野田浩平:急速に変化する現代社会において、個人も組織も変革を求められています。その中で注目されているのが「ウェルビーイング」という概念です。
本連載対談『ウェルビーイング時代のチェンジマネジメント』では、コアとなるキーワード『ウェルビーイング』を構成する3つのさらなるサブのキーワードとして、レジリエンス、コミュニティ(共同体)そしてプレゼンシング(出現/在り方)という3つのキーワードを挙げ、数回に渡って解説・対談していきます。
第2回の今回のテーマは、レジリエンス、変革の波に揉まれながらも、しなやかに適応し、成長を続けるための鍵となる概念です。認知科学(野田)・心理学(松村)・エグゼクティブコーチング(小島)を専門とする3人からそれぞれ説明をさせていただいた後に、実際の事業開発の現場で変革を見てきた実務家 Felixさんも交えて、多角的な視点からレジリエンスの本質に迫ります。
<第一回目はこちら>
Source : ウェルビーイング時代のリーダーシップ研究所
目次
ウェルビーイングの真髄:個人と組織の幸福を探る
野田浩平:私たちが目指す「ウェルビーイング」とは、単なる健康以上の、人生の質そのものを表す概念です。しかし、この重要な概念が日本の職場では十分に浸透していないのが現状です。なぜでしょうか?そして、どうすれば改善できるのでしょうか?
ウェルビーイングの起源と現代的意義
前回のおさらいで、ウェルビーイング(Well-being)は、1946年に世界保健機関(WHO)が設立された際に「健康」を定義づける言葉として使われたのが始まりです。
その定義は、「身体的・精神的・社会的に良好な状態」を指します。つまり、単に病気でないということではなく、人生のあらゆる面で充実した状態を意味するのです。
近年、ウェルビーイングの重要性は国際的にも認識されています。
- 健康と関連したSDGsの17の目標の3番目の目標:Good Health and Well-being(すべての人に健康と福祉を)
- 日本政府:2017年「経済財政運営と改革の基本方針 2017」において、QOLに言及、
2021年 Well-beingに関する関係省庁連絡会議を設置
日本の職場におけるウェルビーイングの現状
しかし、理想と現実には大きな隔たりがあります。2016年にバークレーヴァウチャーズが実施した「職場でのウェルビーイングに関する調査」では、世界15カ国にわたって14,400人の従業員を対象に実施されました。
その結果、日本の職場におけるウェルビーイングの満足度は44%と最も低い(世界平均は71%)ことが示されました。この数字は、日本の職場環境に根本的な変革が必要であることを示唆しています。
Source : ウェルビーイング時代のリーダーシップ研究所 第一回
ウェルビーイングを高めるチェンジマネジメントの3つの柱
では、いかにしてウェルビーイングを高めながら、効果的なチェンジマネジメントを行うことができるでしょうか?
そこで私たちは、ウェルビーイングを構成する3つの重要な要素を挙げました。
- レジリエンス:変化に適応し、逆境から立ち直る力
- コミュニティ:支え合い、共に成長する環境
- プレゼンシング:今ここに存在する意識と、未来を創造する力
本シリーズでは、それぞれの要素についてチェンジマネジメントと絡めながら深く掘り下げていきます。
今回は1つ目のレジリエンスに焦点を当て、私の方から初めに説明させていただきます。
私は松村さんと同様、どちらかというと個人寄りの心理学が専門ですが、例えばリーダーシップ研究においても、個人のレジリエンスがいかに重要かを日々感じています。つまり「レジリエントな個人」が増えることで、組織全体のレジリエンスも高まるのです。
他にも、21世紀、2000年に入ってから、ポジティブ心理学というものが世界中で注目を浴び、そこでもレジリエンスについて議論されています。
レジリエンス:変革時代を生き抜く力
レジリエンス(resilience)、日本語では「回復力」「復元力」「弾力」などと訳されるこの概念は、、現代社会を生き抜く上で欠かせない能力として注目を集めています。
ペンシルバニア大学ポジティブ心理学センターのラビッチ博士は、レジリエンスについて「逆境から素早く立ち直り、成長する能力」と定義し、さらに以下の8つの要素を「レジリエントな個人」が兼ね備えている、と示しました。
◼︎レジリエントな個人が持つ8つの要素
- 自己認識:自分の強みと弱みを客観的に理解する力
- 自制心:感情や衝動をコントロールする能力
- 精神的敏速性:状況の変化に柔軟に対応する能力
- 楽観性:困難な状況でも前向きな見方を保つ姿勢
- 自己効力感:自分には困難を乗り越える力があるという信念
- つながり:他者との良好な関係性を築き、維持する能力
- 生物学的要素:遺伝子レベルでの影響
- ポジティブな社会制度:家族、コミュニティー、組織などの支援的環境
(Source:ライトワークスブログ)
これらの要素は、互いに影響し合いながら、個人のレジリエンスを形成しています。
なぜ今、レジリエンスが必要とされているのか?
