リーダーシップの敵であるエゴを制御する

今回は、リーダーシップ、エゴ、そしてマインドフルネスについて考えてみたいと思います。先日、ハーバードビジネス・レビューで ”Ego Is the Enemy of Good Leadership” という記事がアップされていました。

CEOとして雇われた 一人の男性。
アシスタントから手渡されたカードで エレベーターを昇ってゆくと エグゼクティブ・フロアがある。そして、この ”特別な階” は一般社員は入ることができません。しかし、そんな中 この男性は「これだと社員の状況を知ることができない」と自分の席を 一般フロアに移すストーリーが紹介されていました。

 

誰にでも起こり得る ”傲慢性症候群”

さらっと読んでいると「そんなことは当たり前じゃないか」と思うかもしれません。しかし、一度高いランクを手にした人間の心理を覗きにいくと、そうも言っていられなくなります。

As we rise in the ranks, we acquire more power. And with that, people are more likely to want to please us by listening more attentively, agreeing more, and laughing at our jokes. All of these tickle the ego. And when the ego is tickled, it grows.  (Ego Is the Enemy of Good Leadership

 

私たちはランクを手にすると パワーを保持するようになります。
そうすると、他人は 私たちの機嫌をとり、積極的に話を聞き、賛同し、例え つまらなくても冗談を笑ってくれるようになります。こういった状態は気持ちが良く、エゴを刺激していきます。そして、エゴは刺激されると どんどん大きくなるのです。どんな方にでも例外なく発生する可能性のある心理ですよね。お金を持つ、組織での地位があがる、高級車に乗る、高級レストランで食事をする。 こんな状態のとき、あなたへの扱いは変わります。逆に お金がなく、組織における地位も低く、安い車に乗り、いつも500円以下のランチを食べていたら、あなたの心理も振る舞いも異なるはずです。

努力をして手に入れ、数年間にわたって保たれた大きなパワー。このような状態に置かれた人は、エゴが刺激され肥大化する恐れがあります。そして、この権力を奪われることを恐れ、傲慢性症候群(ヒュブリス・シンドローム)に陥るのだと言います。

 

エゴの肥大化は真実を逃すことにつながる

他者からの「肯定的なフィードバック」を常に得ていることで、人はだんだんと 視野が狭まっていくものです。私自身は エゴによって視界が曇っていくようなイメージを持っています。真実が目の前に 広がっているのに、それをありのままに見ることができなくなる。

そして、私は 高いランクを保持している傲慢性症候群的な状態だけでなく、 ランクを失いすぎた状態でもエゴは肥大化してしまうと考えています。他人を自分と比較し、自己評価を下げてしまい、自分が大切にしている美しい価値観よりも 自分を守ることに重点を置いてしまいます。このような状態でも、やはり真実を見逃すことが多くなってしまいます。

高いランクを保持した人物が なんらかの出来事によって そのパワーが揺るがされるとき、この逆パターンが起こることが多いように思います。保身に走ってしまう行為は、まさしくエゴの働きによる行動に他なりません。

 

マインドフルネス瞑想の目的はエゴからの解放

過去の記事では マインドフルネス瞑想をおこなっているとストレス軽減に役立つとか、これまでに持っていなかった視点を得ることができる…などと紹介してきましたが、仏教的な視点に立ったときの 瞑想における深い意義は 「自由」にあります。

自由の意味とは、”自らに由る” ということ。他人からの言葉や置かれている環境に関わらず、自分自身の中によりどころを見出す。上記のように、他人から気持ちの良い扱いを受けながら過ごしていると、外側に拠り所を見出してしまっていることになります。しかし、それだといつ 拠り所を失うかわかりません。(自分の中には存在しないので…)

しかし、瞑想を続けていると、自分の中でエゴが優勢になってしまっている瞬間が 把握できるようになってきます。皆さんも何かのスイッチがオフになった瞬間に さっきまでの自分の行動が 粋さや思いやりに欠けていたことに気づく瞬間があるはずです。瞑想を続けながら、ランクに執着している状態から 少しずつ解放され、しなやかで強い内側を育みたいものですね。

 

自分をエゴから解放する瞑想(イメージング)

瞑想というと 呼吸に意識を向けたり、肉体に意識を向けたりなどする方法が主流ですが イメージングなどをすることによる方法も有効です。以下は、シンプルなイメージングの例です。

① 瞑想に適したポジションをとっていただきます
② 軽く目を閉じて 呼吸に意識を向けます
③ 集中できている感覚になってきたら、「今日の自分」を舞台の観客席から見ているのをイメージします

④ 観客席から自分をしばらく観察します
⑤ 遠くから自分を観察して 浮かんでくる 思考や感情を覚えておきます
⑥ ④~⑤を繰り返します

例えば、私は 自分のある日を観察していると イメージの中で「腹の立つメールがやってきて けたたましくキーボードをたたきながら 返事を書いている」自分を思い出しました。出来る限り ニュートラルな文章になるように工夫して返信していましたが、頭からは怒りの湯気が出ていました。何度か、舞台の上の自分に集中してしまうので、観客席の自分へ意識を引き戻す作業が必要でしたが、観客席の自分は 舞台の上の自分をみて「あら、エネルギーがあっていいわね」と思いました。これは、ちょっと新鮮な感覚でした。

主役を演じるのをやめると、少しだけ別の視点を得ることができるようになります。この、異なる視点が エゴからの脱却を助けてくれるはずです。

 

マインドフルネスに関するおススメ本

ABOUTこの記事をかいた人

2003年よりマインドフルネス瞑想を続けている。 15歳までヨーロッパで育つ。慶応義塾大学を卒業後、アクセンチュアで組織戦略・人材開発のコンサルティングに従事し異例のスピードで昇進。アクセンチュア・ジャパン 史上 最も若い女性マネジャーとして抜擢される。その後、独立系コンサルティング企業でビジネス開発に携わる傍ら、キャリアコンサルタント及びコーチとして活動。不確実な時代の波を乗りこなす事業の在り方やビジネスパーソンとしての生き方について考えるようになる。 2010年、ビジネスの世界を離れて精神世界の手法や瞑想などを研究しながら年間500人以上のクライアントへセラピーを行い、自らも多くの神秘体験をする。現在は、その時の体験や視点を活かしながら 事業活動、企業のコンサルティング、カウンセリングなど幅広く展開。 監訳書として、『コーチング術で部下と良い関係を築く』、共著に『「ハイパフォーマーの問題解決力」を極める』がある。