マインドフルネス良書紹介|『インテグラル・メディテーション』(2) ~Waking Up (意識状態の覚醒)について~

前回に続いて今回もケン・ウィルバーの著書インテグラル・メディテーション(邦訳本『インテグラル理論を体感する』)の紹介、第2回目になります(全部で3回に分けてお届けする予定です)。今回は前回の”Growing Up(意識の発達段階)” に続き、”Waking Up(意識状態の覚醒)” についてお話したいと思います。


「意識状態の覚醒」が瞑想者に与えるインパクト

待望の邦訳本が2020年1月24日に出版されます
Source: Amazon

小島美佳:はじめに松村さんから”Waking up” のコンセプトに出会ったときの感想について伺ってもよろしいでしょうか?

松村憲:僕が ”Waking up” のコンセプトに初めて出会ったのは、瞑想を始めた後でした。
ちょうど心理学を学び始めた頃で、”Waking up” で言われているような意識状態があると学びつつ、瞑想の実践をやっていました。
それから意識というのは肉体に通じる『通常意識』だけじゃなくて『より微細な領域』もあるんだなと体験したり、瞑想をやったときの『静まった意識状態』と言われていたのはこういう状態なのだな、というのを実感を持って考えていました。
仏教の他にもヨガやインド哲学のような数々の伝統的な分野でも、意識状態 (State of Consciousness) について述べられていると思うんですけれども、ウィルバーはクリアにシンプルにわかりやすく説明してくれている、と感じました。

小島美佳:そうですね。
体系立たせてくれているのは助かるなぁと思ったのと、私の場合は前回の ”Growing Up” の時もそうだったんですけれども、自分がマインドフルネスを行なってその世界観みたいなものに触れたり、瞑想をやっている人たちと関係を作っていく中で、なんとなく腑に落ちなかったところが、ウィルバーのコンセプトによってスッキリさせることができました。
これまでは、意識状態の最初のグロス (Gross、粗雑) からサトル (Subtle、微細) の違いやサトルからコーザル (Causal、元因) の移行を理解するときに(下図1:意識状態の覚醒 “Waking up” 参照)、私の場合は人を観察しながら、その人の意識の状態を自分のものと比較して理解して腑に落としていたのかなという気がしています。
だから例えばグロスの意識状態の皆さんが「なぜこういう行動を取ったり、考えを持ったりしているのか?」「なぜこういう反応しているのか?」みたいな疑問を、本書によってクリアにしてもらった感じです。

図1 : 意識状態の覚醒 “Waking up”


瞑想が私たちの「感度」を高める

小島美佳:ところで、例えば松村さんが瞑想を教えたりするときに、このコンセプトを使って教えることはあるんですか?

松村憲:瞑想の入門ではコンセプトを使って話したりはあまりしないかな。中上級者向けのセミナーとかではこのコンセプトについても教えています。
多分この話は物理的な次元だと脳波とも関わりがあると思うんですけれども、『通常意識』ってありますよね、こうやって話している時とか。これってグロスの世界の言語を中心に話していると感じています。
そして瞑想をしていくと『通常意識の世界』だけじゃないというのがわかってくる。マインドフルネスで集中していくと色々な意識の変化を見るわけなんですけれども、意識が静まってきたときに夢に近いような感じになってくると思います。

だから「瞑想をすると意識のレベルがちょっと変わるんですよ」みたいな話をします。瞑想をしていると、この違いにも目覚めていく。サトル(より感情的・感覚的な次元)の領域とか、もっと深まればコーザル(純粋な観察)のような領域も知覚し始める「そういうところにも気づきを持っていくのが瞑想ですよ」とお話ししていますね。

面白いと感じるのは意識の次元というかリアリティーが増えてきたり、微細な領域が出てきたり、わかりやすく例えると感度が良くなってきたりとか。グロス(客観的・分析的・認知的)の意識だけだと当たり前のように見過ごしてたちょっとした四季の変化をとても気持ちよく感じられたり、こういったことにも関わってくるよ、と教えたりします。

