今回は2021年発売の「壁にもたれて5分でできる、カジュアル化された手軽な瞑想法」を紹介するマインドフルネスおすすめ本「心と頭が軽くなる 週はじめの新習慣 月曜瞑想」と、週1回5分間から始める月曜瞑想の効果をサポートする論文をご紹介します。
目次
1, はじめに
これまで、瞑想のさまざまな効果の学術的な根拠を説明しうる、科学論文を紹介してきました。
実際、瞑想の継続によって脳内の特定の領域が活性化・抑制化したり、脳のある機能領域と別の機能領域とのネットワーク接続状態が変化する、といった研究結果も紹介してきました。
しかし、それらの多くは長期瞑想実践者の結果であったり、瞑想未経験者が30日間の瞑想プログラムを継続することで得られた変化でした。
瞑想の効果を示す最新の研究論文紹介
一方、2024年に発表された東北大学加齢医学研究所の論文『1回の短時間集中瞑想によるタスク疲労の予防効果:安静時機能的磁気共鳴画像研究』では、瞑想未経験者が10分間の集中瞑想を行なっただけで、以下のような効果が見られました:
- 対象群と比較して長時間の疲労誘発タスク中でも集中力が持続
- 脳機能MRI(rsfMRI)により、脳内の注意制御メカニズムが強化
つまり、多くの瞑想の効果やメリットは継続によって効果が得られるものの、この論文結果によると、初めて1回10分間の集中瞑想を行うだけでも集中力や脳にも変化がみられたとのことです。
この結果を受けて、今まで「多忙で瞑想を行う時間が取れない」と考えていた方にも、始めてみようと思っていただけるきっかけになればと思い、本書と論文の内容を簡単にご紹介していきます。
2, 著書「月曜瞑想」の紹介
本の主旨
本書では、心の平穏と本来の感覚を取り戻すことを第一として、瞑想の難しさや敷居の高さをなくし、忙しいビジネスマンでも日常に取り入れやすい瞑想習慣、週に1回5分から始める「月曜瞑想」を提案しています。
著者 伊藤東凌氏の紹介
京都にある臨済宗建仁寺派 両足院の副住職であり、Facebook本社でヨガや瞑想サークルの指導も行っています。
「月曜瞑想」の特徴 -瞑想のハードルを下げるさまざまな工夫
- 瞑想は継続することが望ましいものの、週に1回5分とハードルを下げることで、より取り組みやすくなっています。
- 瞑想と聞くとあぐらをかく、正しい姿勢、と仏教的な難しさを感じてしまう人にも、あぐらもかかなくてよく、壁に背中をべったりとつけて足の投げ出し、脱力して座って行う方法を提案しています。
そのほかにも、日常生活に取り入れやすい「家事をしながら瞑想」や「食べる瞑想」「通勤電車の中でできる瞑想」など多数の瞑想法が紹介されています。
本書における瞑想の本質的な目的
本書での瞑想の目的は、無になることや頭を空っぽにすることではなく、
- ただ座って自分の感覚で受け取る情報を一つ一つ丁寧に体験する、
- 頭の中にうかんでくることを観察すること
を重視しています。
具体的な月曜瞑想の手法は、書籍にわかりやすく記載されていますので、お手に取っていただければと思います。
実際に週に一回「月曜瞑想」を続けていくことで、次第に頭に思い浮かんできたことに心が囚われ支配されなくなる、いいこともわるいこともスルーできるようになるとのこと。
そして最終的には、頭の中を客観的に眺められるようになること(メタ認知)を目指しています。
3, 「月曜瞑想」の効果を支持する最新の研究結果
前述した「瞑想未経験者でも10分間の集中瞑想によりタスク疲労の予防効果が得られた」という論文の概要について、簡単に説明していきます。
Preventive effect of one-session brief focused attention meditation on state fatigue: Resting state functional magnetic resonance imaging study
Yamaya N, Hashimoto T, Ikeda S, Brilliant T D, Tsujimoto M, Nakagawa S, Kawashima R. Neuroimage. (2024)
実験内容:
- 56人の瞑想未経験者を対象に、10分間の集中注意瞑想(FAM)と瞑想を行わないコントロールグループに分け、瞑想実施/未実施ともに10分間 fNIRS(機能的近赤外分光法)を装着して脳内の血流変化をモニタリング。
- 実験前後に安静時機能的MRI(rsfMRI)を使用して脳の機能的結合性(rsFC)を測定。
- その後、60分間の疲労誘発タスク(Go/NoGoタスク)を実施し、タスクパフォーマンスの変化を評価。
疲労誘発タスク (Fatigue- inducing task), Go/NoGoタスクとは
衝動性を測定するための実験方法で、一般的な流れは以下の通りです。
・反応の測定: 「Go」の指示が出たときにボタンを押すことで反応速度を測定します。
・抑制の測定: 「No-go」の指示が出たときにボタンを押さないことで反応を抑制する能力を測定します。
・難易度の調整: 「Go」の指示が多く、「No-go」の指示が少ないため、反応を抑制するのが難しくなります。
紹介した論文中では、このGo/NoGoタスクを<5分間(120回) + 10秒間の休憩>のセットを12回、計60分間 行い、時間経過とともにミスの回数を調べ、タスクパフォーマンスの変化としました。
結果:
- 瞑想実施グループはコントロールグループに比べて、60分間の疲労誘発課題中もタスクパフォーマンスの低下が見られず、疲労を防ぐ効果が示唆されました。
- さらに瞑想実施グループの脳内では、以下の2点の変化が観察されました。
1, 内側前頭前皮質(mPFC)の活動低下
mPFCは自己関連情報の処理や注意の制御に関与しています。活動の低下は、瞑想によって自己関連の思考が減少し、注意により集中しやすくなったことを示唆しています。
2, 中前頭回(MFG)とmPFCとの機能的結合性の低下:
MFGは注意の切り替えや認知制御に関与しています。mPFCとの結合性の低下は、瞑想によって注意の切り替えがスムーズになり、特定のタスクに対する集中力が向上したことを示しています。
これらの変化は、10分間の集中注意瞑想が脳の注意制御メカニズムを強化し、長時間の課題においても集中力を持続させる効果があることを示しています。
結論:
10分間の集中注意瞑想は、注意力の調整を通じて行動的な状態疲労を防ぐ効果があると言えます。
研究結果が「月曜瞑想」の有効性を裏付ける点
この研究結果から、週に一回の瞑想でも、ビジネスマンにも有用な効果、
- 認知機能を必要とする課題消化における脳疲労の軽減
- 認知課題を続ける中での注意力の持続
が得られると言えます。これは「月曜瞑想」で提案する週1回の瞑想習慣の有効性を科学的に裏付けるものと言えるでしょう。
おわりに
「心と頭が軽くなる 週はじめの新習慣 月曜瞑想」は、忙しい現代人でも取り入れやすい瞑想法を提案しており、最新の研究結果もその効果を支持しています。
Kindle Unlimitedでは無料で読めますので、興味のある方はぜひお手に取ってみてください。
Source : 瞑想チャンネル for Leaders