次世代におけるイニシエーションの在り方 | 心理学の視点から

前々回の「マインドフルネスと心理学の視点で考える『イニシエーション』
前回の「新型コロナウイルス (COVID-19) が起こす社会の変化|心理学の視点から」に引き続き、今回も、松村憲さんFelixさんと三人で『次世代におけるイニシエーションのあり方』というテーマで対談したいと思います。

前回の記事では、COVID-19 感染拡大での社会全体の変化によって、イニシエーションの在り方が変化してきていることについて対談しました。昨今の報道や急な世情の変化に不安を覚えていらっしゃる方などにとって、少し視点を変えるきっかけになりましたら幸いです。

小島美佳:さて、まず松村さんにお聞きします。
イニシエーションは、今後どのように変化していくと思いますか?

集合意識がイニシエートされていない時代

松村憲:「次の時代におけるイニシエーション」と聞いて1つ思いつくのは、例えば地球の環境問題とかSDGs (Sustainable Development Goals, 持続可能な開発目標)とか…今回の新型コロナウイルスの流行も含めて社会問題がグローバルになってきていますよね。「このままではやばいぞ!」と個人のパワーで何かを矯正するという時代ではもうないというか。

スピードが速くなってきていることとかも同じかもしれません。社会全体の変化がこれだけ速い中で、Felixさんが初回のイニシエーションについての対談でおっしゃっていたような「この施策をやれば売り上げが上がるんだよね?」みたいなことを言っている段階ではないのに(苦笑)、そうしたこれまでの集合的な意識(あるいは常識)がイニシエートとされていないというか。

そういう大きな通過儀礼というのが実は既にグローバルに起きてきていて、『見える化』してきているのではないかと思います。

小島美佳:そうですね。
例えば近年マインドフルネスみたいなものがすごく注目されてきている理由って、集合意識的には新しいイニシエーションのための準備をしている… 何か隠れた意味みたいなものがあったりするのかなぁと感じています。

松村憲:僕もそう感じます。
マインドフルネスのような意識の本質的な在り方があるから、現代の困難に見えるチャレンジも超えられる側面がすごくあると思います。

心理学的な背景で第一回の記事の内容もおさらいしつつ話をしていくと、『イニシエーション』というものは古来は儀式的な『通過儀礼』という意味があって、その一つとしては社会に大人として迎え入れられるという機能があるという話をしました。
それが、日本では近年、成人式みたいな儀式が形骸化してきているし、他にも30年前ぐらいから大人になる機会が曖昧になってきていると言われていて、「成人なんだけれども、大人になりきれないみたいなモラトリアム」みたいな機会を持つ人が増えてきていると感じます。今、日本では引きこもり100万人時代と言われたりしているのもそこの延長かもしれないですよね。

明確なイニシエーションみたいなものがなくなってきている現代において、今後どのようなイニシエーションが起こり得るのか?あるといいのか?っていうのは、一つ大きなテーマかなという話をしてきました。

意識が発達されない「未成熟」層

松村憲:後もう一つ心理学の観点から言うと、大人になりきれてない人達っていうのは、人格が成熟すると考えるモデルからすると未成熟と言われたりします。確かにそういう面もあって、意識が発達しきれてないというか… (注;意識の発達段階については過去記事『~Growing Up (意識の発達段階) について~』もご参照ください)。
体も年齢もやっていることも大人と思われるところにいるはずなんだけれども、十分成熟しきっていない、発展の可能性はあるけれども、従来のカウンセリングの手法をここに全て当てはめてやっていったら大変なことになる(時間がかかりすぎる)と思うので、そうではない新しい試みが必要になってきていると感じます。

小島美佳:今お話を聞いていて感じたのは、例えばビジネスの世界で、未成熟の状態とパフォーマンスを上げている人、っていうのが比例していない、連動していない気がしています。
世の中のビジネスリーダーですごく成功している人たちの中に、意識的に未発達・未成熟なまま 大きな成果を上げてきた人がいるというか。歴史上でもそういうことは沢山あったかと思いますけれども、そういった混沌とした感じが増してきてますよね。

イニシエーションの対談の初回にFelixさんがおっしゃっていたような、ビジネスリーダーが「これでうまくいくんですよね?」って安易に言っちゃうような…。あのケースは 衝撃的だったので 何度も持ち出してしまいますが… そういう人が偉くなるというのもカオスの象徴な気がします。

Felix:そうですね、僕も1回目の対談の後いろいろ考えてみました。

一般的に、『企業の成長段階によって、求められるリーダー像は違う』っていうのはよく言われる話ですよね。実は未成熟な側面、別にこれはネガティブな意味ではなくて、『物事に対して脇目もふらず突進していく』っていう部分が未成熟の良さでもあると思うんですが、企業の立ち上げから成長段階においてはそういった未成熟さのパワーが要求される。

これまでの日本経済が成長していたステージでは『未成熟な側面』を強く出せる人にフォーカスが当たったし、評価もされてきたんだろうと僕は思っています。
一方で『撤退する』とか『緩やかに退場する』といった局面では『未成熟な側面の良さ』っていうのはあまり活かされないかもしれない。

これまで評価されなかった人達が活躍するかも?

