セルフコーチングで漠然とした問題やゴールを明確にする – その方法と効果

s子:マインドフルネス研究所 第6回目で、今回はこれまでのライブ配信や記事の中で、私がまだ理解できていないキーワードや概念などについて、心理学者の松村憲さん伺っていきたいと思います。
よろしくお願いします。

松村憲さんの「ビジネスマンのためのマインドフルネス24講座」の中で、より深くお聞きしてみたいキーワード3つを以下に挙げてみました。

  1. セルフコーチング
  2. 脱フュージョン、脱同一化
  3. 観照と観察のちがい

これらについて順番に伺っていきたいと思います。
今回は1つめのセルフコーチングについて、です。

セルフコーチングとは?

s子:1つ目は「マインドフルネスとセルフコーチングで未来志向のリーダーシップを育む」という記事に「セルフコーチングで問いを立てるコツ、質問の例」といった検索キーワードでの訪問が多かったので、もう少し深くお聞きしたいと思いました。



前回の記事を元に、セルフコーチングのプロセスをまとめました。

  1. 問いを立てる:自分で質問リストを使ったり、考えたいことを決めて問いを立てる
  2. 書く瞑想:①で立てた問いを元に、思いついた言葉を書き出してみる
  3. 見返す:②で書き出した言葉を見返し、そこから気づきを得たり、自分に対する自己認識を高める
  4. 行動する:もしくは、書き出した言葉を元に、具体的にゴールと計画を立ててみたり、実行した後に振り返って、どこまで進んだか確認する

追加で何かありましたらお聞かせください。


どのような場面でセルフコーチングが必要になるのか?

松村憲:コーチングはコーチがついて二者関係で行うもので、相手からやりたいことや考えていることを引き出す支援を行う人材開発法です。ティーチングとは違い、教えるのではなく問いかけることで、相手の気づきや発見を促します。これを自分自身に対して行うことでセルフコーチングとしても応用可能になります。

また、私自身、コーチングとマインドフルネスは似ている点が多いなと以前から感じています。例えばコーチングでは、何かしらの問いを立てて、それに対して問いかけ探求し、マインドフルネスでは対象を決めて意識を集中させていくといったことを行います。

問いを持つことは意図をすること、とよく言われます。解決したい悩みや問題を挙げて問いを持つことによって、それらの問いに向かって思考の方向付けができます。自分で挙げた問いに自分の意識が集中していくので、マインドフルに今ここでこの問いに意識を向けていく、という方向付けができます。さらに今ここで問いに集中するということは、集中の対象を「問い」にしている、という点でマインドフルネスにも相通じることだと思います。

瞑想だけをしていると、今ここで集中して、何事にも囚われず、起きてることを起きてるままに変化に気づくだけなので、ある意味、だんだんと方向性がなくなってくるんです。しかし瞑想だけやっていれば、現実世界から全ての問題がなくなるか?というとそうではなくて、大小はあれど悩みや問題を抱えている方がほとんどだと思います。そこにセルフコーチングを応用すると良いのでは?と思っています。

自分を客観視する際、通常のコーチングではコーチが相手になることで気づきも深まり、アウェアネス(認識力)が高まりますが、自分一人で行うのでしたら、書き出す、書く瞑想は非常におすすめです。
僕も自分でセルフコーチを行うときはよく書き出しますし、昔心理学の専門家になるときのトレーニング期間中もよくやっていました。

具体的なセルフコーチングのやり方

1, 問いを立てる – セルフコーチングで使える質問例

まず、何に悩んでいるのか?解決したいこと、人に聞いてみたいこと、問いを書いてみることです。

次のおすすめの問いは「それをどうしたいのか?」です。問いをたてると、「こういう状態を作りたい」と意識することにも繋がります。問題がある、悩みがあるということは、こういう状態になっていたいというイメージが顕在化していないけれども、実は自分の中にあると思うんです。それを2の書き出すことで明確にしていきます。
その他にセルフコーチングで使える問いの例としては、

  • ゴールは何か?
  • どのくらい進んでいきたいか?

というのもおすすめです。


2, 書き出してみる

問いを挙げたら、それだけに集中して書き出す、いわゆる書く瞑想・ジャーナリングをやってみてください。

問いを立てて書き出してみることによって、意識や意図、思考の方向付けができます。その結果、今まで考えていたこと、考えていたけれども漠然としたイメージで言語化できていなかったことなどが、どんどん出てきます。この漠然としたイメージや思考を、今ここで言語化して書き留める作業、といった感じです。

ジャーナリングは瞑想と同じで、始める前に5分、10分など予め時間を決めて、話しながら書きながらで考えるのではなく、とにかく頭に思い浮かぶまま書くことに集中するのがおすすめです。5-10分と聞くと短いかな?と思われるかもしれませんが、結構集中して書き出していくと、かなりの量の単語や文章などが出てくると思います。

