マインドフルネス瞑想 おすすめ本紹介|『マインドエクササイズの証明』

今回ご紹介するのは、当サイトでも度々引用している脳科学・精神医学から瞑想について研究を行なった第一人者でもあるダニエル・ゴールマン, リチャード・J・デビッドソン博士の名著、

心と体をゆたかにする マインドエクササイズの証明

です。

Source : Amazon

著者 ダニエル・ゴールマン, リチャード・J・デビッドソンについて

ダニエル・ゴールマン氏
Source : Amazon

ダニエル・ゴールマン (Daniel Goleman, PhD)

心の知能指数(EQ)をテーマとする数々のベストセラーで知られる。ハーバードの大学院に在学中、2年間インドに滞在したことをきっかけに、長年瞑想に関心を抱いてきた。長年にわたりニューヨーク・タイムズ紙の科学ジャーナリスト・心理学者として脳と行動科学に関する記事を多数寄稿している。主な著書に、ベストセラーとなった『EQ こころの知能指数』(講談社)、『EQリーダーシッ プ 成功する人の「こころの知能指数」の活かし方』『SQ生きかたの知能指数』(日本経済新聞出版社)などがある。

リチャード・J・デビッドソン (Richard J. Davidson, PhD)

ウィスコンシン大学マディソン校客員研究教授。専門は心理学と精神医学。同校で脳の研究をおこなうかたわら、ゴールマン氏と共に〈心と生命研究所(Mind and Life Institute)〉を創設。これまでに320本を超える論文と14冊の単行本を執筆しており『心を整えれば、シンプルに生きられる:1日5分の「マインドフルネス」習慣』『脳には、自分を変える「6つの力」がある。』(三笠書房)などがある。

Amazonの商品説明より引用

本の内容

 表紙には「瞑想の効果を最大限に引き出す方法を伝授!」と書いてありますが、中を読んでみると具体的な瞑想の方法についてはほとんど述べられていません(苦笑)。
私が読んだ限りでは次の文章にほぼ集約されています。

スポーツを習得しようとする場合と同じく、自分にしっくりくる瞑想法を見つけ、それをやり通すことだ。そうすれば最大限の効果が得られるはずである。やってみようと思う方法を見つけたら、毎日ほんの数分でもかまわないから、(中略)とにかく1ヶ月間やってみよう。

第一章『深い道、広い道』より引用

 これは松村憲さんも当サイトや著書でも度々おっしゃっていることであり、「効果が感じられるまでとりあえず1ヶ月間続けてみる」というのが大事なポイントのようです。

リチャード・J・デビッドソン博士とダライ・ラマ14世
Source : リチャード・デビッドソン博士公式HP

 一方で1970年代の「感情は生理学的反応である(つまり高度な精神活動によって制御可能)」と考えられており、感情や人間の意識について取り扱う研究が心理学でも精神医学の分野でもさほど重要視されていなかった時代に、著者らが自らのインドでの瞑想体験を元にその効果を科学的に証明することを始めた、いわば瞑想研究の第一人者的な研究者の著書です。著者らはダライ・ラマ14世とも親交があり対話や共同研究も行い、チベット密教や仏教への理解もあり、とても内容が厚く、濃いです。

 ダライ・ラマいわく、チベットに伝わる瞑想には、破壊的感情を飼いならすための方法が数多くあり、なかには時の試練に耐えて現代まで生き残っているものも多い。そうした方法を宗教に足を突っ込まずに研究所に持ち込んでみてはどうか。厳密に検証し、もし破壊的感情を抑えることに役立つとわかったなら、それを必要としているすべての人々に広く活用してもらえばいい。

第一章『深い道、広い道』より引用
“破壊的感情”をテーマにしたダライ・ラマ氏と科学者たちの議論は本書にまとめられています
Source : Amazon

 著者らはこのダライ・ラマ14世の提案により、科学的根拠に基づいた瞑想を有効活用するための研究にさらに邁進することにした、と述べています。

どのような人におすすめか?