Felix:今の日本にはものすごい成長セグメントなんて殆どないし、どちらかと言うと『今の状況に合ったビジネスをどう変えていくか?』みたいな話や、場合によっては『撤退する』など、成長一辺倒の時代には想像がつかない事態にも対応することがすごく重要になってきていると思う。その中でうまくやっていける人というのは、実はこれまで企業の中で評価されていなかった人・注目されていなかった人たちなのかなぁと、思っています。

小島美佳:さっきFelixさんが「想像がつかない」と おっしゃっていたと思うんですけれども、近年、そういった想定外がどんどん増えてきているというのは感覚的にあるじゃないですか。
そうなってくると、未成熟なメンタルモデルだけで想定外に対処しようとすると、すごい大きな恐怖に苛まれたりするんだろうな、と。一方で『恐怖と付き合う』経験を積んできた人のほうが、結果的に何とかできる

そういう人たちって、どちらかと言うといわゆる成功体験をそんなに分かりやすい形で持ってはいない人も多くて…。ただ、人間的には非常に深いものを持っていたりする。脚光を浴びてこなくて… それでも自分が信じたことをやり続けて。
様々な逆境がある中でも、どうにか軸をもって歩み続けたような人達かな。

Felix : 『組織に染まりきらない人』って言う逆説的な感じになると思うんだけれども、そういう人たちが実は、今の組織には必要になってきているのかなあと思いますね。
目標は立てたけれども、その目標自体が変わり得るっていう前提の元で、常に周りの情報とか人の動きに目を配って、その場で判断して動ける、というような人たちなのかな、と。

複雑化するイニシエーション

松村憲:お二人の話を聞いていて、やはり『イニシエーション』というものが単純ではなくなったんだろうな、と感じました。心理学で言うと『未成熟』だなと思うような人がビジネスで成功するといったこともあるし、今の時代に必要とされているのかもしれないです。

個々に個別性・多様性のあるイニシエーションというのは、いろんなグラデーションで起きてきているのかな、と感じています。

小島美佳:そうですね。イニシエーションのあり方そのものが多様化し、起こってはいるけれども見えづらい状況が現代なのかもしれません。これからは、ますますその状況が複雑化していきそうですよね。
新型コロナウィルスの登場によって、私自身は人々が何を大切にして生きるのか…価値観そのものが大きく変化していくのではないかと思っています。
混沌とした次のステージへと、世界中の人達が少しずつ歩みを進めている。

目の前にあるイニシエーションは、人それぞれなのでしょう。過去の社会においては、強制的に通過させられていましたが…
今日では 痛みを伴って通過するか、通過せずに留まるか… 選択できます。そんな選択の自由がある中で、社会がどう変化するか。或いは、コロナ禍によって 時代の流れが集団的なイニシエーションに向かい、選択の余地がなくなるのか。 私たち自身も真摯にイニシエーションの波を超えつつ 見守りたいですね。

編集:s子

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ABOUTこの記事をかいた人

瞑想歴17年以上。 15歳までヨーロッパで育つ。慶応義塾大学を卒業後、アクセンチュアで組織戦略・人材開発のコンサルティングに従事し異例のスピードで昇進。アクセンチュア・ジャパン 史上 最も若い女性マネジャーとして抜擢される。その後、独立系コンサルティング企業でビジネス開発に携わる傍ら、キャリアコンサルタント及びコーチとして活動。不確実な時代の波を乗りこなす事業の在り方やビジネスパーソンとしての生き方について考えはじめる。 2003年、瞑想に出会い習慣化するようになる。2010年よりビジネスの世界で活動をつづけながら、年間500名以上のクライアントへ瞑想的なテクニックを活用したカウンセリングを行っている。株式会社バランスオブゲーム代表。 監訳書:『コーチング術で部下と良い関係を築く』 共著:『「ハイパフォーマーの問題解決力」を極める』