マインドフルネスとセルフコーチングで未来志向のリーダーシップを育む

 前回まででリーダーシップ感情編が終わり、今回からリーダーシップ未来編になります。

 マインドフルネスでは

  • 過去を振り返ってはいけない、
  • 『今ここ』に集中して、
  • 未来の不安に行ってはいけない、

と言われます。
 そうすると「今ここだけに集中して、何もしないでいいんだ」みたいに思われがちなんですけれども、実は未来に意識を向けるマインドフルネスについて、私の方で捉え直しているところがあります。
 そこで今回は、コーチング的な要素であるゴールやエンドポイント・目的などを瞑想に持ち込むといった視点から、マインドフルネスを応用して未来を実現していく方法についてお話ししていきたいと思います。

コーチングとゴールの関係

 マインドフルネスは『今ここ』を重視します。過去や未来に意識が飛ばないように、心がさまよわないように、なぜなら未来はまだ起きてないことですし、過去も『今現在は起きていないこと』なので、過去や未来を不安に思うことはだいぶマイナスでストレスにもなります。人間の心理はそこに多くの時間とエネルギーをとられているとも言われていますが、『今ここ』以外のことに思考が囚われている状態はエネルギーのロスにもなります。


 一方で多くのリーダーや成功者はビジョナリーだと言われます。というのも彼らは「未来はこうありたい」と今ここで明確なビジョンを描き、それを現実であるかのように知覚できているからでもあります。
 このように『今ここ』でしっかりと自分のありたい未来を描き知覚する、というところにマインドフルネスを応用できるのでは?と考えています。

これからのリーダーは優れたコーチである

Source : Amazon

 これはハーバード ビジネススクールのビル・ジョージ教授の言葉です。

 近年、リーダーシップにはコーチ的な要素が必要だと言われています。
 では「リーダーがコーチング力を高めるためにはどうしたらよいか?」と考えると、一番の近道はリーダー自身がコーチングを受けることです。もう一つはセルフ・コーチ、自分自身をコーチングできるとすごくいいと思います。

 そもそも『コーチ』という単語は目的地へ運ぶ『馬車』が語源になります。アメリカのCoachのブランド ロゴが馬車なんですけど、まさにそれです。

 コーチングでは「私はあそこに行きたい」といった目的地・ゴールを明確にしていきます。また「どう進みたいか?」などもコーチングで扱いますが、ここで重要になるのは『問い』になります。 


セルフコーチングで自分のゴールを明確にする

 コーチングでは答えを教えるのではなく、まず先に『問い』を立てて、それについて自分で考えて探求するということをやります。あまりマインドフルネス業界では聞かないですけど、問いを持つとそこに集中できるようになります

セルフコーチングでは『問い』を持ち、集中する

 具体的な問い、質問の例としては

  • ゴールは何か?
  • どう進みたいか?

などです。これらに集中することは、考えるマインドフルネスとも言えます。

 「これって何だろう、どうだろう?」とちょっと瑣末なところに思考がさまよってしまっても、その度に『問い』に戻れば集中することができます。この過程は、マインドフルネスでの呼吸を思い出すという過程にとても似ています。
 つまり、

  • 『問い』を持つ事
  • その『問い』に集中する事

には、マインドフルネスでトレーニングする集中力を応用することができるのです。

今ここから未来を描く

 ここで言う『今ここ』とは、過去、現在、未来と分けて考えるのではなくて、過去も未来も『今ここの中にある』という考え方をしています。


マインドフルネスで未来を描く – 拡大フォーカスと接点

 今ここで考える未来とは「未来はこうありたい」ということを意識的に考えられている状態です。この未来を具体的に描く、拡大してフォーカスしていくことは、コーチングでもやっていることです。

セルフコーチングのコツ

問いの立て方

「皆さんはどこに行きたいですか?」

 こういった問いの設定の仕方も重要になってきます。
 キャリア上、何年後は何をしていたいか?でもいいですし、人生のゴールかもしれないです。

セルフコーチングの問いの例

 例えば私が今年の1月にやっていたのは、
「今年何をしたいか?
 今年2023年が終わった時に何が達成できているといいか」
みたいなことを結構考えました。

 それらの問いを意識的に考えていくと良い意味でテンションが生じます。今現在と設定した未来の間にはギャップがありますので、これをクリエイティブなテンションといっています。

書く瞑想

 まずは瞑想をする前に、「未来はこうありたい」というゴールを思い描いてみてください。短期、中期、長期なんでもいいと思います。思い浮かべたら、キーワードなどを箇条書きで良いので書き出してみてください。

  • どんな未来を描きたいですか?
  • どんな状態でありたいですか?

