マインドフルネス用語解説|トキシック ポジティブとは

トキシック ポジティブ・有害なポジティブさ

toxic positivity

直訳すると「有害なポジティブさ」となります。
一般的に幸せに対して前向きに行動すること、ポジティブ思考 などは良いこととされていますが、時と場合によっては、幸せばかりを重要視し過ぎると裏目に出て、逆に不幸になってしまう可能性がある「有害なポジティブ」となりうるとのこと。

最善を期待することで、逆に気分が悪くなってしまう人

人々が自分自身の幸福度を高く評価することで、逆に幸せを期待し過ぎてがっかりしてしまったり、十分に幸せに感じられないことで自分を責めたりする傾向があります。

最近の心理学研究では、500人もの被験者を対象とし、幸福度そのものに焦点を当てるのではなく『間接的に幸福を追求する(積極性を優先する)』方が、有害となりうるポジティブさから離れ、長期的な幸福感に繋がる可能性があることを示唆しています (When the pursuit of happiness backfires: The role of negative emotion valuation., J. Positive Psychology, 2020)。

この間接的に幸福を追求する行動とは、具体的に

  • ボランティア活動の時間
  • 困難なタスクの完了
  • 幸福をサポートする日課の構築

など、目先の幸福感だけでなく、達成感や目的のために行動することです。

【幸せを大切にする vs 積極性を優先する】

ある調査では、
幸せを大切にする人(幸せを感じることを期待していた人 、幸せを評価するスコアが高かった人) は、「幸せを感じていても、自分が幸せかどうかを気にかけている」「幸せを感じていないのは、私に問題があるのかもしれない」などと回答しました。
 一方で
積極性を優先する人々(幸福を間接的に追求した人)は、「私は自分の幸せを最大化するよう一日を構成している」「私は自分のポジティブな感情を探して育んでいる」などの意見に同意しました。

つまり①の幸せを大切にする人は、自分のネガティブな感情を人生の失敗の兆候と見なす傾向があり、ネガティブな感情を伴う経験を受け入れることができませんでした。これらのネガティブな感情を不快と感じる傾向は、幸福度が低い理由の一部を説明します。
一方で、② の幸福を間接的に追求する人は、自分のネガティブな感情状態を受け入れ、それらの体験を人生が失敗している兆候とは見なしませんでした。

① の常に高いレベルのポジティブさや幸福を追求し維持するべきだと信じる人々は、自身のネガティブな感情を通常の生活の一部として受け入れるのではなく、格闘したり、回避しようとしたりします。
一方で② 幸福を間接的に追求する人々は、気分が落ち込んだりストレスを感じたりすることと幸せを見つけることは矛盾しない、と感じています。

マインドフルな在り方は、まさに② のどのような体験や感情も評価判断せず、ただ気づき続ける、というものです。


【ポジティブさを有害にする原因は何か?】

人生において痛み、失敗、喪失、または失望を経験する可能性は避けられません。落ち込んだり、不安になったり、恐れたり、孤独を感じたりすることはあり、事実です。
重要なのは、これらの経験にどのように対応するかです。私たちが常に幸せであることを目指しているなら、困難な時期について、私たちの目標や幸福を邪魔していると感じるかもしれません。一方で、単純に積極性を優先し幸福を間接的に追求すれば、困難やネガティブな感情はあまり気にならなくなります。どのような感情も人生の要素であり、旅全体の一部であると受け入れやすくなります。

常にネガティブな体験や感情をポジティブに反転させようと努力するのではなく、不快な感情と一緒に座ることで、長期的には幸せになる、ということです。これらの感情に反応するのではなく、反応していることにただ気づき続けることは、私たちの幸せを実現する鍵となるのです。

私たちの多くは不快感に対して、逃げて痛みを軽減したいと反応します。しかしこれらの反応は、不快な感情を回避または抑制することに集中しており、不快な経験がもたらす洞察に気づくことができません。つまり、これらの体験に反応し対処することが、すなわち「不快になる」ことを意味しています

快不快に関わらず、自分が感じていることにありのまま気づき感じ続けていく姿勢によって、なぜそれらの感情がそこにあるのか?という点にも興味を持つことができます。そしてこの問いに対する理解を深め、選択肢を確認することで、感情に振り回されず、より良い決定を下すことができます。

ことわざにあるように、「痛みは避けられません。苦しみはオプションです。」

参考文献:How to avoid ‘toxic positivity’ and take the less direct route to happiness

 

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