【鬼滅の刃】煉獄さんの「心を燃やせ」を心理学的に解説!|怒りをパワーに変えよ|鬼滅の刃とマインドフルネス

鬼滅の刃 全巻 1-23
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 前回の鬼滅の刃とマインドフルネスの対談では「怒りの感情との向き合い方」についてお話ししました。
 今回はその続きで、
・怒りをどのように扱うか?
・怒りをパワーに変換させていく方法
というテーマで対話をしてみたいと思います。

<前回の対談はこちら>

s子:鬼滅の刃の作中で描かれている「怒りをパワーに変える」だと、現在公開されている映画『無限列車編』の次の大きな戦いが原作のコミックで描かれているんですが、そこで主人公の炭治郎が自分よりも格上の鬼と遭遇します。目の前で一般人が鬼から大怪我をさせられ、ものすごく怒って…でも怒りだけだとすぐに息が上がって鬼に押し負けてしまいます。
 その時に、鬼殺隊の先輩の煉獄さんの言葉『心を燃やせ』を思い出し、そこからパワーを引き出して、また鬼に反撃するシーンがあったんです。

『心を燃やす』とは?

 「怒りという感情だけで鬼に勝てるのならば、もっと昔に鬼は淘汰されこの世に存在していないだろう」って解説も入っている。
 「へぇ、じゃあその怒りをパワーに変換したり、心を燃やす方法って具体的にどういうことなんだろう?」と。その辺の試みって普段の生活でも活きてくるのでお話を伺えたらいいなと思いました。

※劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 公式予告動画(タップすると音が出ます)


松村憲:多分、前回の話にも繋がると思うけど、まず『怒りを無いものにしない』という事が大事ですよね。  

 マインドフルネスをやっていると、あるものは「ある」としか言えないので、そこに怒りがあったら怒りを感じますよね。それで、もしかしたらそれに連動してほんとに憎しみ、純粋な怒り、相手をやっつけたい!となってくると『怒りに囚われている状態』だと思うんです。
 確かに怒りでは瞬発的な力は出るけれども、炭治郎みたいに結局息切れしちゃう。怒りで自分自身も燃えてしまうから、持続可能ではなくなってしまうのじゃないかなと思います。

 で、煉獄さんが言っている「心を燃やせ」っていうのは、その怒りの背景にどんな想いがあるのか?ということがすごい重要だなと思っています。ここを人はすごい忘れてしまっていることが多いんですよね。

怒りの下にある想いや怒りのその先を探求する

松村憲:そもそも『怒る』前に何があったの?ということを考える。例えば鬼殺隊の剣士が怒るっていうのは怒る前には「憎しみがありました」とか、「じゃあ憎しみの前には何があったの?」って言うと、例えば「こういう大切な命は絶対に守らなければならない」とか「守りたい」とか、「ほんとに大事なものを鬼に食べられてしまいたくない!」みたいな想いがあると思います。
 怒ってる時って怒りのパワーに中毒しやすいんですね。だから、その背景にある想いは潜在意識下に埋もれやすい。

 炭治郎も怒ってゴオオって新しい呼吸法やパワーを出したときに、もう鬼と紙一重な状態になるんです。でもそうではなくて、実はその怒りの下にある想いに繋がるとさらなるパワーになってくるのだと思います。だからその時には心を燃やしているし、想いを燃やしているし、プラス、怒りの炎もすごい力になるんじゃないかなと、そんなふうに捉えています。

小島美佳:そうですよね。実生活とかビジネスの世界で「心を燃やす」という状態を考えてみると、『怒り』ってさっき松村さんが言ってくれたみたいに、すごく瞬発力があってインパクトがあるけれどそれだけなんですよね。さほど意味はない。

 私がビジネスの世界で影響を受けた方の言葉をふと思い出したのですが…
 「岩盤にたどり着くまで考え続けろ」
 「自分の感情を乗り越えてどこまで深く降りて行けたか?」
とよくおっしゃっていました。

鬼殺隊の炎柱 煉獄さん
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松村憲:なるほど、面白いですね。

小島美佳:ビジネスの世界でもどこでも、鬼殺隊の『柱』みたいな人たちの言葉には、誰もが直感的に引き寄せられる強力で魅力的なパワーがあります。それは、岩盤まで辿り着いた「何か」なのかなぁ…と思います。これと、煉獄さんの「心を燃やせ」をつなげてみると納得ですよね。