という問いに集中してみてください。誰かに見せるものでもないので、思いつくままに単語でも文章でも自由にどんどん書き出してみてください。
 書く瞑想・ジャーナリングでは書き出すことで頭の中でぼんやりと描いていたビジョンが言語化されるだけでなく、潜在意識に奥深く眠った情報を引き出すことも可能です。

 次に湧いてきたイメージの中で、明確にできるものがあれば、これについて意識してみたいな、というものを一つ決めて、そこに意識を向けてイメージを膨らませてみてください。
 今ここで未来に集中する、という感じです。具体的な書く瞑想と描いた未来にフォーカスするガイドの録音は文末にあります。


『今ここ』から、未来やゴールをマインドフルに感じてみる

 マインドフルネス的に考えると、『今ここ』から考えることができているという点で、実は達成はしてないんですけれども、ゴールは脳内にはありますよね。ですから自分が望む未来を描き、その体験を先取りすることはワクワク・楽しいと感じると思います。
 『今ここ』にある未来をしっかりと自分の中で臨場感を高めて、マインドフルに増幅してその体験を体感する、今ここで感じていくことは、瞑想のテクニックを応用することでよりリアルにできるようになります。

 実際に古くから読まれてきた成功本、自己啓発本などではこういった話が多いんですけれども、成功者だったり何か面白いことをしたり、達成した人たちの過去の話を聞くと、今ここで達成したい未来をとても具体的に描いていることが多いです。つまり『今ここ』でありたい未来をしっかりと描くことは、より良い未来を実現化するという視点でも価値も高いことになると思います。

未来へのフォーカスがマインドフルネスを進化させる

 マインドフルネス瞑想では奥底に眠っていた感情が湧いてきたり、未来への不安が出てくることがあります。そして、そういった感情や過去未来への不安などはひとまず距離を置いて手放し、今ここに集中することを基本としています。

 このマインドフルネスの基本にセルフ・コーチング要素を持ち込むと、「ひとまず不安な過去や未来は置いといて」だけではなく、未来に関するポジティブなイメージやゴールをしっかりと作っていくことができます。ありたい未来をイメージしたときの感情を今ここで体験していくと、未来を排除するのではなくて、いい状態を今ここで作っていくことが可能になり、逆に集中力が高まる、ということが起きてきます。


瞑想によって現実と未来の間に接点をもたらす

 過去や未来への不安要素は遠くに置いておけるほどいいんですけれども、『今ここ』でありたい未来をマインドフルに捉えていくと集中力を高めることもできます。
 マインドフルに『今ここ』だけで生きていけたら仙人にはなれると思いますけれども、現代を生きる皆さんは現実的な日々の生活も大切だと思います。なので、現代人の瞑想で「ゴールをどう設定するか?」「数年後どうありたいか?」などの問いに意識を向けることは、とても重要だと思います。
 ありたい未来を描きながら現実との間に接点とテンションを生み瞑想に取り入れることは、マインドフルネスの応用という観点からも良い方法だと思います。

【実践】望む未来に集中する10分間瞑想

 実践として今回は、前述の書く瞑想とそれを元にした未来を拡大フォーカスする瞑想をしていきます。具体的には、その未来への臨場感を高めるために、今ここでどんな感覚・感情を感じているのか、感じ取ってみます。ありたい未来を具体的に想像してみた時に湧いてくる感覚・感情はリアルタイムで今ここで感じられる方が、よりゴールに向かって行きやすくなります。

 前半で今ここに集中する瞑想をした後、後半で未来への臨場感を高める瞑想をガイドしていきます。

Source : 瞑想チャンネル for Leaders

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ABOUTこの記事をかいた人

大阪大学大学院博士前期課程修了。認定プロセスワーカー。臨床心理士。 瞑想経験20年以上。 マインドフルネス瞑想の土台でもある、10日間のヴィパッサナー瞑想リトリート(※)に15回以上参加。タイ、インドにて長期トリートで修行を積む。  深層心理学のユング心理学にルーツを持つプロセスワークの専門家。身体性やマインドフルネスを早くより研究、実践し、個人の心理のみならず、関係性やグループ、組織を対象に仕事をしている。ビジネスシーンにおいては、プロセスワークのコーチングや、組織開発やコンサルティングに従事。企業におけるマインドフルネス研修や、大手フィットネスクラブのマインドフルネス・プログラム開発や指導者養成も行う。著書に『日本一わかりやすいマインドフルネス瞑想"今この瞬間"に心と身体をつなぐ』BABジャパン2015、共訳書にアーノルド・ミンデル著『プロセスマインド』春秋社2013、ジュリー・ダイアモンド著『プロセスワーク入門』などがある。

(株)BLUE JIGEN 代表取締
バランスト・グロース・コンサルティング(株)取締役
(一社)日本プロセスワークセンター ファカルティ
日本トランスパーソナル学会 常任理事

(※) 10日間 話さずに座り続けるもの