あなたのチームは最大限の能力を発揮していますか?生産性を劇的に向上させる秘訣があるとしたら、それを知りたくありませんか?今回は、ビジネス現場で注目を集める「チームフロー」の概念と、その驚くべき効果についてお話しします。
マインドフルネス研究所 の連載 第5回目です。
目次
1. チームフローの驚くべき効果
チームフローとは何か
チームフローとは、「関係者全員の調和がとれ、力の感覚や達成感を共有する状態」のことです。具体的には:
- 複数の人間が協調して同時にかつ集団的にフローを経験
- 共通のタスク・目標の達成に向けて、互いに協力して行動
- 高い集中力と創造性を発揮
などが挙げられます。
ビジネスにおけるチームフローの重要性
1980年代からチームフローの効果(チームの生産性やパフォーマンスを向上させる)は知られていましたが、主にスポーツや芸術の分野で研究されてきました。しかし、ビジネス分野での応用研究が不足しているのが現状です。
そこで今回は2018年にオランダのアイントホーフェン工科大学から発表された「チームフローとは (原著タイトル “The Conceptualization of Team Flow” )」という包括的なレビュー(引用文献159報)を基に、ビジネス現場でチームフローを実現するための具体的な方法と、その驚くべき効果について詳しく解説していきます (ref. 1)。
なぜ今、チームフローが注目されているのか?
主に以下の三つの現代におけるビジネス現場の特徴が理由として考えられます。
1. 競争の激化:グローバル化・タスクの複雑化により、チームの生産性向上が不可欠に
2. イノベーションの必要性:AIの台頭などにより、オリジナリティや創造性を最大限に引き出す環境が求められている
3. 従業員満足度の重視:優秀な人材の確保・維持のため、幸福感の向上が重要に
チームフローがもたらす3つの利点
これらの状況を踏まえ、では実際にビジネス現場でチームフローが実現するとどのようなメリットがあるのか?以下に3つ具体例を挙げました。
1. チーム全体として生産性と創造性が極めて高まる : チームメンバーが自分の役割や責任を明確に理解し、自信と自己効力感を持つことで、通常の限界を超えて調和が取れることによってもたらされます。
2. チームの一体感と調和の強化 : メンバー間の信頼と尊重が深まり、支え合うことで相互依存し、チームの感情や意識を共有可能に
3. コミュニケーションの質の向上:オープンで即時的な情報共有が可能になり、問題解決のスピードが上がる
2. 個人フローからチームフローへ:進化の過程
チームフローの驚くべき効果の秘密は、個人フローの概念にあります。そこで、この章では、個人フローの概念や具体例、実践例を紹介し、ビジネス現場での活用方法を探っていきます。
フロー状態(個人フロー)とは何か?
フロー状態とは心理学者のチクセントミハイ博士が提唱した概念です。その特徴として
- 完全な没頭:今自分自身が行っている作業や活動に完全に集中し、時間経過の感覚さえも失う、外界からの刺激も気づかない・無視している状態
- 高いパフォーマンス:楽しみながら通常以上の成果を出し、やりがいを感じる
- 自動的な行動 : 集中力と組み合わさった、楽でスムーズな動き
- 生産性と創造性の向上
などが挙げられます。
このような状態を多くの人が
「川の流れに乗っているような感じ」
と表現したことから、フロー (Flow) と言われるようになりました。
フロー体験の具体例
個人的なフロー状態
古くからスポーツ選手や芸術家などが、目の前の作業に没頭して時間を忘れる状況になるということが知られていました。
具体的には、野球選手のバッターが試合に集中することで、ボールが一瞬止まって見えた、といった体験談や、フロー体験中に生み出された芸術作品は、
- より創造的で高品質になる傾向があり、
- より高い満足感とポジティブな感情が伴う
ことも知られています (refs. 2, 3, 4, 5 and 6)。
また、スポーツ選手や芸術家だけではなく、私たちが一流アスリートの試合を観戦したり、芸術家がフロー状態から生み出した作品(映画、舞台、本、音楽、など)を鑑賞する際、つまり観客側も魅了され、時間を忘れて没頭するフロー状態を体験をすることも分かっています。
このような高い生産性と創造性を発揮するフロー状態をビジネスの現場で実現するためには、まずは個人およびチームレベルでのフローに関する文献を吟味して、ビジネスにも応用可能なチームフローモデルを提案し検討していく必要があると考えられます。
