新型コロナウイルス (COVID-19) が起こす社会の変化|心理学の視点から

今回は、前回の『マインドフルネスと心理学の視点で考える『イニシエーション』』の続編ということで、今私たちを揺るがすコロナウイルスとイニシエーション (人生の節目に行われる儀礼、通過儀礼)について、引き続き小島美佳と松村さんFelixさんの3人で対談しました。
(注:本対談は2020年3月中旬に行いました)

ウイルスがもたらす社会的・集団的イニシエーション

小島美佳::2020年に入ってから新型コロナウイルス (COVID-19) の世界的な流行によって、未知の領域との対峙というような『イニシエーション』に近い状況が起こっていると感じています。

世界全体が、同時期に同じイニシエーションを突き付けられているような状態だと思うんですが、お二人はどのように感じられますか?

Felix:経験則が効かず、先がわからないです。しかも先進国に住んでいるとか社会的地位とか関係なく、自分自身の身に降りかかる問題が それこそ組織や個人一人ひとりに問いかけられていますね。こうすれば必ず安全ということもないし、感染した場合の治療法も確立しておらず、自分の免疫力・自然治癒力次第。しかも高齢になる程 死亡率が高いようで、私自身少しリスク高い状況になりつつある(笑)。
まさに先が見通せない中で、とるべき行動を自分で決めることが迫られています。
政府や役所の対応についていろいろ言われていますが、その中から自分でどの情報を選択してどう判断するか。文句を言っていてもしようがないし、誰かに責任をかぶせるわけにもいかない。自分ごとの問題として降りかかってきています。

メディアでいろいろな人がそれぞれコメントをしています。メディア側からの問いかけは、「どうすれば良いか?」「どういう行動を取れば正しいのか?」というものが多いように感じます。「そんなのわからない」というのが今の状況で、状況を都度捉えて、まずは「自分として何をするか?何をしないか?」を一人ひとりが判断する必要があるのかなと考えていますが… どうなんでしょうね?

未成熟な層が反応し、パニックが起こる

Felix:一方で、「誰々がこんなこと言ってる。けしからん」とか、そんな類の話題がネット上にも多い気がします。(次のイニシエーションの対談後編のテーマとなる)『未成熟な人』が対話しているのを強制的にずっと見させられている感じがしてしまう。

未成熟さの特徴である「何かに飛びつく」という俊敏さとかそういうことは悪くないですよね。テレビやSNSのような速報性のあるメディアには そういう人が集まるし、そういう人たちのコメントが大きく取り上げられるんだろうなと思っていて、それ自体良い悪いではないです。

ただ、情報が多過ぎる気がしますね。入ってくる情報量が一人で捌ける量ではなくなってきている。入ってくる情報量が一定量を超えてしまうと、そこで処理しきれなくてパニック。結局さらされた量が多い情報の方へ引っ張られて行く、という風に人間の脳は作られているのかな、と思います。
だから流されている情報を意識して敢えて見ないようにするとか、情報を制限することをやったほうがいいんじゃないかなと感じます。

また、速報性はないけど、信頼できる分析を行っているような情報源を自分なりに見つけて、集める手段をちゃんと確立することが大事かなと思っています。
例えば、メディアに出るコメントも、考える軸が明確な人とか、間違っている可能性がある前提で話をする人のコメントを重視するとか、海外のニュースや、速報性はテレビに劣るけど、データに基づいて分析をした記事を見るとか、情報をうまく選別することが大事かなって感じました。

小島美佳:そうですね。
『未成熟である』ということは『未知のものに対する恐怖』も非常に高まるのかなと思っていて。『恐怖』の感情って増殖・感染しやすいところがあると思うんです。だからメディアがなんとなく直感的に反応しやすくて。そういった要素が強いのではないかな。似たような波動が その波動を持つ人々を吸い寄せて、互いに影響しあって巻き上げられてゆく…。怖いですよね。
でも、もうこの流れは止められなくなってきています。誰も逃げることができなくなっている状態、やはり『集団的イニシエーションの大きな波』がやってきているという気がしてなりません。松村さんはどう感じていますか?

松村憲:この現象自体が集団的イニシエーションの過程にあるかもしれないと、そのように僕も思います。

恐れに対峙し賢いアクションをとる

松村憲:やはり今のメディアの反応もそうですが、『ウイルスに対する恐怖』がすごく顕在化してきたわけですよね。
人類は歴史上、ペストを始めとした様々な感染症のパンデミックなどを繰り返し経験してきていると思うので、その時の恐怖反応もあるのでしょうか。人類はその恐れに対峙しつつ、より賢いアクションをとって行けるようになるか?というステージにいる気がします。

今のウイルスの感染というのは物凄く速いスピードで、かつグローバルに展開しているので、仮にどこかの国で爆発的に広がってしまう (オーバーシュート, 感染爆発) と医療崩壊のみならず、ビジネスや経済全体も失速してしまいますよね。国を超えて世界経済全体にとっても死活問題だし、それは一人一人の個々人にも返って来る。

深層心理学的な視点で見ると、この地球規模の危機が、我々が潜在的に普段から抱えていた『恐怖』や『集合的・潜在的にあった恐れ』に向き合わせていると見ることもできると思います。結果として『未成熟』と見えるかもしれない集合的なパターンなども顕在化してきたりするかと思います。
「ここをどう乗り切るか」といった気づきを持っている人たちも出てきているように見えますし、何か今までの在り方を変えていく人たちはそれなりに出てくるのかもしれません。