小島美佳:確かにセンサーが増えていく感じとかは、グロスの世界だけではあまり感じ取れないかも。
先ほど松村さんがおっしゃっていた微細なところを感じ取れるというのは、イメージとしては木の枝がどんどん広がっていく感じで、受け取れる情報が量的にも質的にもすごく変化するという感じだと思うんです。
同時に、私個人の体験なんですけれど、一つの意識状態に居続け過ぎると、段々今度は辛くなってきたり、しんどいなと感じたりしました。

松村憲:ありますよね。

小島美佳:エンパス(人への共感力が高く、感受性が強い人)のような感じでサトルの段階に長くいる方々には、この意識状態のコンセプトを紹介して「よりコーザルな世界観(純粋な観察)みたいなものもあるよ」と知ってもらうことに意義があると思っていた時期がありました。まぁ今でも思っているんですけれども。

松村憲:そうですね。繊細な感覚故に出てくる辛さみたいなの、割とありますよね。
瞑想を続けていくとそういう変化って起きてくるので、「マインドフルネス瞑想をするだけでいいですよ」ではなくて、真剣にやる人とかは自ずと微細領域が深まっていくと思います。
瞑想の継続によって起こる変化のいいところは、エゴイスティックなところとか『自分(me)』みたいなグロスな意識が緩んでくることだと思うんですよね。
だから『それまでの自分』を客観視するし、一生懸命コントロールしている意識だけじゃなくて、何か深い意識の落ち着きのようなところから自然に変化も起きやすくなってくるというか。
コーザルな意識の目覚めとか移行に近いのかな。

インド哲学の観点で考えると、グロスの意識でいる自分というのは『偽りの自己・誤った自己(False self)』っていうんです。瞑想していくとだんだん『本当の自分って誰?』みたいな深いところに目覚めてくるみたいな。
この辺の悟りとかの研究についても、ウィルバーは本書の ”Waking up” の部分でクリアに書いていると思います。

ノンデュアル(非二元)についても言及していますよね。
僕らは『自分』というものを一生懸命守ろうとしてるけれども、『自分と世界はそんなに遜色ない。ホントは一体なので、構える必要もない』みたいなすごい意識状態がある。そのノンデュアルの意識状態も簡単には行けないんだろうなぁと思いつつも、そのことについても説明してるのはさすがですね。

小島美佳:そうですね。


「魂の闇夜」を体験すること

松村憲:さっき美佳さんが話していたエンパスの人の話で言うと、『魂の闇夜』(昔から言われている、瞑想家や宗教家が修行の過程で通り抜ける苦しい時期)のようだという話があります。自分と向き合っていったときに、とても暗い苦しいトンネルに出会う、みたいな話も本には出てますよね。
『魂の闇夜』の時期にもフェーズがあると書かれてました。

小島美佳:やっぱりそこは避けて通れないというか、いろんな形で自分の中に深く入っていって自分自身で内省的に見る人もいれば、出来事として体験したりとか。出来事として体験する方がよりドラマチックに見えやすいっていうのもあるかもしれないですけれども、そこは本当にみんな通る道で。
初めてそれを見たときに「私のこれまでのやってきたことって何かおかしかったのかな?」とか、「自分に何か欠陥があるんじゃないか?」みたいなことを思ってしまう傾向がすごくあると思うんです。
でも「みんな誰でも通る道なんだ」っていうことが予めわかっているだけでも随分違うと思いますよね。

松村憲:違いますよね、サポートがあって進められるといいなと思う部分でもあります。先達の導きや見守りがあると心強いところですね。

小島美佳:そうですよね。
そこをわかっていてサポートしてくれる人がいたりすると、いわゆる ”Wake up” できる人がもっと増えていくんじゃないかなと思ったりします。

