現代社会において、ストレス管理と効果的な休息は成功の鍵となっています。スタンフォード大学の神経科学者、アンドリュー・ヒューバーマン(Andrew Huberman)教授が開発したNSDR(Non-Sleep Deep Rest)法は、短時間で深いリラックス状態を実現し、生産性を飛躍的に向上させる革新的な手法として注目を集めています。
本記事では、NSDR法の効果、実践ガイド、そして世界のリーダーたちがいかにしてこの技法を活用しているかについて、詳しくご紹介します。
目次
NSDR (Non-Sleep Deep Rest) とは?
NSDRは、睡眠せずに深い休息状態を得る革新的な技法です。アンドリュー・ヒューバーマン教授が提唱したこの方法は、短時間で脳と身体を深いリラックス状態に導き、睡眠に匹敵する、あるいはそれ以上の回復効果をもたらします。
【NSDR法の考案者】 アンドリュー・ヒューバーマン教授について
Source : Andrew Huberman YouTube
スタンフォード大学医学部の教授であり、神経科学の権威であるヒューバーマン教授は、脳の発達、神経可塑性、視覚系の再生など、幅広い分野で画期的な研究成果を上げています。彼の研究は、高ストレス環境下でのパフォーマンス最適化や睡眠改善に大きく貢献しており、NSDR法はその集大成と言えるでしょう。
アンドリューヒューバーマン教授の研究成果
以下はヒューバーマン教授の研究成果の一例で、幅広い分野で多くの成果を一流誌に発表しています。
- 脳の発達(Ref. Mechanisms underlying development of visual maps and receptive fields, Annu Rev Neurosci, 2008)
- 神経可塑性(認知機能を再配線して学習する神経系の能力)(Ref. Central nervous system regeneration, Cell, 2022)
- 視覚系の再生と失明の治療への取り組み(Ref. Assembly and repair of eye-to-brain connections, Curr Opin Neurobiol, 2018)
- 病的な恐怖と不安の根底にある神経メカニズム(Human Responses to Visually Evoked Threat, Curr Biol, 2021)
さらに、これらの科学的知見を基に、米国とカナダの軍・スポーツ選手・テクノロジー産業向けに、高ストレス環境でのパフォーマンス最適化、神経可塑性の向上、ストレス緩和、睡眠最適化のためのツールも開発しています。
ポッドキャスト ランキングでも上位に
特筆すべきは、無料公開されているHuberman Lab Podcastです。このポッドキャストは、世界中のポッドキャストランキングでトップ25に入り、科学、教育、健康とフィットネスのカテゴリでは頻繁に1位を獲得するほど、ここ2年ほどで海外で大きな話題となっています。
2020年の記事、
アメリカ大統領選挙やCOVID-19パンデミックなどの大きなストレス環境下において、呼吸/ブレスワークと視覚系が自律神経系のバランス調節やストレス軽減に効く(『Vision and Breathing May Be the Secrets to Surviving 2020』Scientific American, 2020)
の中でも、有効なストレス軽減法としてNSDR法が紹介されています。
■ 気軽に聴き流して、気分転換できる10分間NSDR
Source : 瞑想チャンネル for Leaders
NSDR法の効果とは?
