創造力向上の鍵はマインドフルネス瞑想?科学的根拠とビジネスへの応用方法

 イノベーション・革新的・改革、クリエイティブ・創造的・創造力、などなど、、、
ビジネスシーンや企業CMなどで多用されるキーワードですが、具体的にどういう状態なのか?どのようにしたら育むことができるのか?まで踏み込んだ論説は実はそう多くありません。
 ビジネスの現場で創造力を必要とされるシーンとして想定されるのは、新しい製品・商品・サービスの開発、競合との利害関係の調整、顧客とのトラブル、など、、、
 しかしそれらの解決方法や答えは教科書や辞書にも載っておらず、そもそも正解はありません。では、これらの課題をクリアし日々クリエイティブにアイデアを出し続けるには、一体どうしたらよいでしょうか?
 その方法の一つにマインドフルネス瞑想が挙げられます。

ビジネスシーンでのマインドフルネス瞑想の効果

 マインドフルネス瞑想はカバットジン博士によってストレス軽減ツールとしてプログラム化(マインドフルネスストレス低減法, MBSR)されました。その後、ストレス改善の他にも創造性・革新性を高める効果もあることがわかってきています。それまではただそびえる巨大な壁のようにしか見えなかったものに、マインドフルネス瞑想は風穴を開け、扉を開くことができると言います。

 早くからマインドフルネスを取り入れている大手企業 グーグル、ゴールドマンサックス、メドトロニックなどは、瞑想やその他のマインドフルネス的プラクティスによって創造性が生み出される効果にも着目しています。

 現在知られているマインドフルネスを定期的・継続的に行うことで得られる主な効果としては、

  • 回復力が高まる
  • ストレスを軽減
  • 感情を調整
  • より前向きな見通しを持つことができるようになる

 これらの効果の結果、失敗や挫折からより早く立ち直ることができるようになります。このような作用により、反応的な戦うか逃げるか反応をオフにし、バランスの取れた決定を行うために重要な より思慮深い精神状態になることができるとのことです。

参考記事:『Can 10 Minutes of Meditation Make You More Creative?』(ハーバードビジネスレビュー, 2017)

創造性へのマインドフルネス瞑想の作用

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 さらにダニー・ペンマン氏は著書 『マインドフルネス・フォー・クリエイティビティ』(未邦訳)の中で、マインドフルネス瞑想によって創造性を育むために必要な以下の3つの基本スキルが高まると述べています。

  1. マインドフルネスによって思考は発散的思考に切り替わります。
  2. マインドフルネスの実践は注意力を向上させ、アイデアの新規性と有用性を見出しやすくします。
  3. マインドフルネスは懐疑的になったり挫折に直面したときに勇気と回復力を育みます。失敗や挫折からいかに早く回復できるかはイノベーションプロセスに重要な要素の一つです。

マインドフルネスで創造性が育まれるのか?
2つの検証実験

 マインドフルネスが創造性を育む上で本当に効果があるのか?を検証するための実験結果が参考記事で紹介されていました。

1, オランダ エラスムス大学での実験

 オランダの大学生129人の参加者を3つのグループに分け「ドローンを使用したビジネスアイデアをできるだけ沢山出す」という課題を出しました。

個別のブレーンストーミングの前に、
・グループ1は10分間の音声ガイド付きマインドフルネス瞑想に参加、
・グループ2は10分間のダミーの瞑想演習に参加(心をさまよわせて自由に考えるように指示されました)、
・グループ3は何もせず、すぐにブレインストーミングを開始、
しました。

 その結果、3つのグループはそれぞれほぼ同じ数のアイデアを出し、個々のアイデアの説明もほぼ似ていました。主な違いは、グループ1の瞑想を行った人々は幅広いアイデアを思いついたことでした。
 2と3のグループからはアイテムの配信や撮影などに関するアイデアが主でした。一方でグループ1の瞑想した人々からは、ガーデニング(木を切る、花に水をやる)、セキュリティ(消火)、洗濯、窓、キリンに餌をやる(!)、など多様なドローンのビジネスアイデアが出ました。
 ブレインストーミングでのアイデアの多様性以外にも聞き取り調査によって、瞑想をしたグループの人々は瞑想によって落ち着きのなさ(瞑想グループの23%)、緊張(同17%)、および苛立ち(24%)の感覚が減少したと述べました。

2, オランダ研究組織の幹部への実験

 さらにこのハーバードビジネスレビューの記事を書いた著者らは追試を行いました。
 オランダの大手研究機関に属する24人のシニアイノベーションマネージャーを対象に、1の学生への演習と同様に12分間瞑想した後、組織内でより包括的な文化を構築する方法について個別にブレインストーミングを行いました。ほとんどの参加者は、瞑想によって彼らの​​心がクリアになり、目の前の仕事により集中し、そして独創的なアイデアや解決策を考え出すのを助けたと報告しました。

