コロナ後の働き方は? 在宅勤務の在り方とマインドフルネス

前回の『新型コロナウイルス (COVID-19) が起こす社会の変化|心理学の視点から』に引き続き、今回は新型コロナウイルスの影響と 私たちに及ぼす変化などについて松村さん、Felixさんと話していきたいと思います。

小島美佳:国内では徐々に緊急事態宣言が解除されはじめていますが、すぐに自粛が終わり元どおりの生活になるということはなさそうです。また、仕事環境がここ1-2ヶ月でかなり大きく変化してきていると思います。
まず、Felixさんが思うこと・感じていらっしゃることをお話ししていただけますか?

在宅勤務のルールがなくて戸惑う人々

Felix:まず現状では、家からリモートでつなぎっぱなしにして社内の人と会話をしたり、お客さんとオンライン会議ツールを使って話をする、というのが続いています。
そんな状況の中で、同僚の話を聞いたりテレビやFacebookなどで話題になっていることを見ていると、コミュニケーションのルールが確立していない状況で戸惑っている人が多いように感じますね。
例えば昔もあったんですけれども、電子メールが最初に出てきたときに『電子メールのお作法』みたいな話が話題になったことがありました。今はその時と同じ感じで『オンライン会議のお作法』みたいな話が出て来つつある。どんなルールが出来るのかなあ、面白いなぁと思いながら、なんとなく見ているんですけれども。

小島美佳:面白いって…例えばどんなことが起こるんですか?

Felix:例えば、自宅でオンライン会議に参加する際にもスーツ着るとか。

松村憲:おぉ、まじですか 笑。

Felix:お客さんに訪問する際でもほとんどスーツ着なくなっている身からすると、すごいなぁと思います。

小島美佳:すごい… 笑。

Felix:お客さんとミーティングする時に「失礼がないように」と会社で決めているのかもしれないし、特に決まっていないけれど適切な私服がないとか色々事情があるのかもしれません。かつて「カジュアルフライデー」が始まった時とか、着る服に悩んだことがあったじゃないですか。あれに似た感じなのかなぁと思ってます。

似たようなことは、最近ビジネスでも活用され始めているSlackとかのコミュニケーションツールでも出てきていますね。私も最初戸惑いましましたが(笑)、Slackを使い慣れている人は送る相手が決まっているんで、いちいち最初に「お疲れ様です」とか挨拶とかを入れないんですよね。でも毎回丁寧に挨拶書いている人もいたり。あと、『本当に読んでほしい案件はメールで送る』というルールがあったり。

新しいやり方を導入する際に、以前のやり方をベースにする考え方と「こっちのやり方でやれば良いじゃん」と、全く新しいやり方に変えてしまう考え方が混在して、新たなルールが形作られる面白い時期に居合わせているなぁと思ってます。

僕個人としては、初対面の人とはこれまでのルールにある程度沿って会話を始めるし、既に知っている人であれば、型式ばったコミュニケーションが減っていく流れかなと思ってます。
でも、一度も対面で会うことなく、Web会議のみで仕事を進めることも出始めています。そんな場合はどうするんでしょうね?(笑)

小島美佳:なるほどー。松村さんからは何かありますか?

リモートワークで見え始める新たな未来

松村憲:面白いなぁと思って聞いていました。
「何がいいか?」というのはまだ分かりませんが、新たなお作法とかもできつつも、無駄なやり方はこれからやっぱり淘汰されていくのかなと感じています。と言うのは、このコロナの影響でオンラインとかリモートワークの波がすごい勢いで来てますよね。

我々の在り方とか仕事の在り方自体がすごい変容期に入っている。緊急事態宣言など、外部環境が大きく変わる事が後押しになり、エッジ(古い在り方を維持していたシステムの限界点)まで来たときに「やっぱりスーツを着よう」とか「やっぱりこういうマナーは大事だよね」みたいな『前の在り方に付随した考え方に戻る』というような現象が起こるのではと思います。変化への抵抗はこのような「サイクリング」と言われる現象としてよく現れるからです。
でもやっぱり今回の変化は劇的じゃないですか。いきなり「明日からリモートです」「じゃあ、みんな家からミーティングしましょう」って言われて始まった。

僕が体験した面白いケースがありました。とてもドメスティックな企業で… まぁまぁ大きな会社で、とてもお作法とかきっちりしていて、若い人も「うちは、必ずネクタイつけなきゃいけないんですけど、古いですよね 苦笑」って言っている位、ビジネスの場ではネクタイ着用が義務みたいな組織です。それがリモートになった瞬間、そこの会社さんとやった公式のワークショップで、みんなパーカー着ていたりだとか、全然違ったわけです。若い人だけじゃなくて中年の方たちもシャツは着てたりするんだけれども、それでも「家からです」みたいな緩やかな雰囲気で。
そういう変化がやっぱり起きたと感じています。見た目の在り方の変化は、コミュニケーション スタイルの変化にもおのずと繋がっていて、議論は活性化していました。