(※注:鬼殺隊は細く11もの階級に分かれていて、その中でもっとも位の高い9名の剣士のことを『柱(はしら)』といいます)

 コーチングやヒーリングの世界でも、やっぱり怒りのその先をすごく探求しに行くじゃないですか。やはり これは大切なことです。

松村憲:面白いですね。今の話を聞いてるとほんとに難易度の高い、誰も正解を持たないみたいな、責任もあり大変なポジションや重要な任務にある人たちが、どうやってそれをやり遂げるか?それを考えると、心を燃やさないと無理ですよね。

小島美佳:あと以前に s子さんが紹介してくれた鬼殺隊と鬼の話…!

s子:そうそう、鬼殺隊入りたての剣士が鬼に立ち向かっていくときに、「親の仇ー!」とか「復讐だぁー!」って斬りかかって行くと、鬼にあっさりとやられてしまって、、、苦笑
 主人公の炭治郎も最初は「妹を鬼から人間に戻す」って言ってるんですけど、原作の後半はほとんど言わなくなってくるし、そもそもの鬼殺隊に入ったきっかけは家族の仇討ちとかだったかもしれないけれど、もはや最上位の『柱』に到達した人たちは、親や家族の仇とか心の傷としては残っているけれど滅多に言わないんですよね。「人の幸せを奪う鬼を少しでも減らしたい、そうすれば何人もの人の命が救える」って意識に変わってくる。
 そういう修行してどんどん強くなるだけでなくて、段々意識が変化していくのも原作で描かれているのが面白いなと思っていて。

怒りが成長した先にあるもの

松村憲:そうですね、復讐心が形を変えて成長していくみたいな感じですね。

小島美佳:最初に感じる親の仇とか復讐心みたいなものは、きっかけなんだけれども、もっと自己理解が進むと最初が実は浅かったんだなぁっていうのがわかりますよね。
 日常の職場などでも、例えば上司が部下にめっちゃダメ出ししてて、端から見るとパワハラでは?というようなことはあると思うんです。「それをやってはいけない」と安易に決めつけてしまうと、「怒ることをやめる」ことを努力するみたいになる。闇雲に攻撃するのはよくないですが…(苦笑)… そこをもう一歩深く内省できたとき、鬼滅的に言うと『精神がより研ぎ澄まされる』ということかと思います。

松村憲:怒りを抑圧すると、心は燃やせないですよね。

 普段、組織のリーダークラスのコーチングをすることが多いのですが、彼らは力の使い方とか『怒り』の感情に悩まされることも多くあると思います。ただ、怒りを抑圧しようとしても無理しているだけなので、爆発してしまうとか、自分が病んできてしまうリスクも高まります。
 逆に怒りに向き合ってもらって「パワハラ的な行為はダメですよ!」とはっきり伝えつつ、しっかり怒りを表現してもらったり、「その怒りの背景には何があったんです?」と聞いていくと、自分の悲しみや、相手に対するすごく熱い想いが出てくることが多いです。
 その想いにつながって、本来の目的のために新しい関わりを覚えてもらうと、彼らのリーダーシップが非常に変化するということがよくあります。心を燃やしはじめるんですね。
 心を燃やすリーダーがいるとチームの雰囲気も一気に変わってきます。

小島美佳:あーそうですよね。

強い怒りや憎しみを味わい尽くす

松村憲:だから怒りが大きければ大きいほど、とか、憎しみが深ければ深いほど、ちゃんとそこを見ていくと『想い』にたどり着くみたいな。多分深層心理学的にはそういう心の力動はありますよね。

Mother Teresa
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 僕の大学院の指導教官は老松克博というユング派の精神科医の先生なんですけど、学生時代に彼が呟いた印象的な言葉を今思い出していました。
 マザーテレサとかそういう偉人の人たちの、感情的なタイプ論などを検討しているクラスだったんですけど、「こういう宗教家とかすごい献身的なところまで行く人っていうのは、並々ならぬ想いではできない、よほどの憎しみがある人です」みたいなことを言っていました。

小島美佳:へー面白い。

松村憲:すごい衝撃でしたが、「おぉっ!そうなのか!」と納得もしました。
 並々ならぬ人類への献身みたいな精神は、そういう強い憎しみとかが昇華したものの形なんでしょうね