松村憲:そうですね。世の中的にそういう流れになっていくと良いなぁと思います。
僕は苦しい時期には素晴らしい師に恵まれていたので幸運でした。

“Waking up” とか分からなくても、現代ってすごく集中を必要とする仕事をしてる人とかいっぱいいるじゃないですか。そういうオフィスにメディテーションポッドみたいなのがあって、出たり入ったりしているうちに、集中もするんだけど意識も深まっていく、みたいな。
仕事かもしれないし人間関係かもしれないし、今だったら地球環境の問題だったり、それぞれが真剣に向き合わざるを得ない問題が増えていると思うので、それらがもしかして『魂の闇夜』なのかもしれない、と思ったりします。
「そこを乗り越えてきました、乗り越えての今があるよ!」みたいな人が増えてくるといいなと感じます。

意識も成長も発達したリーダーの姿…

小島美佳:そうですね。
理想像なのかもしれないけれど、世の中のリーダー的な役割を担っている皆さんの意識状態がコーザル(純粋な観察)とかまで行けたりすると、これまでとは違う組織ができてくるのかなぁ、みたいな事は個人的にはすごく期待しているし、そういったことに関わっていきたいなって思いますね。
多分その組織で行われるデシジョンとか質感みたいなものとか、すごい変化するんじゃないかなって思っています。

松村憲:そうですよね。
ウィルバーのこの本の “Waking up” という部分でほんとに強烈天才的な部分だと僕は思っているんですけれども、グロス・サトル・コーザル・ノンデュアルと4段階の意識状態があるとしたら、その意識の深みが発達段階にも関わってくると言う話をしています。
(注:下図2 An Integral mapの、左側のStages of Development (意識の発達段階)の上方向へ向かうベクトルと、右側のStates of Consciouceness(意識状態)の右方向へ向かうベクトルが相互に関連し合っているという話。この辺りのGrowing upとWaking upの両方を考えていくことについては、次の第3回で詳しく解説しています!)

グロス(客観的・分析的・認知的)の意識状態でのオレンジ (Rational self) だったり緑 (Sensitive self) だったりティール (Integral self) だったりという意識の発達段階もありうるし 、逆に例えばレッド (Power self) みたいな自己中心主義のノンデュアリティとかもあり得る (図2 An Integral map 参照)。

図2 : An Integral map, Source: Integral Relationship

各自がいる発達段階に注意を向けていくことで自分のいる場所が見えて、自ずとステージが上がっていくって言う話をウィルバーはしてます。
例えば、オレンジ (Rational self) の発達段階ぐらいまではグロスの意識状態でも行けると思うけれども、そこから上はグロスのままでは苦しくなってくる気がします。
瞑想的な意識で自己を見ていくことがより必要になるだろうなと思ってます。

小島美佳:そうだと思います。
ティール (Integral self) とかその辺りの発達段階になっていった時に、意識状態がグロスのままではいられませんね。ここまでくると おそらくコーザルがデフォルトになってくるんじゃないかな。面白いですね!

次回はGrowing UpとWaking Upの両方を考えていきたいと思います。

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ABOUTこの記事をかいた人

瞑想歴16年以上。 15歳までヨーロッパで育つ。慶応義塾大学を卒業後、アクセンチュアで組織戦略・人材開発のコンサルティングに従事し異例のスピードで昇進。アクセンチュア・ジャパン 史上 最も若い女性マネジャーとして抜擢される。その後、独立系コンサルティング企業でビジネス開発に携わる傍ら、キャリアコンサルタント及びコーチとして活動。不確実な時代の波を乗りこなす事業の在り方やビジネスパーソンとしての生き方について考えはじめる。 2003年、瞑想に出会い習慣化するようになる。2010年よりビジネスの世界で活動をつづけながら、年間500名以上のクライアントへ瞑想的なテクニックを活用したカウンセリングを行っている。株式会社バランスオブゲーム代表。 監訳書:『コーチング術で部下と良い関係を築く』 共著:『「ハイパフォーマーの問題解決力」を極める』