「なぜレジリエントな個人、コミュニティや社会が必要になるのか?」レジリエンスが今注目されている背景には、現代社会の不確実性があります。
そこで、レジリエンスを理解する上で重要な2つの概念があるので、以下ご説明します。
- 危険因子:個人、集団や社会などをクライシスに陥らせる要因
例:戦争、災害、病気、貧困、離婚、虐待など - 保護因子:困難な状況やストレスを乗り越える力を促す要因
例:個人の特性、獲得したスキル、社会的支援など
(Source : NECソリューションイノベーターブログ)
つまり「危険因子」によって困難な状況に陥った際、柳のように折れずに回復へ向かうための「保護因子」を強化する能力が、レジリエンスと言えます。
レジリエンスを構成する4つの要素
こういったレジリエンスを促す要素・保護因子の中で、個人が持つものには生まれつきの資質だけでなく、後天的に獲得できる能力もあります。
- 資質的要因(生まれつき持った生物学的・遺伝的な特性):楽観性、統御力、社交性、行動力など
- 獲得的要因(後天的に身につけるスキル):問題解決志向、自己理解、他者心理の理解など
- 精神的回復力:新規性追求(特性)、感情調整(能力)、肯定的な未来志向(価値・信念)など
- その他の要因:自己認識、自制心、精神的敏速性、自己効力感、社会的繋がり、ストレス耐性、コーピングスキルなど
その他の研究からも、困難になった時にどれだけ折れないでいられるか?といった心理学的な側面もレジリエンスに密接に関連することが明らかになっています。さらに、性格的要因や個人の信念、価値観、思考といった要因も関わってくるとも言われており、全体として個人が持っているレジリエンスに関係するこれらの要素が複雑に絡み合い、個人のレジリエンスを形成しています。重要なのは、これらの多くが訓練や経験を通じて強化できるという点です。
続いて、心理学者・プロセスワーク研究者の視点から松村憲さんに、レジリエンスとは?という解説をお願いいたします。
松村憲:はいありがとうございます。
野田さんのご説明で、レジリエンスの心理学的な部分もかなりご説明いただいたのと、レジリエンスの説明の中でストレスコーピングの話題がありましたので、そこをもう少し細かく解説していきたいと思います。
ストレス反応とレジリエンス:最新の神経科学からの知見
松村憲:近年、生理学・神経学的な研究分野において、人間のストレス反応がどのように現れるのかが研究されており、その中でレジリエンスを考える上で役立つと考えられる理論があるので、ご紹介します。
ストレス反応の理解を深めるための神経学:ポリヴェーガル理論
ポリヴェーガル理論とは、多重迷走神経(迷走神経:脳の延髄から腹部にまで到達する神経の一つ)理論と訳され、これはアメリカの神経生理学者 ステファン・W・ポージェス氏が提唱した自律神経に関する新しい考え方です (Porges SW. Psychophysiology. 1995)。
具体的には、進化論、心理学、神経科学に基づき、人間は繋がりを育む社会性を持つ哺乳類であり、集団の中で生理的な状態を介してサインを送り合うことで安全安心を感じます。その際にレジリエンスに関係する自律神経も関わっています。
従来の学説では自律神経は交感神経系と副交感神経系の2つに分類されてきました。
交感神経という今皆さんこうやって話ししている時に働く自律神経で、アクティブに活動しているときは交感神経優位と言われています。一方、昼間の活動が終わり、夜寝る時などには副交感神経が優位になり、リラックスしていきます。
ポージェス博士による新しい分類
ポージェス博士はこれらに加え、「副交感神経には2種類ある」と提唱しました。
1つは背中側を走る背側迷走神経で、進化的に古く爬虫類からあり、防衛本能「凍り付き」に関わります。
もう1つが哺乳類特有の腹側迷走神経で、表情、喉とか胸とか声などに作用し、社会性やリラックスに関わります。(※迷走神経は副交感神経の大部分を占める主要な神経線維ではありますが、厳密にはイコールではありません。詳細はこちら)
