心理学者が伝授するオンオフの切り替えのコツ|脳疲労を防止して仕事とプライベートのバランスを

今回は、仕事モードからオフモード・リラックスモードに切り替えるコツについてお伝えしていきたいと思います。

仕事が終わってもなかなか気持ちが切り替わらない。家で仕事をしていると、プライベートと仕事の境界線がぼやけてしまう。こんな悩みを抱えているビジネスマンは多いのではないでしょうか?

2023年、リモートワークが一般化したことで、人々の働き方が大きく変化しています。また、自分で仕事とプライベートの時間を管理する必要性が増えました。しかし、それは同時に、オンオフの切り替えが難しくなったことも意味します。

<レクチャー動画はこちらから>

Source : マインドフル瞑想チャンネル

オンオフ切り替えが苦手な人へ

Source : Amazon

実は、オンオフの切り替えが上手くできないと、生産性やクリエイティビティに悪影響を及ぼすだけでなく、ストレスや疲労も溜まってしまいます。
最近の研究によると、定期的な休息を取ることは、仕事の効率や質を高めることが分かっています。ハイ パフォーマーな人達は、仕事中のほんのちょっとした隙間時間でもリラックスしたりストレスを解放したりすることで、上手に休息を取り、うまくオンオフの切り替えをしています(神時間術より)。
逆に言えば、休息ができないと、仕事のパフォーマンスも低下してしまうのです。

一方で、日本人は勤務中の休憩時間でもほとんどリラックスができておらず、ストレスを溜めやすい傾向があるとのこと。
では、どうすればオンオフの切り替えが上手くできるようになるのでしょうか?そのコツは、自律神経のバランスを整えることです。

最近では認知機能を多用したタスクを長時間行うと、脳内にグルタミン酸(神経伝達物質として機能します)が蓄積し、脳疲労→脳機能が低下することも明らかになっています。

自律神経のバランスとは?

自律神経は、交感神経と副交感神経からなります。交感神経は、緊張や興奮の状態になると活性化されます。副交感神経は、リラックスや回復の状態になると活性化されます。この二つの神経がバランス良く働くことで、心身の健康が保たれます。

※注 自律神経とは

神経は「中枢神経」(脳と脊髄)と体中に張り巡らされている「末梢神経」に分けられます。
末梢神経は、さらに意思によって身体の各部を動かす「体性神経」と、
意思に関係なく刺激に反応して身体の機能を調整する「自律神経」の2つに分けられます。

具体的には、暑いときに手で仰ぐのは体性神経、汗が出るのは自律神経の働きです。

Source : 厚生労働省 e-ヘルスネット
図1:交感神経と副交感神経の関係
多くの臓器は、交感神経系と副交感神経系のどちらか一方によって主に制御されていますが、1つの臓器に対して両方の神経系がそれぞれ反対の作用を及ぼしている場合もあります。例えば、交感神経系は血圧を上昇させますが、副交感神経系は血圧を低下させます。交感神経はアクティブな方向に働くだけでなく、緊急事態には不要な消化(胃の粘膜の分泌や腸のぜんどう運動)や排尿は抑制します。
全体として、2つの神経系が協調して機能することで、体は様々な状況に対して適切に反応できるようになっています。
MSDマニュアルより引用改変)


しかし、仕事中は交感神経が優位になりがちです。脳幹からはノルアドレナリンが出て、その刺激を受けてさらにアドレナリンが放出され交感神経を活性化し、高揚している状態いわゆる戦闘モードに入っています。日中活動する上では交感神経の働きが必要ですが、そのまま放置して交感神経が活性化したままだと副交感神経が働きにくくなり、十分に休むことができい、疲れやストレスも溜まりやすくなり、睡眠不足に陥ったりする可能性があります。

つまり自律神経は、どちらか一方だけでなく、1日の中でもオン・オフに合わせて交感神経・副交感神経をバランス良く働かせることが大事になってきます。また、仕事モードからオフモードに切り替えるためには、副交感神経を刺激することが必要です。
マインドフルネスはこの自律神経の切り替えや、休む・リラックスするというところで効果を発揮します。

具体的には、以下の方法が有効です。

仕事とプライベートの切り替え方

1, 身体をほぐしてリラックス

仕事中は、無意識に身体に力が入り緊張していることが多いです。特に、首や肩、背中などは凝りやすい部位です。そのままにしておくと、血行が悪くなったり、頭痛や肩こりの原因になったりします。
そこで、仕事中のちょっとした休憩時間や仕事が終わった後には、ストレッチなどで身体をほぐしてみたり、ストレッチができない場合は、身体のどこが凝っているか?など意識を向けるだけでもリラックス効果があります。

例えば、首の後ろに手を当ててゆっくり回したり、肩を上下に動かしたり、力を入れてから脱力する、背中を丸めたり伸ばしたり、お腹や胸に手で触れるだけでもリラックスしていきます。また、顔の表情も意識的に緩めてみましょう。笑顔を作ったり、舌を出したり、目を閉じたりすることで、顔の筋肉もリラックスします。
これらの動作は、身体だけでなく心もほぐしてくれ、仕事モードで高ぶっていた交換神経が落ち着きやすくなります。

2, 呼吸を整える

呼吸は、心身の状態に大きく影響します。普段から常に呼吸を意識している方は少ないと思いますが、基本的に仕事中は、呼吸が浅くなったり、速くなっています。これは、交感神経が優位になっている証拠です。
そこで仕事の合間や休憩時間など一息入れたい時などに、呼吸を意識してみてください。
深呼吸をしたり、ふぅーっと口から意識的に少し長めに息を吐き出したりするだけでも効果的です。特に、吐く息を長くすることで、副交感神経が刺激され、リラックスできます。 これをほんの1分間でもやってみると、副交感神経優位になり、その結果、心拍数や血圧が下がって、緊張状態が収まってくると思います。