Source : マインドフル瞑想チャンネル

ポイントはマインドフルネス瞑想で脳をリラックスさせ 余白を作ること

 私自身も新しいアイデアをどんどん発想したい、と考え様々な本(アイデアを思いつくための本思考するための本、思いついたアイデアを効率よくノートに取る本、などなど)を読みました。
 それらの本に共通して書いてあったのは、思考したり創造したりするための種や情報、知識を全てインプットして熟考したのち煮詰まったら、手放しましょう・リラックスしましょうといった内容でした。
 具体的には

  • 寝る
  • 外に散歩に行く
  • お風呂にゆっくり入る
  • 考えるのをやめて全く別のことをやる

など。
 そのような行為によってリラックスし思考を手放すことで、脳の中の情報が自力で思考するよりも何倍ものスピードで整理され、かつ脳内の神経回路が整理・強化され、ある時ポッとアイデアが思いつくのだそうです。
 しかし職場で仕事中に行き詰まった場合周りの目もあり、仮眠はとれないしお風呂にも入れないし、突如散歩にいくのもいかがなものか、、、といった際に、5-10分程度のマインドフルネス瞑想でリラックスすることで同様の効果が得られるというのはかなり助かります。

(実際、Googleなどマインドフルネスを積極的に取り入れている大手企業は、オフィス内に瞑想ルームなどを備えています。下の写真はデザインチーム「Office of Things」とコラボレーションして作られた最新テクノロジーを導入した究極にリラックスできる瞑想ルームだそう。)

メディテーションポッドのような設備が職場にあるといいですよね、、、!

クリエイティビティの始点はDMN

Source : Amazon

 青砥瑞人氏著の『BRAIN DRIVEN -パフォーマンスが高まる脳の状態とは』でも、クリエイティビティの始点は「デフォルトモードネットワーク (DMN)」と紹介されていました(p284)。デフォルトモードネットワークとは、何もしていないときも脳がエネルギーを消費し働き続けている、脳のアイドリング・待機状態のことです。
 つまり自分で思考することを手放し、呼吸に集中する瞑想をしたときに雑念が湧いてきたりするマインドワンダリングの状態(脳が勝手に思考する様)に気づきその都度手放す、といったことを繰り返し、脳に完全に委ねたほうが自力で情報を整理するよりも、よりクリエイティビティが高まる・自力では思いつけないようなアイデアが出てくるとのこと。

 本書のChapter 3の『クリエイティビティを高める』の章だけでもかなり価値のある内容でしたので気になる方はぜひお手に取ってみてください。

創造性を高めるマインドフルネス瞑想のやり方

 マインドフルネス瞑想があなたに合うのか?合う方法はどれか?本当にあなたにとって効果があるのか?を知るためには、まずはご自分でやってみるしかありません。
 マインドフルネス瞑想の始め方は色々あります。
 やり方について本を読んでみたり、マインドフルネス瞑想のセミナーやワークショップに参加してみたり、瞑想のスマホアプリ Headspace(英語版のみ、iOSAndroid)とCalm(日本語版もあり、iOSAndroid)、buddhifyなども使ってみてください。

<直感力・創造力を鍛える6分間瞑想>

Source : ビジネスマンのためのマインドフルネス瞑想チャンネル

もっと簡単に瞑想を

 「マルチタスクは脳に良くない」という話は最近聞かれるようになってきました。人間はマルチタスクで同時に複数のことを考えているつもりでも、実際は脳の中でさまざまな思考回路の間を秒単位で行ったり来たりしながら思考しているだけで、脳にはかなりの負荷・ストレスをかけている状態なのだそうです。
 そんな時は呼吸を意識するだけの集中瞑想もオススメです。早稲田大学の熊野先生の瞑想ガイドでやられている、集中瞑想では

  1. 目を閉じて呼吸に集中し、
  2. 呼吸している時の体感覚に意識を向けて、
  3. 息を吸った時にお腹が「ふくらみふくらみふくらみ」、
  4. 息を吐いた時にお腹が「ちぢみちぢみちぢみ」と頭の中で唱える

というのを数分間行う、という簡単なもの。
また呼吸の回数を数えるだけでも頭の中が空っぽになる状態を意識的に作ることができます。
ぜひやってみてください!

マインドフルネスおすすめ情報

集中力を高めるための muse 2 脳波計
ヨガ、瞑想に最適

ABOUTこの記事をかいた人

ライター。 博士号を取得後、日本学術振興会特別研究員・博士研究員・大学教員として教育研究に計10年以上従事(専門は分子生物学)。9割以上が男性の業界で女性が中間管理職として働く難しさを感じつつ、紆余曲折を経て小島美佳さんからマインドフルネスを学ぶ。 現在は心理学や精神世界のエッセンスを科学の言葉で咀嚼して伝える方法を模索中の、瞑想歴1-2年の初心者です。