ポリヴェーガル理論によると、自律神経系は以下の3種類に分類できます。
- 背側迷走神経 (防衛的凍り付き)
- 交感神経系 (活動・ストレス)
- 腹側迷走神経 (社会性・リラックス)
自律神経系とレジリエンスとの関わり
では、具体的にこれらの3種類の自律神経系が活性化するとどのような状態になるのか?について、レジリエンスと関連させながら考えてみたいと思います。
下の表は背側迷走神経、交感神経、腹側迷走神経が活性化すると実際、どんな風に個人に現れるかについて、声や姿勢などそれぞれに分けてまとめたものです。
例えば姿勢を見てみると、背側迷走神経が優位になり過ぎてしまった場合、本当に無気力になり、レジリエンスどころではなく、へこんでしまったらそのまま落ちて行ってしまう、というような状態です。また交感神経が活性化し過ぎると準備・警戒状態に入り、構いすぎてしまい緊張・興奮しすぎる、といった状態になります。こういった状態は燃えつきに繋がる状態でして、交感神経優位になりすぎると準備警戒状態が過剰になります。
一方で、一番右側の腹側迷走神経が活性化しているときは、関わりの中でリラックスしている、という状態で、重力に従って姿勢もリラックスしている状態になる、と言われています。
これら3種類の自律神経系は個人が持つ神経ですが、心という意味でのレジリエンスについて神経学的に考えると、『調整力のある神経系を持っている人がレジリエントである』と言われています。良い神経の状態を作っておける、そういうリーダーがチームの中にいる、そういうレジリエントな神経状態を持っている人の数が増えてくるとチーム全体にも波及してくる、神経状態は伝播していきます、といったことも言われています。
神経系の三つの毒パターン
これは極端な例になりますが、神経系の3つの毒パターンという、ストレスが大きすぎてレジリエントではなくなった時の人・組織のパターンについて説明します。
『高止まり』というのは、すごい興奮状態になってしまうとか攻撃的な職場になってくかもしれないですね。
『切り替わり』というのは波が激しい、わーっといったと思ったら、ストーンと落ちちゃう、みたいな状態です。
『ロックアップ』と言われている状態は神経の反応がなくなってしまう、無気力な状態です。諦めが蔓延している状態はレジリエントではないですし、このロックアップに近い状態なったりするんじゃないかなと思います。
プロセスワーク心理学の視点でレジリエンスについて考える
ここから、私の専門でもあるプロセスワークという心理学の背景から、レジリエンスと個人・組織について考えてみたいと思います。
下の図はフェーズ理論と言われてるものです。
フェーズ1:エンジョイ、楽しもう!という状態はいい状態ですよね。しかし何かを始めた時のいい状態はずっと続くわけではなく、次にフェーズ2の緊張・コンフリクトの状態になります。意見の対立が起きたり、これを放置しておくと、もしかしたら背側迷走神経優位の諦めの状態になるかもしれないですし、過度な対立になってしまうかもしれませんね。戦うモードに入ってしまいます。
ここからレジリエントな組織になっていくと、こういったこともフェーズにもちゃんとあるよね、というのを肯定しつつ相手を理解する立場のコミュニケーションが増える、フェーズ3になり、そういう状態になってくるとチームはゾーンに入ってくる、この状態はフェーズ4・手放すの状態と考えます。
フェーズ理論では、大まかにこれら4つのフェーズが起こってくると考えます。
ただ組織におけるフェーズと考えると、このフェーズ2の緊張と対立というフェーズは非常に大変だと思います。
組織の中では必ず、ランクを持っていて声が大きく強いグループ(主流派)とそうではないグループ(非主流派)があります。さらにプロセスワークでは非主流派の中でも、声が聞かれていないとゴーストになるといわれており、不満が募るけれども、誰も不満を表明しない、しかし雰囲気として現れて組織状態の症状になってくる、といったことが起こってきたりします。
