ビジネスパーソンに特化したマインドフルネス講座を全24回に渡ってお届けしています。
今回は、ネガティブ思考への対処法についてお話ししていきます。
目次
脳・思考がネガティブなのには理由がある
生き残るためのサバイバル本能、闘争逃避反応
人間はかなり発達・進化をしてきましたが、脳神経系は狩猟採集民族だった頃からさほど変わっていない、と言われています。動物とか植物を見ていてもわかると思いますが、自然界で生き残るためにはサバイバル能力や本能を発達させる必要があります。
サバイバル能力は具体的には闘争逃避反応、戦うか逃げるか反応とも呼ばれるもので、現代社会を生きる我々の身体や脳の中にも残っており、日々 起こっていることで、ストレスとも関係しています。
想像してみてください。今私たちが自然界に放り出されて狩猟採集民族として生きることになったとしたら、、、
人間は最強の生物ではないので、夜寝るときに肉食動物に襲われ食べられるかもしれない、食糧を求めて移動し旅し続けなければならなくなります。なので、何か危険があったときに戦うか逃げるかを瞬時に判断して命をつなぐために常に危険を察知するためのアンテナを張り、よりネガティブな情報も拾って捉えていこうと集中する、闘争逃避反応が必要になります。
しかし私たち人類は進化によって狩猟採取から農耕民族(定住型)になり、さらに現代では文明や社会も発達して生活は安定し、予測される生命の危機が起こる頻度はすごく少なくなったはずなんです。しかし脳神経系には狩猟民族のころのサバイバル本能が未だにそのまま残っていて、日々働いています。
結果として脳にはネガティブなことに焦点を当てる傾向が残っている
今私たちが感じることができる闘争逃避反応の例としては、何か緊張する場面などで心臓の鼓動が速くなって血流が増えたり、瞳孔が開き、心臓に血液を集めるので手足が冷たくなる、といったことが起こります。
それは、敵を戦って倒すか走って逃げるか?を瞬時に判断していた狩猟民族だったころの行動反応システムの名残なんですけれども、今はそこまでの危険はそうそうありません。
しかし「何か悪いことしちゃったかなぁ」とか「こうしたらこうなって、こんなひどいことになるんじゃないかな」「この前ここで失敗したな」といった、いわゆる我々の思考が、このスイッチを入れてしまうんです。
ネガティブな反応が危険の感情を察知する
つまりサバイバル本能は本来、現代人は入れなくてもいいスイッチなんです。なぜなら命の危機ではないのに過剰な生理反応が起こることは理に叶っていないですよね。もちろん本当に危機的な状況だったらその対処法について考えたほうがいいですが、本能的な古い反応で、思考や対処をするより先に心臓がドキドキして頭が真っ白になったりします。
本来はネガティブな反応が危険の感情を察知するのに役立ち、危険を回避するためのネガティブな思考なんです。しかしネガティブ思考を日々繰り返していると、必要のないネガティブ思考の脳神経回路まで強化されてしまいます。そして最終的には心身のストレスとなり日常生活に支障を来たしてしまいます。
闘争逃避反応が頻発すると、、、?
