は元気のよい多動タイプで、あっちもこっちもやりたい!という感じで焦っちゃう時もあったんですけど、そういった行動が薄れていって、日々落ち着いて物事を考えられるような姿勢が身についてきました。それから、物事を俯瞰できますよね。自分の周りも含めて自分が見られるようになる。これは落ち着きとも非常に深い関係にあると思うんですけど、状況を非常に冷静に整理できるというのはありますね。

そこから応用するとおもしろいのが論理思考です。僕は論理思考の講師をやっていまして、論理思考は「イシューから始めよ」って言うんだけど、イシューって心が落ち着いてないと見つからないですよね。焦っている人が質問してくると何が問題なのかがなかなか見えてこない。つまり、心がざわついているとイシューって見つからないと思うんですね。ちょっと落ち着いて考えるだけで、「今聞きたいことはこれだな」とか「今解決しないといけないことはこれだな」という風に向き合えたり見つけられたりします。これは仕事においてとても大事なことだと思います。瞑想と論理思考って一見関わりがないように思えて、落ち着いて論理的に考えるためには、とても重要な関係にあるんです。

 

神秘的な体験も、また味わってみたいですね。

——なるほど。他にはありますか?

ちょっと別軸でいうと、深い瞑想をするといわゆる神秘的な体験をしますよね。「へぇ、すごいな、こういうことあるんだ」というのは何回か体験しているので、おもしろいですよね。その原理の説明については、神様とか宗教とか脳科学とか、いろいろあるんだと思いますけど、自分自身の体験は絶対的なものとして自分の中に残ることは確かですし、シンプルに「不思議だな」って思っています。

——神秘体験みたいなものにすごく興味を持っている人って、結構いる気がします。もう1回それを味わってみたいって。

僕もその欲求がないわけではないですね。知り合いにもいますね。瞑想し続けて、いわゆる「空」の状態って言うんですかね、目の前で何が起こっていても「別にそれって、ただ物事が起きているだけだよね」と見られるような状態に入った人が、そうじゃない状態に戻って、「やっぱりその状態にもう一度戻りたい」ってずっとそれを探求し続けていた人がいます。僕も、「空」の状態までは行っていないんだけど、クンダリニーや大周天が成功した時の、没入して全く物理世界に心がないというような恍惚とした体験は、確かに気持ちよかったですからね。だから僕ももう一度味わえるなら味わってみたいなと思いますね。ただ、家族もいて、子供がいて、後戻りできないほどの深い感覚に行くことはないでしょうね。そこにもう一度トライするのは、死ぬ1年くらい前ですかね(笑)

 

探究するにあたっては、自分を客観視することを忘れずに。

——これから瞑想を始めようとしている人に、何かアドバイスがあればお願いします。

まずは気軽に始めてほしいですね。携帯のアプリでロウソクや線香の煙を見ながらみたいなのもあるし、音楽聴きながらとかヨガとか、そういった感じで気軽に始めて、瞑想の効果をまずは味わってみたらいいんじゃないかと思います。

ただ、探究するにあたっては注意すべき側面もあるので、探究の仕方については客観視する自分を持ちながらやっていかないといけないとは思いますね。自分の意思でやっているのか、目的は何か、ということですね。

 

マインドフルネス瞑想とコーチングを使い分ける。

——宮崎さんはコーチでもあります。マインドフルネス瞑想とコーチングをどう使い分けるかという点に関して、ビジネスマンへのアドバイスをいただけますか。

マインドフルネスっていうのは自分でできる気づきだと思うんですよね。自分の身体情報から自分の心の声を聞けるということだと思っています。まずは「自分でできる範囲であれば自分でやったらいい」というのが僕の考えです。

ただ、自分では気づけないことが、マインドフルネスくらいだと結構あるんじゃないかなと僕は思っています。究極的に言えば、すごく客観的な状態に入れる瞑想をされているのであれば、それこそ自分でやっていけばいいと思うんです。でも今のマインドフルネスって「ちょっと落ち着こうね」「今の気持ちに気づこうね」くらいで出回っているので、それであればコーチングのような第三者に話すという手法で、言語を使ってきちんと情報を洗い出してやったほうがいいと思います。ビジネスの場合はなおさら他者との複雑な関係性を含むので、自分を取り巻く人間関係などについて質問をされながら「あ、そうか」と気づいていくのは有効なんじゃないかと思いますね。

——ビジネスマンにはかなり有益な情報ですね。ありがとうございました。

記:佐野まゆみ


【連載 瞑想するビジネスリーダーへのインタビュー】

 第1回 医療サービス系企業で常務を務める高橋さん
 第2回 インターネット企業 執行役員のAさん
 第3回 研修コンサルタント、ロジカル・シンキング研修講師、パーソナルコーチの宮崎健輔さん
 第4回 民間企業勤務、クリーン・ランゲージ・ジャパン認定クリーン・ファシリテーター 本田忠行さん

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ABOUTこの記事をかいた人

瞑想歴4年。大学卒業後は日用品メーカーにて、国内外のマーケティングおよび広告宣伝を担当。その後フリーランスの産業翻訳者を経て、大手英会話学校にて英会話講師、教務主任、スクールマネージャー、教師の採用育成に従事。TOEIC(R)L&Rテスト990点満点取得、英検1級合格。 2013年頃から英国スピリチュアリズムを中心に精神世界・心理学・哲学・マインドフルネスに興味を持ち、国内およびイギリスにて学びを深める。 現在はビジネスリーダーを中心に、直感コンサルタントとして人生・キャリア・ビジネス・人間関係に関するコンサルティングを行い、マインドフルネスや直感をビジネス現場や日々の生活に適用する方法を伝授。人事研修講師、株式会社ワーク・ライフバランス認定WLBコンサルタントとしても活躍中。また、個人専属の英語学習コーチとして、英語学習法のコンサルティングおよび目標達成までの伴走者を務める。翻訳協力:『マーケティングリサーチの理論と実践 理論編』同友社2006他。