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マインドフルネス瞑想の良書紹介 3冊目は、こちらです。実は、ここで紹介するのは もったいない… と思えるほど良い本だと思います。
『シャンバラ−勇者の道』, チョギャム・トゥルンパ(著)
本の内容
「MARC」データベースより
チベットの幻の理想郷シャンバラ。その王国の勇者たるにふさわしい資質はどう育まれたのか。今に伝わる精神修行の道程をわかりやすく解説。無我の悟りともかかわってくる4つの性質とは?
こちらの本を前編、後編の2回に分けてご紹介します。
どのような人に勧めたいか?
小島美佳:さて、先に私の方からお話しすると、なんだかんだ言ってこの本はレベルが高いなぁと感じました。人間的な成長を求めて努力してみたり、瞑想にも出会って、より自分自身を高めたいと思っている人にとっては、聖書みたいな位置づけになり得る本かなと思います。
松村憲:うんうん。
小島美佳:一つ一つがとっても深く語られているので、最初にサーっと読んでピンと来なかったところが、もうちょっと経験を積んだ後に読み返してみると辻褄が合うところがあるのかなと言う感じです。
松村さんはどうでしたか?
松村憲:まさに今美佳さんが言ったようなバイブル的な本になり得るなと、僕はそういう感じに思っている本の1つですね。とても素晴らしい本だなと思っていて大好きです。
でも、多分もう絶版でなかなか手に入らないかもしれませんが…本当に名著だと思います。
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あと、いろんな瞑想に興味があるとか、精神的な成長に興味があるとか、そういう枠組みでは考えていないけれど、「世の中に対して、自分にできる事はなんだろう?」って考えて一生懸命生きている人にとっては、指針として刺さることがあるんじゃないかなと思います。
読み物としてもパワフルなので、読んでおくと後から響くようなこともあると思うし、本当に響く人にとっては魂に響く本だな、と。
著者について
松村憲:後はこの著者自身がすごいユニークな人で好きなんですけれど、その話とかも今しちゃって大丈夫ですか?(笑)
小島美佳:どうぞどうぞー
松村憲:チョギャム・トゥルンパは、ダライ・ラマみたいな感じで、活仏っていうチベット仏教の中では転生して生まれてきた偉いお坊さんの魂だと言われています。若い頃に見出されて出家して、「あなたは転生した偉い人なんですよ」と言われて高等教育を受ける。イギリスの大学に入って、イギリスで西洋の文脈で色々な哲学や宗教学を勉強したりって言う、まぁもう仏教の勉強は若くからさせられているんだけれども、チベットでは超エリートですよね。
なんだけれど、彼は、「仏教の枠組みで仏教の本質を伝えてもダメだ」と若くして悟って、それを実際にアクションにした人なのです。精神的な解放とか ハートについて語っているけれど、
それを「ブッダはこう言いました」とか、「仏教ではこう言います」というレベルで話していない。エッセンスは全部伝えているけれども、それはあなたにも通じることなんだと、私たちのところまで 降りて来て話してきてくれてる感じ。
またスピリチュアルな事柄にしても、遠くの世界にある話じゃないんだよ、今ここにあるんだよ、日常のあなたの生活の中にあるんだよ、と語りかけているところが、本当に秀逸というか。他の人が書いた本とは一線を画している部分があるかなと思いますね。
深い内容ゆえに、読み手の解釈は様々かも?
小島美佳:私自身は、伝えられている言葉と自分の経験を重ねて読んだところがすごくあって、結構「あーそうそうそう」みたいに思っていました。
特に痛みについての部分。ある程度の経験をしてからじゃないと、このニュアンスってわからないだろうなぁ…とか。一定程度の熟成があった後の世界観みたいなところを、出来る限り分かり易く伝えてくれていますね。
これはキリスト教や聖書とかにも通じることなのかもしれないけど、ある程度の熟成があってからじゃないと分からないような内容が多分に含まれている印象がすごくあります。
松村憲:そうなんでしょうね。
小島美佳:例えば、初めて瞑想に興味を持ったみたいな人にこの本を勧めてみても、「良いことをするといいことがあるのね」みたいな、やや薄っぺらい解釈をするような人もいる気がする。
何か大きな苦労や学びが成熟した後の人に刺さって、やっていることが間違っていなかったみたいな、答え合わせをする本、という風にも思いました。
松村さんは、どうですか?
松村憲:読む人によっては、そうなのかもしれないですね。薄っぺらく感じる人には読み切れないかも。でも、そういう人でも興味があるなら読んだらいいと思います。人生全般について、深く扱っているので 刺さる人には刺さるだろうなと思いますし。
小島美佳:そうですね。そういう意味では、癒しになる本ですね。
勇者として生きるための瞑想
松村憲:後は「本当にありのままの自分を肯定する」みたいな話が、単純なようですごく難しいじゃないですか。
自分を肯定するって、どういうことなんだろう?と瞑想していても思うんだけれども、著者が言っている自分自身の「本当の深い善良さ」っていうのは存在する。(今この世に生まれている時点で誰にでもあるのだけど)我々はいろんな文脈、歴史、生きてくる過程で それが見えなくなりますね。でも、善良さに開かれていくことは可能だと教えてくれる。
この本は瞑想の本でもなくて、瞑想については少ししか書かれていなんだけれども、自己肯定の域に到達するために「絶対に座る瞑想が必要なんだ」と書かれていたのは、改めてやっぱりそうなんだよなみたいな、自分にとっても再確認できる部分があります。
小島美佳:そうですね。
松村憲:頭と身体をシンクロさせる、結局頭と体はなかなかシンクロしないけれども、シンクロするためにもやっぱり瞑想が必要なんだなと。
なんていうのかな、ほんとに革新的なところからそうしたことについて書いてくれているって言う感じがします。
小島美佳:そうですね、瞑想の本質的な意味みたいなものを、改めて確認するって言う深い意味合いをもう一度見いだすことができるっていうのは、確実にある気がします。
松村憲:本当にありますね。
だから、自分がありのまま肯定されて生まれてきたって言う前提に立てれば、苦しみだとか課題だとか社会の中にたくさんあるので、そのためにも勇者は目覚めを共有していくのが、当然の喜びであり義務なんだって言う、結構厳しめに書いてあるところもあります。
世界の状況について何ができるんだろう?みたいに真剣に考えている人たちには響くんじゃないかなと思います。
世の中を、ありのままに見ていくと理不尽なこととかいろんな課題や痛みが見えてくるわけじゃないですか。この本は、『シャンバラ−勇者の道』って言うタイトルなんだけれども、勇者っていうのも ただ単に力が強いのが勇者なのではなくて、「勇者とは、ほんとに本当は優しいんだ」っていう話があって、優しさっていうのはハートが開かれているから痛いんだって言う話が何度も繰り返されます。
だから哀しみとか痛みを、今もしあなたが感じていたとしても、それは避けるものじゃないんだっていうか、まぁ「それこそが勇者のハートの痛みなんだ」と。
そういうプロセスにある時だったり、瞑想してだんだん自分に向き合って 痛くなったり辛くなったりという時に、そこを越えていく支えになるんじゃないかな。
小島美佳:そうですねー。
やっぱり、人間的な成長と瞑想の深い意義みたいなところを掘り下げて理解したい方には、ぜひ読んで頂きたいです。
この ”痛み” については非常に大切な部分ですので 、後編では「勇者への道」の中で扱っていた “痛み” ”悲しみ” について続けて対談していきたいと思います!