  • マインドフルネスや瞑想なんて眉唾でしょ?科学的根拠がないと信じられないわ、でも興味・関心はあるという方
  • しっかりと科学者の言葉で瞑想について語られている本をお探しの方
  • 原著『Altered Traits』も2018年発行と比較的新しい本なので、最新の脳科学研究の成果も幅広くカバー。瞑想やマインドフルネスの効果について科学研究や評価はどこまで進んでいるのか?表面をすくうだけでなく、深く知りたい方。
  • 瞑想をもっと深めていきたい方、瞑想を教えるトレーナーを目指している方など

オススメのポイント

 瞑想実践者が自身の瞑想体験を元に科学的なメスを入れるとどんなことが見えてくるのか?が豊富な実験や論文の引用と共に紹介されています。けれど脳内の細かな部位や専門用語は極力出てこないように、読みやすさにも配慮されています。ダニエル・ゴールマン氏の文章は、まるでドキュメンタリー映画を観ているような感覚で読み進めることができます。
 また瞑想が深まるにつれて読み返す度に新たな気づきがあり、手元に置いて何度も読み返したい名著です。

マインドフルネス研究は玉石混交とバッサリ

 著者らが研究を始めた1970年頃にはほぼ皆無だった瞑想やマインドフルネスに関する研究は21世紀に入り飛躍的に文献数も増えました。ジョン・カバット・ジン博士が瞑想やヨガのエッセンスを元に構築したマインドフルネスストレス低減法(MBSR)プログラムを開発したのが1979年ごろ。2021年7月現在では『Meditation』をキーワードに含む学術論文は7,866件、『Mindfuleness』は20,256件、『yoga』は6,286件にものぼり、科学者の関心も高いことが伺えます。
 しかし著者らはそれらの論文は眉唾物も多いとバッサリ。瞑想体験のない科学者がただ「流行っているから」と研究し、実験・測定・調査する際の対照実験の立て方があいまいであったり、そもそもの被験者の測定の仕方に問題があったり、また後述するような商用利用のために良い効果ばかり取り沙汰され、「このような条件では差が見られなかった」「逆に予想に反したあまり望ましくないデータがでた」といった情報は論文として発表されづらいことなども問題点として挙げています。

失敗から得られた教訓

 著者らが1970年代半ばにハーバード大学で研究を始めた頃、インドからやってきたヨガの指導者が「自分を被験体として提供するので、自分の非凡な能力を先端テクノロジーで測定して欲しい」と提案してきたそうです。
 当時はfMRIなどの技術はなく、意識的に制御できない血圧などの生理機能を測定することで(ストレス状況下では無意識に心拍や血圧が上がりますよね)効果測定を行っていました。実際測定を行ってみると、この自称ヨガ指導者の非凡な能力はほとんど身体反応の変化として検出されなかった、むしろ意図と逆の効果が出たそうです。後日談で、普通のインド人がヨガ講師としての箔をつけるためにやってきただけだったことがわかったそうです。

 このエピソードを読んで、どこにでも怪しげな人はいるんだなぁという感想とともに、瞑想修行も行なった経験もある著者らでも騙されてしまうんだなぁということにも驚きました。
 一方でこのような失敗から著者らは「瞑想研究に際して、開かれた心と同時に懐疑心を忘れないようにしている」と述べ、しっかりとした実験条件設定と、バイアスのない目でデータを解釈する科学者としての態度、瞑想・マインドフルネスブームに対する冷静な視点が、本書を通して一貫しているのは素晴らしいと感じました。

瞑想法の違いによる脳への影響の違い

 集中瞑想・洞察瞑想・慈悲の瞑想などそれぞれを章に分けて、効果の違いなども述べられています。
 個人的にとても興味深かったのは、チベットの瞑想指導者の「慈悲の瞑想を行う際、自分や自分の愛する人を念頭に置いて100時間行うのと、苦手な人に対して1時間行なった場合で同程度の効果がある」という言葉でした。

