【論文紹介】マインドフルネスの実践が認知的バイアスを軽減し意思決定を変える

【補足1】今回の論文で行われた22種類の認知的バイアステスト

(マインドフルネスの実践によってバイアスが減少したものを太字で、効果の見られなかったものを斜体で示しました。)

1, 損失回避 (Loss Aversion): 人々は損失を避けるために確実な利益を選びがちです。
2, 双曲割引 (Hyperbolic Discounting): 目先の利益を優先し、将来の利益を過小評価する傾向。
3, 合接の誤謬 (Conjunction Fallacy): 特定の条件が複数重なる方が単一の条件よりも確率が高いと誤解すること。
4, メンタルアカウンティング (Mental Accounting):お金を自分自身の心の中で、異なる勘定科目に分けて考え価値判断を行う傾向
5, アンカリング (Anchoring): 初期の情報に引きずられて判断すること。
6, ギャンブラーの誤謬 (Gambler’s Fallacy): 過去の出来事が未来の確率に影響を与えると誤解すること。
7, 確証バイアス (Confirmation Bias): 自分の信念を支持する情報ばかりを探す傾向。
8, 位置バイアス (Positional Bias): 絶対的な価値よりも相対的な位置を重視すること。
9, 感情的な愛着 (Emotional Attachment): 感情的な価値が経済的な判断に影響を与えること。
10, 公平性 (Fairness): 性別や人種など本来平等に扱うべき特定のグループに対しての差別的な振る舞いから生まれるデータの偏り
11, 利用可能性バイアス (Availability Bias): 思い出しやすい情報を過大評価すること。
12, 等確率錯覚 (Equiprobability Illusion): 全ての選択肢が同じ確率であると誤解すること。
13, 代表性バイアス (Representativeness Bias): ステレオタイプに基づいて判断すること。
14, 基準率無視 (Base Rate Neglect): 基準率を無視して確率を評価すること。
15, 注意欠如盲点 (Inattentional Blindness): 注意を向けていない情報を見逃すこと。
16, 自信過剰 (Overconfidence): 自分の予測に過度に自信を持つこと。
17, 所有(保有)効果 (Endowment Effect): 所有しているものの価値を過大評価すること。
18, 過剰分散バイアス (Overdiversification Bias): 過剰に分散投資を行うこと。
19, 結論への飛躍 (Leaping to Conclusions): 早まって結論を出すこと。
20, 認知反射 (Cognitive Reflection): 直感的な反応に飛びづかず熟考し再評価する能力。
21, 浅い理解 (Shallow Thinking): 表面的な情報に基づいて判断すること。
22, デポジッション効果 (Disposition Effect): 損失を出しているポジションを長く保有する傾向。


【補足2】認知的バイアスがもたらす意思決定への影響

では認知的バイアスを軽減すると、具体的に意思決定プロセスがどのように改善されるのでしょうか。以下に、期待される主な効果を6つ挙げてみました。

  1. 客観性の向上: バイアスの影響が減ることで、より客観的なデータや事実に基づいた判断が可能になります。これにより、感情や過去の経験、思考パターンに左右されない、合理的な意思決定が促進されます。
  2. リスク評価の精度向上: 楽観主義バイアスや確証バイアスが軽減されることで、プロジェクトやビジネス戦略に潜むリスクをより正確に評価できるようになります。これは、リスク管理の質を高め、予期せぬ損失を防ぐことにつながります。
  3. イノベーションの促進: 固定観念や思い込みから解放されることで、新しいアイデアや解決策を見出しやすくなります。
  4. 多様性の活用: 内集団バイアス(自分と似た人々を好む傾向)が軽減されることで、多様な背景や視点を持つ人材の意見をより公平に評価できるようになります。これは、チームの創造性と問題解決能力を高めることにつながります。
  5. コミュニケーションの改善: バイアスによる誤解や偏見が減ることで、チーム内やステークホルダーとのコミュニケーションがより円滑になります。これは、プロジェクトの成功率を高め、組織全体の効率を向上させます。
  6. 適応力の向上: 状況依存バイアス(過去の成功体験に固執する傾向)が軽減されることで、変化する環境により柔軟に対応できるようになります。

これらの効果は、個人レベルの意思決定から組織全体の戦略立案まで、ビジネスのあらゆる側面に影響を与える可能性があります。ですからこれらの認知的バイアスを軽減することによって、より質の高い意思決定が可能となり、結果として企業のパフォーマンスと競争力の向上につながると期待されます。

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ABOUTこの記事をかいた人

ライター。 博士号を取得後、日本学術振興会特別研究員・博士研究員・大学教員として教育研究に計10年以上従事(専門は分子生物学)。9割以上が男性の業界で女性が中間管理職として働く難しさを感じつつ、紆余曲折を経て小島美佳さんからマインドフルネスを学ぶ。 現在は心理学や精神世界のエッセンスを科学の言葉で咀嚼して伝える方法を模索中の、瞑想歴1-2年の初心者です。