マインドフルネス用語解説|意識の発達段階とは

意識の発達段階(いしきのはったつだんかい)

Growing up

 インテグラル理論では意識の発達段階を色でも表現します。各発達段階には多くの特徴があるので、どんな特定の名前を用いても、その段階全体を表現するにはあまりにも狭く、それゆえ誤解を招く恐れがあり、そういった誤解を避けるために『色』という中立的な表現を用いているとのこと。
 詳細は『インテグラル理論を体感する』をご参照ください。

段階1:古典的段階(インフラレッド)

 生まれたばかりの子どもは基本的に、分離した自己感覚をもっていません。どこまでが身体で、どこからが環境なのか、区別することができないのです。母親や周りの環境とひとつになっており、純粋な溶融状態にあります。
 この段階は「古典的段階」「共生的段階」「溶融段階」「感覚運動段階」「生理的段階」などと呼ばれます。

段階2:呪術的段階ないし部族的段階(マジェンタ)

 生後およそ18ヶ月ごろになると、自分の情動や感情と、他者の情動や感情のあいだに、基本的な区別をつけ始めるようになります。この段階は子供の中に本当に分離したといえる自己が誕生することから「乳幼児の心理的誕生」の段階ともよばれます。思考の様態は呪術的ないし空想的であり、意識はイマココの瞬間に向けられています。
 この段階は「衝動的段階」「呪術的段階」「情動的―性的段階」と呼ばれます。

 呪術的とは、物事を空想に基づいて考える傾向があり、どんな願望も魔法のような力によって実現することができると信じているから。また少し自己と環境が混ざり合ったままで、外的環境にも人間のような性質があると認識、人間以外のものを擬人化することで自然の全てに対して人間的な性質を見出しています(アミニズム)。

段階3:呪術―神話的段階(レッド)

 自己が成長を続け、自分自身と周りの環境をもっと明瞭に区別できるようになると、自分という存在がとてもかよわい存在であることを明確に意識するようになります。そのためさまざまな「力への衝動」を発達させ、力と安全を求める段階です。これは通常6から7歳頃まで続きます。

 この段階は「自己防衛的段階」「安全の段階」「力の段階」「日和見主義的段階」と呼ばれます。

 自己中心的で自分本位であるけれど同時に、どうすればパワーを確保できるかということで頭がいっぱいの状態。世界とは適者生存の場所であり、最も大きく強いものこそが勝利するという世界観。

1から3の段階ではどれも「自己愛的(ナルシスティック)」「自己中心的(エゴセントリック)」な段階。すなわち自己は一人称「私」の視点のみに固定されているので、「他者の立場に身を置く」ことができません。
相手が感じていることを本当に感じる能力や相手の立場に立って物事を見る能力は、生まれつき人間が持っているものではなく成長や発達を通して新しく出現する特性なのです。

段階4:神話的段階ないし伝統的段階(アンバー)

 自己中心的から二人称の視点(we)が出現し、他者の立場に身を置くという能力が現れ始め、アイデンティティが自集団中心的(自分の所属するさまざまな集団、家族、氏族、部族、民族、国家、宗教、政党など)なものへと変化・拡大します。神話的で順応的、同調圧力へと駆り立てられる段階で、子供では6, 7歳ごろから青年期まで続きます。多くの成人にも潜んでおり、唯一無二の心理として絶対的に信奉するという在り方。

 この段階は「順応的段階」「神話的―メンバーシップ的段階」「外交官の段階」「所属の段階」と呼ばれます。

 この段階は自己中心的なアイデンティティから自集団・自民族中心的(エスノセントリック)なアイデンティティへの転換点とも呼ばれます。集団への所属を特別に重視することは、この段階の特徴的な在り方です。

 順応的段階とは他者の役割を引き受けることができるのですが、同時にそうした役割の中に捕らわれてしまいます。もし絶対的な信念、全くもって完全に疑う余地のない考え(例えば科学至上主義や、マインドフルネスのみで全てを解決できると盲信している場合など)をもっているならばそこには原理主義が生じていて、この段階の在り方が活性化されている可能性があります。

<松村憲さんによる、インテグラル理論の”I”と”we”を体感する誘導瞑想です>

Source : マインドフル瞑想チャンネル


段階5:合理的段階ないし近代的段階(オレンジ)