<呼吸に集中する瞑想ガイド 4分間>

Source: 瞑想チャンネル for Leaders

3, 大地を意識して、しっかりと地に足をつける

3つ目は呼吸と連動させてもすごく効果がありますが、グラウンディングと言われる方法です。これは大地・地面に意識を向けることで、自分の存在感や安定感を高める方法です。
例えば今皆さんが立っていたり座っているとしたら、息を吐くときに足裏やお尻など地面への接点を意識してみてください。すると自然と重心が下がってリラックス感も感じられるはずです。

また歩く・走ることも有効ですが、その時に頭で考えごとをしないようにしましょう。歩いていることや走っていること、どのように身体や筋肉が動いているかを意識したり、足の裏の感覚に意識を向けたりしてみてください。
頭に偏っていた意識や血流が足のほうに降りてくるだけでも、心身のバランスが整い、リラックスしやすくなります。

簡単!仕事モードをオフにするための4分間瞑想

Source : 瞑想チャンネル for Leaders

4, スマホやPCから離れる

PCやスマホがすっかり日常に浸透し、仕事で使う業種も増え、手放せないという方も多いかと思います。しかし、これらのデバイスからは、過剰な情報や刺激が入ってくるため、目や脳に負担をかけるだけでなく、記憶力や集中力の低下などの認知機能の低下にもつながります。最近ではスマホ認知症、という言葉も聞かれるようになりました。

スマホ認知症とは

記憶力・集中力の低下や注意力の散漫、言語障害のような認知症と同じような症状が発生します。
症状は一時的なものが多く回復することが多いものの、放置すると睡眠障害や健康障害、若年性認知症に繋がる恐れもあります。
スマホ認知症の原因はスマホからの過剰な情報収集です。

Source : 健達ネット『スマホ認知症とは?

そこで、仕事が終わったら、スマホやPCから意識的に離れてみましょう。デジタルデトックスという言葉もありますが、これはデジタルデバイスから一定期間離れることで、ストレスを減らし、脳の疲れを解消することを意味します。
例えば、仕事後はスマホやPCを使わない時間帯を設けたり、「この日は電源をオフにする」と決めることで、集中力や創造力を高め、仕事の効率を向上させることができます。
またアメリカの起業家やCEOの間では『モンクモード』というタスクに集中する方法が話題になっており、その中でも携帯電話などを切る方法が有用と言われています。

参考記事 『起業家やCEOたちの間で人気! 生産性を高める「モンクモード」とは

5, 休憩時間を楽しむ

 休憩時間は、ただ時間をつぶすだけではもったいないです。休憩時間を有効活用することで、リフレッシュ効果を得ることができます。休憩時間や仕事の区切りごとに、ストレッチや簡単な運動をする、また本や音楽などの趣味や自己啓発など、気分転換になるアクティビティを取り入れることも重要です。

マインドフルネス瞑想もうまく活用することで、よりリフレッシュしやすくなるのでお勧めです。ほんの数分間でもやってみることで、仕事に集中していた状態から自分自身へと意識を向け、心や脳を休めることができます。

<休憩時間にオススメの聞き流す瞑想・ストレスを解放しつつ、集中力を高める>

Source : 瞑想チャンネル for Leaders

6, タスクを整理して気持ちを切り替え

タスクの優先順位をつけられず、毎日大量のタスクに追われていませんか? また、タスクが残っていると、仕事後のプライベートの時間にも気が散ってしまいます。
そこで、仕事の前後に、タスクを整理・管理することをお勧めします。仕事の優先度を明確にし、仕事とプライベートの時間を意識的に分けることで、より仕事のオンオフの切り替えがスムーズになります。
タスク管理のコツはこちらにまとめました。

おわりに

この記事では、仕事モードからオフモードに切り替えるための6つの方法をご紹介しました。これらはどれも簡単にできる内容なので、できそうなことから少しずつ実践してみてください。

AIの導入なども進み、できることが増え、求められる仕事の質も量も日々高まってはいますが、休息の重要性と効果を実感していただき、パフォーマンスを上げるためにもしっかりと切り替えて休む、ということを実践していただけたらと思います。

(編集 : s子)

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ABOUTこの記事をかいた人

大阪大学大学院博士前期課程修了。認定プロセスワーカー。臨床心理士。 瞑想経験20年以上。 マインドフルネス瞑想の土台でもある、10日間のヴィパッサナー瞑想リトリート(※)に15回以上参加。タイ、インドにて長期トリートで修行を積む。  深層心理学のユング心理学にルーツを持つプロセスワークの専門家。身体性やマインドフルネスを早くより研究、実践し、個人の心理のみならず、関係性やグループ、組織を対象に仕事をしている。ビジネスシーンにおいては、プロセスワークのコーチングや、組織開発やコンサルティングに従事。企業におけるマインドフルネス研修や、大手フィットネスクラブのマインドフルネス・プログラム開発や指導者養成も行う。著書に『日本一わかりやすいマインドフルネス瞑想"今この瞬間"に心と身体をつなぐ』BABジャパン2015、共訳書にアーノルド・ミンデル著『プロセスマインド』春秋社2013、ジュリー・ダイアモンド著『プロセスワーク入門』などがある。

(株)BLUE JIGEN 代表取締
バランスト・グロース・コンサルティング(株)取締役
(一社)日本プロセスワークセンター ファカルティ
日本トランスパーソナル学会 常任理事

(※) 10日間 話さずに座り続けるもの