そこで次に学術的に明らかになっている、個人フロー実現のための構成要素について解説していきます。
個人フロー状態を構成する9つ要素
多くの研究成果から、個人フロー体験は下の表1に示した主要な9つの要素に集約されました。個人フローについては日本語でもいくつか書籍が出ているので、より詳しく知りたい方は参考にしてみてください。
表1の9つの要素は、
上から3つはフロー状態に入る前提条件であり (ref. 7)、これら3つが全て揃った上で、
4から6の外部環境と集中するタスクの間のギャップを埋める3つの要素が効果を発揮し、
さらに7から9の要素は「自分が本当にフロー状態にあるのか?」ということを確認できる、フロー体験中に知られている内的状態の特徴
の3つに分けられます。
表1:個人フロー状態を構成する9つの要素 (ref. 1より引用改変)
赤字は、瞑想やマインドフルネスのトレーニングによっても得られる可能性のある要素
それぞれの要素は後ほどのチームフローの方で詳しく説明するので、ここでは耳馴染みのない項目だけ簡単に説明します。
6, 内発的動機付け、オートテリシティー(autotelicity)
自分の好きな活動だったり本質的にやりがいがあることを行い、ポジティブなフロー状態を実際に体験することによって、その後も継続するモチベーションが高まったり、さらに効果的な結果を生み出そう、という意識、のことです。自己目的主義。
7, 行動と意識の融合
タスクへの集中と注意が非常に高まることによって、反応や行動が自発的・自動的になるような状態を意味します。
8, 内省的な自己意識の喪失
7の状態が極まって自分に対する関心が消え、活動と自分が一体になっているように感じる状態です。
9, 時間感覚の変化
最初のフロー状態の例に挙げた、タスクに没頭して時間経過がゆっくり感じられる、あっという間に数時間が経過したと感じる、などの特徴です。
これらの要素を理解し、ビジネス環境に適用することで、個人とチームの両方でフロー状態を引き出すことができます。次章では、これらの個人フローの要素がどのようにチームフローへと進化するのかを探ります。
3. チームフローの本質に迫る
チームフローの具体例
チームフロー状態の例として、よく知られているのがチームで行うスポーツ競技です。アスリートチームのメンバー間で集中力が増し、連携や協力が強化され、パフォーマンスが向上している状態、などです。
他にも
- ジャズバンドのセッション
- 即興演劇
- ビジネス現場でチームで協力してタスクをこなす時
- 教育現場で教師と学生の間で進捗やコミュニケーションをとり同じ目標を達成する場合
- 外科医の「困難な手術をしている際に手術チーム全体が同じ目的に向かって動かされている単一の生命体になったように感じる」といった体験
などが例として挙げられていました (Refs. 1 and 48)。
このようにチームフローとは「関係者全員が調和がとれ、力の感覚や達成感を共有する状態」と表現されています。
チームフローの特徴:個人が持つ力を超えた状態
チームフローとは、以下のような特徴を持つ状態です。
- 集団的な高揚感:個々のチームメンバーが協調して同時かつ集団的にフローを経験している状態
- 相互依存的な協力:共通のタスク・目標の達成に向けて、互いに協力して支え合うことで、個々の能力を超えた相乗効果が生まれる
- 深い一体感:メンバー間を互いに信頼、尊重し、チームの感情や意識を共有され、一体感や調和を感じる
- 超高度な生産性と創造性:各メンバーが自分の役割や責任を明確に理解し、自信と自己効力感を持つことで、通常の限界を超えて調和が取れ、チーム全体として極めて高い生産性と創造性が高まる
チームの定義
ここで改めて、ビジネス現場における実用的なチームの定義を今回ご紹介したレビューで確認すると
「共通の目的、一連のパフォーマンス目標、および相互に責任を負うアプローチに専念する、補完的なスキルを持つ少数の人々」
とありました (Refs. 38 and 39)。
このようにチームフローを目指すチームは小規模であることが重要で、その理由は、大きなグループのメンバー全員が同じダイナミクスの一部になることが難しいから、と書かれていました (Ref. 40)。
チームフロー状態の脳波を調べた研究でも、2人で同じゲームを協力してやった際に協調して高まり合うような状態の脳波を検出し(Ref. 14)、間をついたてなどで遮断し声のみでコミュニケーションを取る場合はフィードバックが不足し、脳波の協調効果もなくなったことも報告されていました。