 三人称の視点が出現し、客観的で科学的で普遍的な視点に立って物事を見つめられるようになります。私たちのアイデンティティはグローバルで世界中心的(ワールドセントリック)なものへと拡大します。この段階において初めて、人間としての普遍的な権利というテーマが前面に現れてきます。

 思考について思考すること(形式操作)、思考そのものに気づけるようになり、内省的で良心的で普遍的なアイデンティティ、世界市民(コスモポリタン)としてのアイデンティティをもつことが可能になります。青年期のどこかで理性と革命の段階が出現し、青年期に特徴的な反抗心や個人主義的態度が現れてきます。歴史的に人類が集合的にオレンジの段階に突入したのはおよそ300から400年前の西洋の啓蒙時代のこと。

 この段階は「理性の段階」「合理性の段階」「形式操作の段階」「良心の段階」「達成の段階」「優秀さの段階」「自尊心の段階」とも呼ばれます。

 自尊心の欲求がこの段階で現れるのは、三人称の視点によって、いわば自分自身から一歩引き下がり、自分を客観的に評価することが可能になるから。子供の成長段階でいうと10代に集団への順応を重視する段階から、もっと根本的に個人を重視する段階へと変化が起き始めます。民主主義におけるボトムアップ型の統治形態もこの段階にあたります。


段階6:多元的段階ないし後-近代的段階(グリーン)

 四人称の視点が新しく活用される段階。四人称の視点とは、三人称の視点(例えば科学)そのものを内省の対象にし、批判できる能力のことを意味します。この能力は多数の異なる見方、多元的な見方を生み出すことができます。

 この段階は「多元的段階」「後-近代的段階」「相対主義的段階」「感受性豊かな段階」「個人主義的段階」「多文化的段階」とも呼ばれます。

 純粋な平等性と相互協力の精神に基づいており、どのような順位づけも、どのような階層的判断も存在しない社会こそが、目指すべき理想で、『心』こそが全ての真実の土台であり、どのような真実も体現(身体化)されなければならないと考えています。全ての人の平等性を何よりも大切にする段階。

 新しいパラダイム、量子力学の考え方と合致、自然中心的、相互協力や気遣いや慈愛の精神に基づいており、全体論的であり、有機的であり、フェミニズムと親和的であり、地球中心的であり、グローバルかつローカルなもの。
 一方でグリーンの段階は、全ての人々を公平に扱おう平等に接しようと主張しながらも、あらゆるオレンジの価値(資本主義、ビジネス、利益、達成すること、優秀であること)を嫌っており、アンバー以下の段階の価値観を嫌っており、あらゆる統合的な価値を嫌っている矛盾も含んでいます。


段階7:統合的段階(ターコイズ・ティール)

 過去の全ての段階が、重要な役割を果たしているとみなし、全ての段階が極めて重要だということを、この段階は直感的に理解しています。

 最初の6つの段階までを第一層(ファーストティアー):部分的で、視野が狭く、排他的で、互いに孤立しており、その主な動機は不足や欠乏の感覚。
 段階7以降を第二層(セカンドティアー):包括的で、インクルーシブで、統合的であり、豊かさや充足の感覚に基づいて活動します。世界人口の5%程度と推計。

 この段階は「全体論的(ホリスティック)な段階」「戦略家(ストラテジスト)の段階」「システム的な段階」とも呼ばれます。

 全体的であることを動機として活動し、あらゆる物事のあいだにつながりを見出し、全てのものが他の全てのものと深く関係していることを見抜いています。
 個人レベルでは自尊心の欲求が自己実現の欲求へと道を譲ります。個としての本質をもっと実現したいという欲求であり、あらゆる種類の驚くべき潜在能力が開花するようになります。創造性が増大し、意識が拡大し、もっと多くのものを包含できるようになり、もっと多くの愛と気遣いを表現できるようになります。

 思考と感情はどちらも重要なものであり、考えることと感じることはひとつにまとまり、密接に結びつくようになります。

段階8:超-統合的段階(ホワイト)

 基本的には段階7の統合的段階が今日における進化の最先端であると言えますが、現実にはさらに高次の諸段階が現れつつあります。進化には終わりがないであろうことを踏まえると、意識の発達は今後も続いていくと考えるのが自然でしょう。こうした高次の諸段階はまとめて「超-統合的段階」「第三層」の段階と呼ばれています。

<関連記事>

『インテグラル理論を体感する』解説
 1, GROWING UP (意識の発達段階)
 2, WAKING UP (意識状態の覚醒)
 3, GROWING UPとWAKING UPの両方を考える


 

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