その後どうなっているかって言うと、自分も含めてそれなりに公式の場では服装とか気を使うけれども、「スーツを着ましょう」までは行かないというか、公私混同なのかワークライフバランスなのか?っていう流れが起きてきている気がしています。それは新しくて良い方向なんじゃないかなと僕は思っています。
後は、会社に行く時はスーツを着なきゃいけない!と硬くなっていた人たちが、オンライン上でちょっと緩んだ中で対話がなされると、公私のバランスが取れて、逆にすごい主体性が出てくるという気がしていますね。

だから、これまで形式でコントロールしていた側は「こんな緩んじゃって大丈夫か?」とか「お前その格好はさすがにマナー違反だぞ」みたいな、これまでやってきたことが崩れちゃうんじゃないかと不安に思いがちです。
反対にこれまで息苦しさを感じていた人たちは、リモート化によってそうした影響から脱して、目の前に上司がいても、これまでのように萎縮しない。オンライン上で、しかもみんなラフな格好になってきたりすると、「自分はこう思います」とか言い易くなってきちゃいます。
個人的にも感じるし、他でも見かける現象です。これは見逃してはいけない今起こっている事のポジティブな側面ですよね。

(参考:『4月の自殺者数が前年比で約2割減 「職場や学校に追い込む何かが…」という声も』huffingtonpost 5/13記事)

働き方をめぐる二つの変化 (ツールの世界とメンタルモデル)

小島美佳:面白いですよねー。
このまま元に戻る事はなさそうだということはみんな薄々分かってきているから、「どんな風に変化して行けばいいんだろう?」っていうのを一生懸命考え始めたなと感じています。
変化の種類が2つあるかなと思いますね。

まず、一つ目は とにかく今の業務のやり方をそのままオンラインにシフトさせるという変化
多くの会社では強制的に「明日からリモートです」と始まってしまったので、今までの自分の仕事の在り方をそのままオンライン化へとスライドさせるっていうことをやらざるを得なかった。
だから、まずはスーツでオンライン会議に出てみて、やっぱりちょっと違うのかなあ?と感じて変化する人たちもいるだろうし、これだとやっぱりやりにくいとか、いろいろ試行錯誤が出てくるんだろうなと思います。あと、捌き切れないぐらいメールが増えちゃってパンクしてます、という声なども聞いています。これまでの業務のやり方をそのままオンラインにスライドさせると、当たり前だけど非効率になってしまう部分もある。

二つ目は、根本的な働き方の概念が変わっていくほうです。
さっき松村さんが言っていた『公私混同』と『ワークライフバランス』みたいなところで言うと、考え方とかコンセプトとかメンタルモデルそのものものが仕事をやる上で根底から変化するのではないかな。その流れている先が、何となく腑に落ちるまではいかないけれども、「こんな感じなのかも」ってちょっと仮説をもって過ごしていると、チグハグで気持ち悪い部分があったとしても「今、大きな変化の渦中にいるんだな、まずはいろいろ試してみよう。自分の考え方も変わるかもしれない」って思えて試行錯誤や不安そのものも肯定できる気がしますよね。

Felix:そうですよね、何事も経験したことがないことに叩き込まれるっていうのは悪い話じゃないと思います。そこにすごい不安を感じる人たちもいるかもしれないけれど、「なんだ、やってみたら意外と大丈夫じゃん」みたいな話が結構いろいろ出てくるんだろうなと。今後何かしら変革を行う際の説得材料として使えるのかなぁとも思っていて、「何か改革・変革をしていきましょう」って言う時にブレーキがかかることも多々あるんだけれども、「だって皆さん、リモートワークなんてすぐできたじゃないですかー」って言うその一言で「だったらできるでしょう?」みたいな話に持っていけるかなぁとも思います。そういう意味ではみんなで良い共通体験ができつつあるかな。

あとさっき松村さんが『公私混同』とか『ワークライフバランス』ってキーワードをおっしゃっているのを聞いていて思ったのが、今までは『公と私』を分ける部分があったじゃないですか。『家を出て仕事に行く』っていうポイントがこれまであって、「仕事と私生活のバランス」ということが論点にもなっていたけど、今その区分けがなくなって、「ワークも結局ライフの一部じゃん」とか、どっちとるとかバランスの話じゃないよね?みたいなことになってくるかも。今後どうなるかわからないんだけれども、「仕事とプライベートのどっちを取るんだ?」みたいな葛藤がなくなるのは、良いことなんじゃないかなと思っています。