厳しい経験から生まれる新しい価値観

小島美佳 : 今、松村さんの話を聞きながら、3·11の話を思い出していました。
あの時の悲しみの波動みたいなものが、今もまだ こみ上げてくることがあります。現在のヨーロッパやアメリカでの悲惨さは、あの時とはまた質の違う悲しみや戸惑い、恐怖がある気がしますね…。

そして、3・11の時に『助け合い』とか『みんなで協力してどうにかする』といったエネルギーがすごく高まったような気がしていて。若い人たちが、物欲みたいなものに意味を見出せなくなる大きなきっかけにもなったと思います。
そういった災害級の悲惨な経験から 逃げずに向き合うことによって得られる新しい価値観というものが、地球規模で出てくる可能性もありますよね。
個人的には世界中であらゆる寄付の機運が出てきている点に注目しています。これは神様が「皆で新しい世界に向かいなさい」って言っているかのような。

松村憲:そうですね、なんかそういう感じでもありますよね。

Felix:ベースとなる環境が根本的に変わってしまうのかなと感じています。そういう中で新しい機運が出てきているという点はすごく同感です。「この状況を楽しむ」とか言うつもりはないんだけれども、新しい考え方とか、これまで目を向けられていなかった考え方とか、あるいはそういうことを見出すスキルを持っている人とか、そういう人たちが活躍するようなことが出てくるんじゃないかなと思うんですよね。

ビジネスパーソンでも、これまではどちらかというと短期的に目に見えやすい成果を上げる人・プレゼンテーションがうまい人とかに脚光が当たりがちだったと思いますが、今後は「じっくり考えて、少し時間はかかるけど着実な結果を出す人」とか、「口数は少ないけど、すぐに自分で黙々と実行してしまう人」とか、そういう人に脚光が当たるのかもしれません。

ペストと比較をするのが良いのかわからないけれど、14世紀に流行したペストがルネサンスの遠因の一つなんですよね。中世の価値観に縛られていた人たちが身近な死の恐怖に直面して、「いかに生きるか?」を問いかけるようになったから、ルネサンスのような新しい潮流が出てくるということがあったわけで。

まぁこれから出てくる潮流が私自身にとって楽しいものかはまだわからないし、その潮流に私がついていけるかもわからないけれど、何か違うものが出てくるんじゃないかな、という期待もあるし、ビジネスもそういう視点でこれからの種を探して行かなきゃいけないのかなと思いました。

松村憲:そうですね。
グローバルも含めたイニシエーションの機会でもあるなと感じているのと、この先が今はまだ読める話ではないので、どうなるのかはわかりません。
しかし今は、歴史的にも大きな転換点が生じている瞬間ではあると思います。

ひとり一人が知恵のある生き方をする

松村憲:プロセスワークのミンデルがよく言ってるんですけれども、そのモデルで言うと現在は、ディスターバー (disturber) がものすごい勢いで我々を追い詰めてきているので、大きなエッジに向き合っている状況と言えます。
その中で「新型コロナが私たちに何をもたらすか?」と考えると、エッジを越えた先にはこれまでとは異なる新しいあり方があるのだと思います。ミンデル自身は『私たちがもっと自分本来の知恵のある部分から生きることを強いられていると言っています。彼の言葉で言うと「Inside Out」というものです。

現状では全貌は見えてないのでわからないですけれども、集合的なイニシエーションを経て、私たちの有り様が大きく変化するならば、恐らく「希望」になるのではないかなと感じています。
Felixさんが言ってみたいに何かが起こったり、面白い人たちが出てくるのかもしれないし。もっと一人一人個々人が、ということかもしれないし、我々の対談みたいに、たまたまコロナが流行している時にコロナの話をして発信するみたいなのも良いかもしれないですし…

感覚的には『集合意識の変化』であり、同時に『一人一人の変化』って言う事ですかね。
みなさんとお話しながら、本質的に個人個人が思うことを行動していった先に、この状況から思わぬ新たな展開が生まれくるのかなっていう気がなんとなくしました。

次回は、前回の続きとして予定していた『次世代におけるイニシエーションの在り方』についての対談をお届けします。

編集:s子

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ABOUTこの記事をかいた人

瞑想歴17年以上。 15歳までヨーロッパで育つ。慶応義塾大学を卒業後、アクセンチュアで組織戦略・人材開発のコンサルティングに従事し異例のスピードで昇進。アクセンチュア・ジャパン 史上 最も若い女性マネジャーとして抜擢される。その後、独立系コンサルティング企業でビジネス開発に携わる傍ら、キャリアコンサルタント及びコーチとして活動。不確実な時代の波を乗りこなす事業の在り方やビジネスパーソンとしての生き方について考えはじめる。 2003年、瞑想に出会い習慣化するようになる。2010年よりビジネスの世界で活動をつづけながら、年間500名以上のクライアントへ瞑想的なテクニックを活用したカウンセリングを行っている。株式会社バランスオブゲーム代表。 監訳書:『コーチング術で部下と良い関係を築く』 共著:『「ハイパフォーマーの問題解決力」を極める』