小島美佳:ネガティブなものや苦しみを伴う感覚・感情をしっかりと味わっていくっていうことなんでしょうかね。

松村憲:そうそう、そういうことだと思います。
単純に『怒り=だめ』ではなくて、「怒りを閉じないのはどうですか?」みたいな焦点ですよね。
 ただ怒りに乗っ取られるっていうのはだめです。そういったところでマインドフルネスは一役買える部分かなと思います。
 後は「なんで怒ってるんだろう?何を願っているんだろう?」という自身への問いがあるとさらに深まると思います。

小島美佳:自分の怒りの原因はどこにあるのか?という探求をしていく…

松村憲:単純な心理学の雑学ですけれども、『怒り』っていうのは第二感情と言われていて、感情には色々あるけれども、怒りってやっぱりスイッチがもう1段あるよねっていう話なんです。とっても悲しかったから怒るとか、なんで悲しかったかの背景に大事な想いがある。そこまでたどり着ければ心が燃えてくると思います。

怒りで燃やされるのか?心を燃やすのか?

小島美佳:なるほどー。
あとちょっと個人的な興味からの質問なんですけれども、心が燃えている人とただ怒っている人のちがいって、傍からはわかるものなのかしら?

松村憲:わかるんじゃないんですか?
 あーでも、心を燃やしているようで怒りも結構な勢いで燃えちゃっている人っていうのはいますよね。

小島美佳:両方とも燃えちゃってる人、、、 笑

松村憲:なんか暑苦しい人とか何か近づきたくないなぁみたいな。
 ほんとに心が燃えていたら、それが伝染してもいいじゃないですか。その人の情熱に触れると元気になるみたいな。今、日本中で映画に影響を受けた人が煉獄さんが燃やす心の炎に感染していますよね。逆に憎しみが燃え切っていない人とは距離をとりたくなる、とか。

小島美佳:憎しみが燃えきってないけど、何か心も燃えているみたいな、発展途上形って言う感じですね。

鬼滅の刃 外伝
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s子:あのー初歩的な質問なんですが、心が燃えている状態っていうのは『情熱』って言葉でも置き換えられるんですかね?怒りも通り越した情熱とか。

松村憲:そうですね、怒りは通り越してますよね。

s子:上の人たちが「やりたい!やるぞ!」ってなって、周りの人がわーってついていくような感じとか。
 鬼滅の刃で言ったら、鬼殺隊のリーダーの親方様が「僕が死んでも大丈夫、子供たち(鬼殺隊の剣士)が僕の想いを必ず繋いでくれる」って言っていて、人の想いが鎖のように繋がっていって1人で終わりではない、人の想いは永遠で不滅だって言う話だったと思うんですけど。

松村憲:近いところはあると思いますよね、パッションとか情熱とか志とか。

s子:確かに『志』は鬼殺隊の剣士にはすごく感じますよね。

小島美佳:皆さんが『鬼滅の刃』から何かしらのインスピレーションを受け取って、もう一段階深く自分の感情を感じられるようになるといいですよね。

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<鬼滅の刃とマインドフルネス 連載>
 ①「鬼滅の刃」から学ぶ 怒りの感情との向き合い方
 ③ 鬼滅の刃がなぜ子供たちに刺さるのか?|ユング心理学から分析する

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ABOUTこの記事をかいた人

大阪大学大学院博士前期課程修了。認定プロセスワーカー。臨床心理士。 瞑想経験15年以上。大阪大学大学院博士前期課程修了。認定プロセスワーカー。臨床心理士。 マインドフルネス瞑想の土台でもある、10日間のヴィパッサナー瞑想リトリート(※)に15回以上参加。タイ、インドにて長期トリートで修行を積む。  深層心理学のユング心理学にルーツを持つプロセスワークの専門家。身体性やマインドフルネスを早くより研究、実践し、個人の心理のみならず、関係性やグループ、組織を対象に仕事をしている。ビジネスシーンにおいては、プロセスワークのコーチングや、組織開発やコンサルティングに従事。企業におけるマインドフルネス研修や、大手フィットネスクラブのマインドフルネス・プログラム開発や指導者養成も行う。著書に『日本一わかりやすいマインドフルネス瞑想"今この瞬間"に心と身体をつなぐ』BABジャパン2015、共訳書にアーノルド・ミンデル著『プロセスマインド』春秋社2013、ジュリー・ダイアモンド著『プロセスワーク入門』などがある。

(株)BLUE JIGEN 代表取締
バランスト・グロース・コンサルティング(株)取締役
(一社)日本プロセスワークセンター ファカルティ
日本トランスパーソナル学会 常任理事

(※) 10日間 話さずに座り続けるもの