ですから、ここではビジネスの場の部署の中でもさらに小さな人数のチーム、相棒的なものを想定していただけると理解しやすいかと思います。
個人フローとチームフローの違い
チーム フローと個人フローの大きな違いとしては、
個人フローは、自分自身が行っている作業や活動に完全に没頭して楽しみながら高いパフォーマンスを発揮する状態です。
一方、チームフローでは、チームメンバー全員が共通の目標に向かって協力しながら同じような状態に入ることです。
個人フローとチームフローは相互に影響し合いますが、チームフロー状態は、チームメンバーの相互依存・協力に基づき、チームによる共同作業によって維持される、という点で大きく異なります。
またチームフローには、チームの利益のために実行される一方、相互依存する個人タスクも含まれますが、個人フローは個人タスクの実行中においてのみ経験します。
より多くの構成要員から成る『グループフロー』もある
一方で、もっと大きな組織単位でのフローである「グループフロー」について、グループ フロー研究先駆者の 1 人である ソーヤー (R. Keith Sawyer) 博士は、「グループがその能力のピークでパフォーマンスしているときに発生する集合的な状態」と定義しました (Ref. 41, p. 167)。
また、グループフローとチームフローとの異なる点として「チームのメンバーは相互に責任を負わなければなりませんが、グループのメンバーはその必要はない」とのことでした。
さらに、グループフロー研究の根本には社会心理学があるとのことです。
例えば仮にメンバーの欠員があっても成立し、パフォーマー間の相互作用に依存し、その集合値としてアウトプットされるダイナミクスを調べることによって評価される、グループ全体として高まった状態とのことで、心理学的な個人フローの状態とは異なるとのことです。
アマチュアのスポーツチームでグループフロー状態を経験したアスリートに調査した研究 (Refs. 42, 43, 44 and 45) でも、グループメンバー全員がフロー状態に入っている、というものではないとのことです。
チームフロー状態で観察される6つの効果
チームフローがもたらす利点や効果については、まだ十分に研究されていない部分もありますが、レビューでは以下のようなものが挙げられていました。
- 強化されたチームアイデンティティ:
チームとして共通の目的に向かい成果を達成することで、メンバーの所属感 (アイデンティティの共有) が強まります。その結果、より大きな課題に挑戦してみよう、そのために何度もチームで集まってみたいという意欲が高まる可能性があります (ref. 8) - チーム有効性と満足度の飛躍的向上:
生産的な成果が得られることでチームの有効性が向上し、チーム全体の満足度や幸福感を高めます (ref. 9)。その結果、1のより大きな課題に挑戦しようというモチベーションも生まれます。 - 驚異的な粘り強さの発揮:
自分のチームへの自信が努力の質を変え、困難な状況でも高いパフォーマンスを維持することがあります (ref. 10)。 - 自己効力感の相乗的効果:
リアルタイムでのフィードバック提供により、スムーズなタスク調整や修正、改善等のサポートが強化され、自己効力感を高める経験をし(ref. 11)、個人とチーム全体のパフォーマンスとモチベーションを高める可能性があります。 - 個人とチームの目標の完全な融合:
チームの共通の目標がメンバー個人にとっても有意義であることは、チームにおける自分自身の仕事に価値があり重要であるとの認識が強化され、集団としてのパフォーマンスも向上します (ref. 12)。 - 脳科学的な同期:
各メンバーが同時にフロー状態を体験することが、チームのパフォーマンスと正の相関関係がある (ref. 13)
脳科学でも明らかになったチームフロー状態
さらにチームフロー状態の脳波解析を行なった2021年の論文では、
- チームフロー状態になると情報統合に関わる脳領域である左中側頭皮質(L-MTC)が活性化
- さらにその部分で特異的にβ波やγ波が増大
- チームフローの状態ではチームメンバー間で脳の活動が同期する(パーティションで区切ってパートナーからのフィードバックを遮断した個人フロー状態では、チームフロー特異的な脳波を検出できなかった)
といったことも証明されました (Ref. 14) 。
<マインドフルネス研究所 「チームフローで組織力をあげる」対談のアーカイブです>
Source : 瞑想チャンネル for Leaders
4. チームフロー実現のための戦略
ではチームフローを体験するためにはどうしたらいいのでしょうか?
