マインドフルネス用語解説|神経可塑性とは

神経可塑性(しんけいかそせい)

Neural Plasticity

外界から中枢神経系(脳)に入ってきた刺激に対して、神経系が構造的・機能的に変化する性質のことを神経可塑性と呼びます。

一般的に学習し脳が記憶を保持する能力は、神経可塑性(神経回路・ニューロンやシナプスが行動や環境などの入力に反応して変化する能力)と関連しています。

ニューロン(神経細胞)の構造
Source : 東京大学 健康と医学の博物館『わたしたちの脳

神経可塑性は,広義では大まかにわけて4つに分類されます。

1) 発達期(ヒトの場合は乳幼児から小学校低学年頃まで)に軸索が伸長し、神経細胞の樹状突起とシナプスを形成することで,神経回路(ニューロンネットワーク)の新たな結合や繋ぎかえが起こり,脳内の神経回路が構築され完成される時期です。(臨界期・critical periodとも呼ばれます)
 例えばこの時期に外界からの適切な刺激や情報(五感への刺激や言語など)を受け取れないと、脳の発達が著しく阻害されることも知られています。

2) 神経回路が完成した後 成人における学習や記憶の基盤となる神経機能とされているもので、主に既存のシナプスの結合強度の変化によって形成されるシナプス可塑性(synaptic plasticity)を指します。
 具体的には

  • 近接した神経細胞の間での新たなシナプス形成
  • 既存のシナプスの形態変化によるシナプス伝達の変化
  • 完成された神経細胞同士の結合,つまりシナプス強度の変化

が主体となります。これらは基本的に特定の刺激が持続することで、完成されたシナプス間で興奮性もしくは抑制性の信号を授受し、神経伝達効率が変化すること(強化だけでなく、不要となった使われない神経回路の刈り取りも行われます)によるものです。

3) 脳梗塞や出血、外傷による損傷等により機能が損なわれた場合,失われた機能を補完すべく近接した他の機能を担う脳領域が補償 する場合

4) 神経細胞は成人になると分裂・増殖しないと長い間考えられていましたが、近年 神経幹細胞と呼ばれる多分化能を保持する幹細胞が脳にごく少数存在し、新しい神経細胞が生まれていることも分かってきています。

この4つの中の2番目のニューロン可塑性によって、私たちは発達、学習、および記憶し、変化する身体と​​環境の状態に適応することができます。
これら可塑性による脳神経構造でのシナプス形成・伝達・結合強度などの物理的変化は、遺伝的および生化学的影響だけでなく、私たちが持っている思考そのもの (つまり、ニューロン発火のパターン) からも生じます。瞑想の習慣化による脳の構造変化にもニューロン可塑性が関与していると考えられます。


 

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