NSDR法は、ガイド音源を聞き流すだけで以下のような効果が期待できます。
- 脳と体が浅い睡眠状態に入る
- 神経可塑性を促進
- 精神的および肉体的疲労を軽減しリラックス
- ストレスや不安、痛みを軽減
- より簡単に眠りにつくことが可能に
- 学習を促進
- 「穏やかな状態を自己誘導し」かつ「何かに集中する」という独特な状態を簡単に作ることができる
とのこと。
NSDR法の実践方法
NSDR法は、ヨガ ニドラと催眠(ヒプノシス)という2つの手法を組み合わせた音声ガイドです。瞑想やヨガの経験がなくても、ポッドキャストやYouTubeの音源を聴くだけでリラックス効果が得られることが、その人気の理由となっています。
ヨガ ニドラ とは
ヨガニドラは、深いリラックス状態を導く古代のヨガ技法です。
ヨガニドラでは、目を閉じて地面に仰向けに寝そべり、誘導音源または対面でインストラクターの指導に従い、覚醒と睡眠の間の状態(限界空間)でホバリングするような感覚を体験します。つまり、体は物理的には寝ているような状態でも誘導を聴くことで、意識は内部に保持したり周囲を認識したりすることで、瞑想をしているような状態になり、リラックス効果を高めていくとのこと。
ヨガ ニドラの効果としては、
- 体が深く休息し、心拍数が遅くなる
- 脳波がベータ波(活動的な状態)からアルファ波(リラックスした状態)に移行
- 体的リラックスと同時に、意識は内部に保持したり周囲を認識したりする
ヨガニドラ インストラクターのスタンレー氏によると、ヨガニドラの特徴として以下の3点を挙げています。
- 何もしない
- 身体を休ませ、姿勢を保つ必要もなく、ただ慣性に任せてただ寝ているだけ
- ガイドを聞くことで、「何かしなければ」という意識から解放される
これらの特徴により、瞑想とは異なる独特のリラックス効果が得られます。
催眠(ヒプノシス) とは
ヒューバーマン教授によると、NSDR法で用いられる催眠は、一般的なイメージとは異なります。具体的には、
「落ち着いて集中している状態」
「深いリラックスの中で高い集中力を維持している」
という独特な状態と述べてます。
従来は臨床催眠術師などのガイドが主流でしたが、最近では、スマートフォンアプリやYouTube動画などを活用して自己誘導する人もいるとのこと。
このように、NSDR法は、これらヨガニドラと催眠の要素を組み合わせることで、深いリラックス状態と高い集中力を同時に実現し、様々な効果を生み出しています。
ビジネスリーダーのNSDR法 活用例
Google CEOのサンダー ・ピチャイ氏も絶賛
Google CEOのサンダー・ピチャイ(Sundar Pichai)氏は2022年のWall Street Journalのインタビューで、NSDR法の効果を高く評価しました。
「瞑想やマインドフルネスに高い効果があることは理解しているものの、時間を決めて座ったり、歩く瞑想などを習慣化して実践することは難しかった」
と話し、より簡単で効果の高い方法としてNSDRを紹介しました。
具体的には、ポッドキャストやYouTubeなどで紹介されている NSDR音源を聴くだけで、より簡単にリラックス効果が得られる手軽さと、睡眠とは異なる深い休息状態を体験を語り、注目を集めました。
このようなトップビジネスリーダーの推奨により、NSDR法は企業界でも注目を集めています。
NSDR法の日本語ガイド
海外では新型コロナウイルスパンデミックによるストレス増大も影響し、ここ2年ほどでNSDR法が大きな注目を集めています。多数のポッドキャストやYouTube動画で英語の音源が公開されていますが、日本では2022年現在、まだ知名度が低いため日本語の音源が少ないのが現状です。
そこで、NSDR法の主要ポイントを押さえた日本語ガイドをYouTubeで無料公開しました。これらのガイドを活用することで、日本語でもNSDR法の効果を体験できます。
■ 朝や休みの日にオススメ – 基本の20分間NSDR
Source : 瞑想チャンネル for Leaders
この20分間のNSDRガイドは、朝の目覚めや休日のリフレッシュに最適です。短時間で効果的にリラックスし、一日のパフォーマンスを向上させることができます。
■ 夜寝る前に聴き流してより快適な睡眠を
Source : 瞑想チャンネル for Leaders
就寝前のNSDRセッションは、心身をリラックスさせ、より質の高い睡眠へと導きます。この音声ガイドを聴きながら眠りにつくことで、翌朝のすっきりとした目覚めを期待できます。
これらの日本語NSDR音源を活用することで、言語の壁を越えて、アンドリュー・ヒューバーマン教授が提唱するNSDR法の効果を体験できます。聴き流すだけでリラックスと集中を同時に実現する、この革新的な手法をぜひお試しください。