下の表2では、表1の個人フローを構成する9つの要素と比較するため、それぞれに対応するチームフローの要素を並べました。
表2 : 個人フローとチームフローの構成要素
個人フローの構成要素 | チームフローの要素 | |
1 | スキルとチャレンジのバランスを取る | 高度なスキルの統合 |
2 | 明確な目標を立てる | 集団的な野心 |
3 | 明確なチームレベルの共通の目標 | |
4 | 調整された個人の目標 | |
5 | 明確かつ即時のフィードバック | オープンなコミュニケーション |
6 | 自分がコントロールしている、 状況に対処できるという感覚、失敗を恐れない | 安全性 |
7 | 思考、努力、注意を目の前の活動に集中する | 相互のコミットメント |
(2) | 内発的動機付け。 オートテリシティ | (集団的な野心) |
8 | 行動と意識の融合 | 共同進歩の感覚 |
9 | 内省的な自己意識の喪失 | 一体感、結束力 |
10 | 時間のゆがみや時間感覚の変化 | 全体的な焦点 |
チームフロー体験に必要な5つの前提条件
1, 高度なスキルの統合
これはチームが必要となる前提として、一人で実行するには難しい大きくて複雑なタスクを成し遂げるために、チームを作ってタスクを割り当てる (Ref. 15)、そしてチームでタスクを割り当てる上では、各メンバーが持つスキルによってお互いに補完されることが必要となってきます (Ref. 16)。
さらに、チームでタスクを割り当てるためには、各チームメンバーのスキルや能力を十分に考慮してタスクを配分する(Ref. 17 and 15)、またチームメンバーがタスクの運用環境における互いの能力と貢献度をしっかりと認識し (Ref. 18)、それに応じて自分の貢献度をその都度調整することも必要となってきます。
これにより、チームとしての目標の達成とチーム全体のダイナミクスが促進されます。
2, 集団的な野心
チームフロー・グループフロー研究者として著名なソーヤー (Sawyer) 博士は「一度フロー体験をすると、その活動をさらに継続したいという動機につながる、という個人フローの内発的動機付けの要素は、チームフローにも適応できる」と述べています (Ref. 8)。チームのメンバー全員が同時にフローを経験すると、チームの存在意義や集団的な野心の強化につながります(Ref. 20, 21 and 22)。
共通の価値観と補完的なスキルを認識し、チームを運営しタスクを実行する上での本質的な動機(野心, Ambition)を共有することはチームフローを引き起こす必要十分な前提条件でもあります。
3, チームレベルにおける明確で共通の目標
これは例えば、「みんなでオリンピックでメダルを獲得するぞ!」といった長期的で具体的かつ明確なチームの目標をメンバーで共有することです。明確なチームの目標がメンバー全員に共有され、全員が同意すること、さらに全てのメンバーにとってチャレンジングで有意義であることは、メンバーのモチベーションを高め、フロー状態に入る上で必要な要素です (Ref. 8)。
これによりチーム全体の成長が促進されます。
4, 調整された個人の目標
チームを作って困難なタスクを行う上では、多様なスキル・能力や性質を持った人たちが集まり、かつチームメンバー間での目標の矛盾を避けるために、個人レベルとチームレベルの目標を調整する橋渡しが必要になります。
研究では、チームメンバーの個人的な目標が、グループでの具体的で明確に設定された目標と一致している必要があることと示されています (Ref. 23 and 24)。またチームの目標がクリアでかつ全てのメンバーに理解され、自分たちの行動がチームの包括的な目標にどのように貢献できるかを各々のメンバーが理解することが重要です (Ref. 25)。そうすることにより、組織の古く慣れ親しんだ習慣を継続するよりも、より目標に向かって進歩する動機付けにもなります(Ref. 26 and 8)。
5, オープンなコミュニケーション
これはメンバーのパフォーマンスの監視という意味だけではなく、チームの目標の達成に向けて各チームメンバーの貢献度を「タイムリーで明確なフィードバック」として受けられる環境が必要とのことです。そのためのオープンなコミュニケーション システムは、チーム全体の進捗状況の把握、エラーを特定して建設的なフィードバックの提供、パフォーマンス改善のためのアドバイスの提供などに繋がります(Ref. 27)。
