ビジネスパーソンに特化したマインドフルネス講座を全24回に渡ってお届けしています。
今回は、ロジックとハートの統合、思考と感情についてお話ししていきます。
自分の思考や感情に意識を向けることは、自己認識力、ひいてはリーダーシップ能力をも高めることにつながります。しかし心というものは中々捉えづらいものです。マインドフルネスによってどのように自分の心について気づいていけるようになるか?といった点も併せてお伝えしていきます。
目次
自己認識の2つの側面
1, 内面的自己認識
内面的自己認識とは、自分の価値観、情熱、願望、環境への適合、反応 (思考、感情、態度、強み、弱みなど)、他者への影響力について、自分自身でいかに明確に捉えているか、です。すなわち自分の内側に気づいていくという事で、マインドフルネス力が身についてくると、自分の内面にも意識が向きやすくなってきます。
これは実際やるとなると結構難しく、自分が他者に与えている影響力に気づいているリーダーは相当レベルが高いと思います。リーダーシップにおいて優れた結果が出る方には、この内面的自己認識力がとても高い方がたまにいらっしゃいます。
内面的自己認識は、仕事や人間関係の満足度、自己および社会的コントロール、幸福度に正の相関があります。
逆に、不安、ストレス、憂鬱とは負の相関関係にあります。
2, 外面的自己認識
1の内面的自己認識の諸要素について、他者が自分をどのように見ているかに関する理解のことです。他者側の視点、自分がどう見られているか気づく能力を得ている方、わかっている人は、共感力と他者視点に立つ能力に長けています。ここに長けているリーダーの方は既にいらっしゃると思います。
リーダーの自己認識とリーダーに対する部下の認識が近い、つまり自他共に認識が一致している方が両者の関係は良好です。部下はリーダーに満足を感じ、リーダーを有能視する傾向にあります。
逆に関係がうまくいかない場合は、自他認識も内面も外面もだいぶずれている可能性があります。
自己認識から自己変革へ
下の図はマインドフルネス的な視点で見た心の反応プロセスの模式図ですが、何らか刺激・インプットがあったときに、思考や感情のプロセスが脳内で起き、その結果をアウトプットしていきます。多くの場合このうちの、プロセスは無意識のうちに起こっているのでブラックボックスになっています。
マインドフルになってくると、このインプット → プロセス → アウトプットの全体を見られるようになったり、プロセスの段階で「何が起こってるのだろう?」ということを認識できるようになり、1拍おくことができるようになります。
そしてここで1拍おくことができるようになると、アウトプット、つまり結果を変えることができるようになってきます。
「自分を変えるということは、プロセスやアウトプットを選択できるということを知ることであり、見ることであり、選択することだ」ということを著名な心理学者が言っています。
このプロセスで何が起きているかというと、脅威から刺激(インプット)を認識をすると、恐れの感情が起きて(プロセス)、ネガティブなパターンの行動をとる(アウトプット)、というのが普段多くの私たちがやっていることです。例えば「何か家族に言われてつい怒っちゃった、嫌だな」と思ったとします。そのときはこういった考えと感情の負のサイクルが法則的・習慣的に起こっていることが多いです。
ここにプロセスの段階で気づけるようになってくると、または良いサイクルの場合、具体的にはインプットがあったときに自分の目的とかビジョンみたいなものを明確に持っていると、「そのためには」といったポジティブな感情を引き出すことでき、新しくてより良い行動が選択できるようになります。
このようにプロセスからアウトプットを出す前に1拍おくことで、アウトプットを変え自分を変えていける、自己変革の成長サイクルに入ることができるようになると思います。
ロジック(理性)とハート(感情)のバランス
考えと感情、ロジックとハートは複雑に絡み合っているので、どちらが先とも言えないですね。鶏と卵どっちが先かみたいな話です。
よく考えてみたら良い感情が生じたり、悪い感情が生じたら思考も曇ってくる、といった経験はないですか?ですが最近の研究で、マインドフルネスではこの理性と感情のバランスが整ってくるっていうことがわかってきています。なのでここはマインドフルネスをやる大きなメリットの一つと言えます。
感情優位で反応していくと思考や理性は終焉化されて、悪いパターンが出がちです。逆に思考だけが優位すぎると、感情と繋がれなくなってしまう、冷たいアクションにどんどんなってしまう可能性があります。つまりバランスが大事になってきます。
しかし感情と思考のバランスをとったりコントロールすることは難しいです。
マインドフルネスは、感情と思考に関わる脳内の神経回路ネットワーク(デフォルトモードネットワーク)を安定化させることがわかっています。脳内のストレス反応スイッチともいわれる扁桃体が過剰に活性化すると感情優位になりますが、マインドフルネスの実践によって扁桃体が沈静化することは脳科学的に分かってきています。
さらに扁桃体が落ち着くことで、思考や脳の高次機能を担う前頭葉にもゆとりができるので、自由になり活性化しやすくなってきます。その結果、より柔軟に考えられるようになり、いつものパターンとは異なった自由な感情も出てきやすくなります。
このように、恐れや恐怖などの扁桃体由来の感情が減ってくると、不安なども減ってくると思います。
1日10分間でも毎日マインドフルネス瞑想を続けていくと、いつものパターンから脱して自己変革していくことが期待できます。
【実践】理性・思考と感情をバランスさせる瞑想(約8分間)
マインドフルネス瞑想を続けることによって、扁桃体(ストレス反応スイッチ)が沈静化し、前頭葉(感情・理性の制御)が穏やかに活性化します。 その結果、感情と思考のバランスがとれ、より落ち着いて冷静に目の前の物事に集中できるようになります。
次回は『ネガティブ思考への対処法』についてお伝えします。