リモートワークによって「ありのままの自己」が可能に…

小島美佳:うんうん、そうだと思います。
オフィスに入ることによって「仕事のスイッチを入れる」じゃないけれど、切り替えとか仕事モード(…人によっては戦闘モード?)を使い分けることって多分やってたんだろうなーって感じています。そこへ、急にリモートワークが来て、切り替えができない環境にぶちこまれてしまった。既にできている人もいるかもしれないんですけれども、この状況から人生と仕事がもっと調和していくっていうが起こりそうですよね。『ありのままでいられるようになる』そして『どちらも』って言う気がする。

Felix:だから結構仕事の場面で作る人いるじゃないですか、すごいがんばって自分の像を作り、「ちゃんとこうあらねばならぬ」みたいな雰囲気を出してやっている人はいると思うんだけれども、そういう人たちはこの環境では結構大変なんだろうなって思います。
威圧感出したり、「空気読んでよ」みたいなモードを出しても画面越しだと別に誰からも何も反応が返ってこない。反応がない中でどうするんだろう?っていう葛藤に今あえいでいる人たちは結構いるのかな。

松村憲:今もうすでに、『在り方チェンジ』が起こっているんだと思います。前の在り方でパワーを得ていた人たち、前のやり方でコントロールやプレゼンス、パワーを得ていた人が、困惑していると思いますね。パソコンの画面上では、今までのやり方、パワープレイは効かないんだなっていうのはとても感じます。

あとさっきの美佳さんの話だと公私が混じった先って、分ける公私がないから、それこそ本当にありのままになっていきますよね。『ありのまま』であることは、発達論で言ったら環境順応型を脱して、より主体的な自己主導型に移行しやすい状況ですよね。だから、自己成長っていう意味でも良いことだと思います。
さっきFelixさんが言ったような何か自分のプレゼンスを出して作っていた人たちが、2- 30人の会議のオンラインの場で、背景がなんかすごい質素な家のキッチンだったりすると、心なしかいつもより優しいのもそれはそれでありのままを見せる良い機会ですね (笑)。

Felix:そうだよねー。
例えば会議の場とかで表情とかちょっとした咳払いとかそういうもので「自分は反対だ」みたいな雰囲気を出す人とかいるじゃないですか。そういうのが効かなくなっちゃっているのかなあと思っていて。だからむしろ言葉でちゃんと意思を表明するっていうことが、すごく問われてきているんだろうなぁ。

松村憲:そういう正当なコミュニケーションとか、ちゃんと思っていることをアサーティブに言うとか、そこに新しいよりフラットでよりオーセンティックな (本物の,確実な,真正な) 在り方が必要になるんでしょうね。

マインドフルネスとの親和性も高くなりそう

小島美佳:そうですね。
やっぱりさっきの松村さんが言ってくれた『主体的な自己』じゃないけど、そこがよりサポートされるようになっていくんだろうなーっていうふうに思ってます。

ついどうしてもマインドフル的な領域とのつながりも考えてしまうのだけど、より内省の機会とかも増えるのかなあ。「どういう風にしたらいいんだろう?」「自分はどうしたいのだろう」とか、「自分が言いたい事は何か?」とか…。流されるのではなく もっと以前よりも考えるようになるんじゃないかって気がしました。

自分の生活、 特にコロナショックの下では、自分を見失わない日常サイクルの回し方はどうあるべきか?とか、そういうところを考える上でもマインドフルネスは役立ちそうですね。

松村憲:公私の『公』の部分って、結構気にしなきゃいけないところじゃないですか、ある種それに支配されやすというか。
オンライン上のやり取りの方が公の影響力が緩むので『ありのまま』だったり『今ここ感』が出る。実は『マインドフル』なのかもしれませんね。

小島美佳:確かに…。
自分の見られ方を気にし過ぎなくなる分、他人の目ではなくて マインドフルで客観的な目を手に入れ易くなりそうですね。
そうすると益々さっきの『公と私』だと『公』が自分自身の約90%を占めていた人たちが、これからどんな風になっていくのかちょっと心配ですね。仕方ないけど。

Felix:そうだね、それは頑張るしかないよねー (笑)。

今回の対談は以上です。

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ABOUTこの記事をかいた人

瞑想歴17年以上。 15歳までヨーロッパで育つ。慶応義塾大学を卒業後、アクセンチュアで組織戦略・人材開発のコンサルティングに従事し異例のスピードで昇進。アクセンチュア・ジャパン 史上 最も若い女性マネジャーとして抜擢される。その後、独立系コンサルティング企業でビジネス開発に携わる傍ら、キャリアコンサルタント及びコーチとして活動。不確実な時代の波を乗りこなす事業の在り方やビジネスパーソンとしての生き方について考えはじめる。 2003年、瞑想に出会い習慣化するようになる。2010年よりビジネスの世界で活動をつづけながら、年間500名以上のクライアントへ瞑想的なテクニックを活用したカウンセリングを行っている。株式会社バランスオブゲーム代表。 監訳書:『コーチング術で部下と良い関係を築く』 共著:『「ハイパフォーマーの問題解決力」を極める』