総瞑想時間10,000時間以上の瞑想熟練者20人以上の脳を解析

 以前、小島美佳さんの『オリンピック級の瞑想実践者の記事』にもありましたが、この研究を行なったのが著者たちです。

 著者らは、瞑想家系の家に生まれ生涯瞑想時間が62,000時間以上、10年以上の瞑想修行を行なったミンゲール・リンポチェ氏の脳を数年に渡り何度も調べています。彼以外にも瞑想時間が10,000時間を超える瞑想熟練者を20人以上測定し、その精神的機動力の高さ、瞬時に任意の精神状態・意識状態を呼び起こすことができる状態をfMRIなど用いて科学的に明らかにしました。(余談ですが、fMRI技術が発達する前からチベットの熟練瞑想家たちについての研究が始まり、当時は脳波の測定が主流だったそうです。研究室で科学者が瞑想者の脳にたくさんの電極をつけ脳波を測定し始めたときに、瞑想家たちは「心・心臓ではなく脳を調べるのか!」と驚いたそうです。)

(※ミンゲール・リンポチェ氏が『瞑想の本質』について語る動画はFacebookからもご覧いただけます、日本語字幕もあります)

 その結果、どの熟練瞑想家の脳からも瞑想に取り組む前から高いガンマ波を検出しました。
 ガンマ波とは脳波の中でも最も速い周波数・波に分類され、一般人の場合はたとえば茂木健一郎氏が述べている「アハ体験」のようなパズルのピースがピタリとはまったような体験をしたときに、瞬間的にガンマ波が出ます。しかし持続的にガンマ波が出ることは一般的にはなく、てんかん発作にも近いような状態だそうです。

 このような平常状態でも強烈で高振幅のガンマ波を出し続けている意識状態を、熟練瞑想者たちは「広大無偏に立つ」境地だと表現しました。また著者らは「普段から豊かで開かれた気づきが自身を満たすという経験を重ねているように見える」と述べています。
 さらに驚くべきことに、熟練瞑想者たちが瞑想を始めると、このガンマ波やfMRIで測定した脳の活動状況は平時よりも何十倍にも増幅したそうです。


 一般人が修行などでなく日常生活で瞑想に取り組むことで得られる変性意識だけではなく、熟練瞑想者はこのような状態が平常時も睡眠中も続いておりこれを本書では『変性特質』と呼んでいます。
 睡眠中も覚醒し続ける、という状態は例えるなら(フィクションではありますが)鬼滅の刃の炭治郎たちが修行していた『全集中常中』と似ているのかもしれません。

瞑想によって得られる変性特質(Altered Traits)とは?

 著者らは「瞑想とは、心に一時的な快の状態をもたらすだけのものではなく、そこから生じる永続的な質の変化に瞑想の真価はある」と述べています。
 瞑想を実践することによって生じる新しい脳の性質のことを「変性特質(Altered Traits)」と本書の中では呼び、この性質は、瞑想を実践していないときでも保たれ、日常全般において人間がどうふるまうかを方向づけるものだ、とのこと。この変性特質は以前から述べている脳の可塑性(何歳になっても受け取ったり処理したりする情報によって脳は変化し続ける)によってもたされるものです。

瞑想の注目すべき効果とは、健康増進やパフォーマンス向上ではなく、むしろ、人間をより良い特性へと近づけていくことなのだ。

第一章『深い道、広い道』より引用

 さらに第13章『変性特質』では、変性特質を養う上で必要な8つの要素を述べています。
 その中には度々本サイトでも述べている「個人指導、聡明な師を持つこと」も入っていました。
 そのほかの7つの要素が気になる方は是非、本書をお手にとってみてください!

本の購入はこちらから

Amazon
楽天ブックス
Yahooショッピング



瞑想の具体的なやり方を知りたい方には、こちらの3冊がおすすめです。

◼️日本一わかりやすいマインドフルネス瞑想 “今この瞬間”に心と身体をつなぐ

◼️実践!マインドフルネスDVD

◼️脳疲労が消える 最高の休息法 [CDブック]脳科学×瞑想 聞くだけマインドフルネス入門

マインドフルネス おすすめ情報

ABOUTこの記事をかいた人

ライター。 博士号を取得後、日本学術振興会特別研究員・JST研究員・大学教員として教育研究に計10年以上従事(専門は生化学)。9割以上が男性の業界で女性が中間管理職として働く難しさを感じつつ、紆余曲折を経て小島美佳さんからマインドフルネスを学ぶ。 現在は心理学や精神世界のエッセンスを科学の言葉で咀嚼して伝える方法を模索中の、瞑想歴1-2年の初心者です。