フィードバックの授受(相互の説明責任)を含めたポジティブな社会的相互作用が、特にフロー体験に重要である、という論文が3つ引用されていました (Refs. 13, 28 and 29)。
チームフローを促進する実践的な2つの方法
6, 心理的安全性
失敗の可能性が全くない簡単なタスクは、チームのモチベーションを下げる一方、高いレベルの挑戦には失敗はつきものですが、失敗は学習と成長の機会として受け入れ、失敗を恐れるべきではありません。
チーム内で心理的安全性を作るためには、チーム内で対人リスクを負っても安全だ、という共通の信念(安全の前提条件)が必要です。そのためにはチームでの誰かの発言で当惑したり拒否したり罰したりしないという相互尊重と信頼感の共有が重要です (Ref. 30, 1999年に初めて心理的安全性の概念を述べた、ハーバード・ビジネススクールのエイミー・エドモンドソン教授の論文)。
また、失敗に対する恐怖が軽減すると、自分が行っているタスクを自分でコントロールできているという感覚や成長も促します。
7, 相互のコミットメント
個人フロー同様、チームフロー状態に入るためには目の前の課題に完全に注意を払うことが重要です。そのためには、各メンバーが異なるタスクを実行している際も、相互依存的で相乗効果のある成果を出すために、必然的にグループ全体で集中することが求められます。
チームメンバーが個々のタスクに集中しつつも互いのタスクにも集中し、チームの取り組みをサポートし、チーム全体のダイナミックスがどのようになっているかを常に相互に認識することで、調整とスムーズな協力を促進します (Refs. 31, 32 and 33)。
チームフロー状態で特徴的に観察される3つの要素
8, 共同進歩の感覚
チーム全体がスムーズかつ効率的に協力している時には、相乗的な相互作用が生じ (Ref. 12)、共に進歩している・成長している、という感覚が生まれます。また多少困難なタスクを協力によって達成し成果を得ることによって、さらなる達成感や満足、幸福感をチーム全体で感じ、フローを経験する可能性が高まります (Ref. 34)。
9, 一体感
チームの結束力によって、自分自身のニーズを含む他のすべてを排除して目の前の活動に集中することで、一体感が生じ、自意識が喪失します (Refs. 35 and 36)。個人のアイデンティティを集団のアイデンティティに帰属させることを、ソーヤー博士はエゴの混合 (a blending of egos) と呼びました (Ref. 8)。
10, 全体的な焦点
チームメンバー全員がチーム全体の目的への貢献に集中し、チームをサポートするために全体を把握しつつも各個人のタスクに完全に集中すると、チームは全体的な集中の共有状態に達します (Ref. 37)。
チーム全体のパフォーマンス向上のために同時にタスク遂行することに集中することで、時間を忘れるほど共通の目的に全集中しているような、チーム全体でフロー状態を体験するとのことです。
フロー体験のための理想的な環境づくり:3つのポイント
チームフローを実現するための環境を整えるためのヒントとして、既知の個人フロー状態を作るための条件の中で、チームフローにも活かせそうなものを、以下に3つ挙げました。
- 集中力をトレーニングなどによって鍛える、仕事に入る前に頭を空っぽにして呼吸に集中するなど、タスクの切り替え時に瞑想をする、など。
- 作業環境から気を散らすもの(集中力を削ぐもの)を排除する。長時間邪魔が入らず作業できる外部環境を整えたり、デバイスの通知設定をオフにする。
- マルチタスクをやめる
さらにご紹介したレビュー (ref. 1) で紹介されていたのは、フローでもチームフローでも当てはまることですが、無理をしないことが挙げられていました。
これは「個人フローやチームフロー状態に入りたい」と思い自分をコントロールすればするほど、逆にできなくなるという心理的パラドックスを例に、燃え尽きたりしないように、予め2から4時間など区切ってタイムブロックを設定すること、がありました。
レビューの内容のご紹介は以上です。