そもそもサバイバル反応は頻繁に起こってはいけないものなのですが、悪く考える癖がついてしまうと、ちょっとした刺激でもすぐに闘争逃避反応のスイッチが入ってしまうようになります。その結果、副腎から抗ストレスホルモン(コルチゾール)が出るんですが、高レベルの抗ストレスホルモンにさらされ続けると、疲れやすくなったり慢性疲労になったり、心身のストレスにまでなってしまいます。
また、闘争逃避反応は興奮性の交感神経を一気に活性化するので、交感神経が活性化したままの状態が続くと、リラックスに向かう副交感神経が活性化しにくくなったり、自律神経が乱高下しやすくなり、最終的に自律神経失調症になってしまったりもします。
つまり脳神経系のサバイバル反応とストレス反応が繋がっていて、そこに客観性が乏しい思考が入ってしまうと、よりその繋がりが強化されてしまうんです。
ここの闘争逃避反応を落ち着かせるとか、扁桃体という脳内のストレス反応スイッチを落ち着かせる、というところにマインドフルネスがとても効果を発揮します。
ネガティブな思い込みパターンの例
闘争逃避反応はサバイバル本能ですから、悪い体験で同じ思いをしないように回避しようとします。しかし繰り返されることでマイナスの思い込みパターンを知らぬ間に沢山インストールしてしまう、ということは起こりがちなことです。
認知行動療法で言われていることですが、ネガティブな思い込みパターンにもさまざまな種類があるので、ここでいくつか例を挙げてみました。
皆様の中にも下記のような思い込みのパターンがあったりするでしょうか?「ああ、よくこういう思考パターン起こりがちだなぁ」とか、ちょっとこれらの箇条書きを眺めながら感じてみてください。
- 運命の先読み 何か出来事があったら「こういうことなんだね」「私はこうなる運命です」「こうなったらきっとこんな悪い結果になってしまう」と思い込むこと
- 拡大解釈 現実・ファクトよりもひどく悪く、基本マイナス方向に思い込むこと
- 過小視 自分を小さく見過ぎる傾向
- 過度の一般化 「こうこうこうだから、そういうものだよね」というふうに片付けようとする傾向
- 結論の飛躍
- 自己関連づけ これは妄想ぽいんですけれども、「私がこうしたからこうなったんだ」と全く関係ないことについても思い過ぎること
- 白黒思考 これは結構あるあるですね、白黒つけることでサバイバルする予測をつけやすいようにする、という感じです
- 〇〇べき思考、道徳など これも結構持ってる方いますね、道徳的に「べきべき」って自分を縛っちゃう傾向などです
- 読心術 「あの人はこう思っているに違いない」とか、「私のこと嫌いだからこうしているに違いない」といった考え方
- ネガティブフィルター ネガティブなフィルターを持って物事を見てしまう
- 破局視 破滅的な結果が起きるに違いないと思ってしまう傾向
- マイナス化思考 次回の講座はここから抜け出すのやる予定ですが、ポジティブなものも消えてしまい、良いこともマイナス化してしまう思考
- 〇〇耐えられない思考
- レッテル貼り
など、です。
脳の傾向を知り、フォーカスの当て方を変える
これまでお話ししてきたことのまとめと大前提として、そもそも私たちは
- 悪い方に意識が向きやすい、
- ネガティブなものばかり見てしまいやすいんだ、
ということを深く理解をしておくことが大事です。そういうもんなんだということを頭に置いておくだけで、ネガティブなパターンからも抜け出しやすくなります。
マインドフルネスでネガティブ思考と脱同一化する
それを「もう少しネガティブなところだけじゃなくて、広い視野を持ちましょう」っていうところにマインドフルネスが効果を発揮します。見えているものはネガティブなところだけじゃない、ということに気づいて脱同一化をしましょうという考え方です。
ネガティブ思考も含めて、様々な思考が駅のプラットホームの終着点みたいに頭の中にいっぱい去来してもオッケーです。仮にそこで留まっていても必ずいつかはその思考や感情は去っていくという視座を持つことで、光・フォーカスの当て方も変わってきますし、結果としてネガティブ思考もどんどん自由になる、ということが起こりやすくなってきます。
ありのままを観察するだけ
ここにマインドフルネスの集中とありのままの観察が大事になってきます。
ネガティブ思考では「ありのまま」を観察できていないのでどんどん思考が悪い方向に行ってしまいますが、マインドフルネスでは集中してありのまま、そのままを観察する練習をしていきます。
前回お話したインプット、プロセス、アウトプットの中の『プロセス』の部分で、その人自身が持つ感情や思考のパターン・傾向によってネガティブな方向に回りやすいのですが、このパターンをマインドフルネスで変化させるトレーニングができます。
【実践】ネガティブ思考への対処法(約6分間)
呼吸に集中する瞑想していくんですけれども、「集中できていないかも」とか思考や雑念が出てきたことに気づけたら、気づいたまま放っておきましょう。「雑念や思考に対処しなきゃ」というのも全部思考なんですけれども、「ネガティブ寄りに回りそうだな」ということにもし気づけたら気づいてみてください。そしてほっぽっておきましょう。
もしまた新しい思考や雑念がやって来たら、去っていくまで放っておく、今ここにいる、ということをとにかく繰り返す練習をしていきましょう。
次回は『 無理のないポジティブ思考|アファメーション』についてお伝えします。