この際、逆にここの緊張・対立のフェーズ2を、ちゃんと相手を理解するといったフェーズ3として扱うことができると、組織としてもレジリエントな状態になっていくことが可能となる、とレジリエンスとプロセスワーク心理学の考え方を組み合わせていくことで言えるんじゃないかなと思っております。
以上になります。
小島美佳:ありがとうございます。松村さんの今のお話しの中でお伺いしたい点があります。3つの神経系の説明のところで、これをビジネスマンはどう解釈したらいいのか?なのですが、結論から言うと1番右側の腹側迷走神経が活性化している状態を維持できていることが望ましいのでしょうか。
松村憲:はい。右側、腹側、人や社会との関わりの中でリラックスできている状態が維持できていたら、すごくいい状態と言われています。
ただしその状態に行くためには、自分の中で今はテンションが高すぎるかな、興奮状態かも、交換神経優位になっているな、と自分で気づく、またはちょっと今ペースが遅いな、無表情になっているな、という背側迷走神経優位な状態かも、と自分の神経状態を認識し、そういった気づきやワークなどをしていくことで、レジリエントな神経系になっていく、具体的には自律神経のバランスが整い、調整能力が高まる、ストレスに適切に反応・対処できるようになる、という風に言われています。
小島美佳:なるほど、つまり日々のその場において腹側迷走神経優位な状態を維持できるリーダーになっている、チームのメンバーにもそういった状態の人が増えてくると、なかなかよろしいです、ということですね。
チェンジマネジメントにレジリエンスの概念を導入する
ここまでレジリエントな個人・組織についてお二人にお話しいただいたので、その内容を踏まえつつ、どう今後のチェンジマネジメントについて考えていけば良いのかについてお話しできればと思います。
まず、変化を起こす、アレンジする立場になった際に、考えることには大きく2つあると考えます。
1つは権力の大きさです。変革を主導する主体となる人物及び組織がどれだけパワーを持っているのか?
もう1つが変革テーマに絡むステークホルダー(利害関係者)の数です。
例えば、変革主導者が持つパワーが大きい状態でステークホルダーの数が少なければ、スムーズに変革していける。変革のスピードは速くなる、というのは想像しやすいですよね。変革を主導する主体のパワーが強い国・そうではない国、企業というものがあるかと思います。しかし、現代の世界がますます複雑化する中で、巨大な権力をもちいて何かを動かす、ということは難しくなってきていますし、ステークホルダーの数も多くなってきています。
こうした複雑性の高い世界の中でどうやってレジリエントに、また、先ほどマツケンさんの説明であった左側の2つの神経系を過度に活性化しすぎることなく自然な形で、ストレスなく良い意味での省エネ、さらには自律神経系のバランスが良いチャレンジマネジメントを行えるのか、が次の問いとなります。
私自身のコンサルタント経験でも、できる限り強いリーダーシップのもとでの変革をやるべきという意見は根強かったように思います。抜本的なラディカルな変化、構造的変化をすべき、という雰囲気が少しかっこいいなと感じていた時期がありましたが、今回はそれと対極的な立ち位置のもので、非常に示唆に富んだ社会科学における2つの理論をご紹介します。
レジリエントな変革を行うためには – 社会科学の視点から
ご紹介するのは、奇跡の社会科学という著書の中で述べられていた理論で、1つ目が、18世紀のイギリスの政治思想家・哲学者であるエドマンド・バークによる古典的な理論です。もう1つがアメリカの政治学者のチャールズ・リンドブルムという学者の理論です。順番にお話しさせていただければと思います。
1, エドマンド・バークの「保守思想」
エドマンド・バークは保守思想の父とも呼ばれ、フランス革命とその後の変化を研究した人物です。
「保守」と聞くと、「今あるものは変えない」といったイメージを持たれる方も多いかと思いますが、バークの保守思想は「社会(または企業)は基本的に複雑なものであり、その複雑なものに変化を起こすことは容易ではない。抜本的に変えるんだ」という考え方で、何かを変化させることはそもそも不可能である、という立場です。
前例がないものを試すことは気楽である、これは、そういった機運を一旦作ってしまえば、「それって良いことだよね」という雰囲気が作られるので最初は勢いがあるものの、継続性が乏しい、と述べています。これは現代の企業変革でも「打ち上げ花火のようなプロジェクト」と呼ばれ散見されるように思います。新しいことを始めることは、希望が持てますし、特に若手社員には支持されるケースが多いですよね。しかし、5年6年後に振り返ると「あれって何だったんだっけ?」と忘れられていることも多いように思います。
バークの理論は対照的な方法で、今のシステムを維持しつつ、同時に改革を進めていくやり方になります。ラディカル・抜本的な変化を求める場合、現在を否定する論調がもてはやされがちですが、既存の有益性も維持しつつ、新しい考え方と整合性をとった方が有益ですよ、ということ。つまり、今まであった幸福を今後も維持できることを念頭におきながら変化を起こしていく、といった考え方です。
これは先ほどのお2人の話の中で、繋がりを大事にする必要がある、いろんな意味で急に何かを失うという経験はレジリエンスという観点では危険因子となるとありましたが、そういったことが起こらないような戦略性を持って変化を捉えること、と解釈できます。
ここまでがエドマンド・バークの内容です。
2, チャールズ・リンドブロムの増分主義・インクリメンタリズム(Incrementalism)
2つめのチャールズ・リンドブロムが提唱したインクリメンタリズムについてですが、この単語・言葉を私自身はこの著書で初めて勉強させていただきました。Googleで検索してみると、インクリメンタリズムは日本語では2,230件ヒットする一方、incrementalismでは82万6000件もヒットするので、学術的な分野や海外では比較的著名な概念なのかもしれません。
リンドブルムは先進工業諸国の福祉政策と労働組合の研究を通じて、インクリメンタリズム(増分主義)という概念にたどり着き、政策変化は革命的なものではなくて進化的に生じることが多い、その方が有効である、という主張を持っています。
この理論の中では
- 予測できる範囲の変化を試して、修正していく、ということの方が理に叶っている、
- インクリメンタリズムであれば利害調整も少なくて済み、繰り返し変化を実行することが可能となる、
ということで、考え方としては、“なし崩し作戦”のようだなと感じました。
これを企業やビジネスの場に考えてみると、変化が起こっていないように見せて、水面下では何度も変化を繰り返すし、少しずつ確実な変化を起こす、といった戦略ですね。既得権益のしがらみと戦いに行く、といった抜本的な改革は障害も多くなるため、大きなパワーが必要となります。そのパワーが維持できるうちは良いですが、抵抗勢力を敵とみなして叩き潰しすことができたとしても、パワーが失われた瞬間にじわじわと揺り戻しが起こります。
このように、抜本的な変化を起こそうとする時には、既得権益がありながらも組織の状況に応じて確実に変化させる戦略であるインクリメンタリズムの方が、現代においては、理にかなってるんじゃないかな、と感じたところです。
野田浩平:ありがとうございます。引き続き後編では議論に移っていきたいと思います、Felixさんの方からここまでのところで感想やコメントなど口火を切っていただければと思います。
◼︎講師プロフィール・野田浩平
博士(学術・認知科学)。
認知科学から着想を得て途上国の開発問題から気候危機、気候正義、メンタルヘルス、ロビー活動、起業や活動家の育成までフリーランスとして幅広く行う。
株式会社グロービス リサーチ ファカルティ、
MIT経営大学院グローバルプログラムIDEAS Asia Pacific ローカルファカルティ
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