3, 見返してみる

書き出した後は、それらを眺めてみます。

集中して書き出したものを改めて客観的に見ていくことによって、書き出したものをマインドフルに見る対象にすることができます。見返すことによって、抽象度の高い視点から「自分ってこういうこと考えているんだ」「いつも同じこと言っているなぁ」とか、「これこうしたらいいんじゃないか?」といった気づきが、元は自分自身が書き出したものなんですけれど見えてきたりします。自分を他人化して、第三者視点で見返すような感じです。その結果セルフコーチングは自然に進んでくると思います。

4, 行動してみる

1〜3のステップを踏むことで、始める前よりも問題に対する解像度、具体性も上がってくると思いますし、その結果、次はちょっとこうしてみようかな?と感じられたら、あとは少しでもいいので、そこまでで気づいたことを実際に実行に移してみることをおすすめしています。

行動した結果、変化したことをまた見ながら、すごく悩ましい時とか、なんとかしたいときに、また1から4までの各ステップにそれぞれ集中する、という形で自分で自分をコーチしていく、つまりセルフコーチングを行う、ということは、初めての方でも比較的やりやすいかなと思います。


セルフコーチングを自分で行う際のポイント

s子:ありがとうございます。セルフコーチングと通常の2者で行うコーチングとの大きな違いは、書き出すことによって思考をあぶり出す、といったところなのでしょうか?

松村憲:そうですね。たとえばマインドフルネスでは、思考や感情が川の流れのようにスーッと流れていくさまを今ここから見続けます。そのようにあるがままに観察することで問題が解消していればいいですが、人生、人間関係、仕事などの現実世界の問題や悩みは、瞑想して「はい、なくなりました!」という風には中々いかないので、、、

思考や感情に囚われてしまっている方には、マインドフルネスで手放すことはおすすめですが、逆に書き出すことでしっかり悩みと向き合い集中して、自分の思考や感情を言語化し、客観的にみることも大切ですし、最後に少し行動してみることは現実的でいいですよね。

s子:ありがとうございます。しっかりとステップに分けて、各ステップに時間を決めて集中する、他の気の散るものを排除する、というのは確かに効果的だと思いました。
美佳さんは、どうでしょうか、何かご意見ありますか?

小島美佳:ありがとうございます。
実際、私もマツケンさんもコーチをやっていますが、自分で自分をコーチングするセルフコーチングも、普段からやっています。具体的には、自分をまずクライアントに見立てて、自分自身がまたコーチになって、と役割をスイッチしながら、普段通りのコーチングをセルフでやっていく、みたいなことは結構やっています。


ChatGPTを活用した対AIセルフコーチング

最近、ChatGPTが楽しかったのでプロンプト開発に勤しんでいた時期があったのですが、ChatGPTに予め必要な質問を教えておいてあげると、対AIのセルフコーチングとして私には有効だったのでお伝えしたいと思います。
私自身のお悩み相談にはだいぶ使えるプロンプトだったので、皆さんにどこまで役に立つかはわからないですけれども、もしよかったら皆さんも使っていただけると面白いかなと思い共有したいと思います。

あなたは プロのエグゼクティブコーチです。コーチになったつもりで 私の悩み相談に応じてください。その際、最も簡潔な 質問を1つのみ返してください。質問についての説明は不要です。 質問についての答えをもらったら、さらに 追加の質問を繰り返してください。その際、以下の点に留意ください。

① 質問は複数の回答がこないように 何よりも簡潔にしてください
② すぐに解決策に向かわないこと
③ 私が何に悩んでいるのか、より具体的になるまで 質問を繰り返すこと
④ どのように感じているのか、その感情についての質問も行うこと
⑤ なぜ そう感じたり思ったりするのかの掘り下げを実施すること
⑥ ”どうしたらよいか” についての質問は6回目以降で実施すること

「私の悩み相談に答えてください」という感じでこのプロンプトの後に投げてみると、私自身に必要なアクションまではたどり付けた印象はありました。
一方で、このデメリットというか、ここは機能しないなと感じたのは、「私の悩み相談に応じてください」っていうプロンプトにしてしまっているので、具体的に悩んでいることがない場合、漠然としているこういう感じのものをもっと明確にしてください、とか今の自分の状態をもう少し知りたいですといった、特定のお悩みがない場合は、そこまで機能しないかな、という印象はありました。
「こんなムカつく人がいる」とか、「こういう苦手な人とどうしたら上手く付き合えるかわからない」というような、自分のこの感情がうまく処理できない、といった具体的なお悩みがあるときには結構使えたので、共有させていただきました。

s子:なるほど。この対AIでのコーチングは、特定のお悩みがあってそれをAIと共有し、課題や見落としたポイントをあぶり出して、課題解決のプロセスを一緒に考える、みたいな感じなんですかね?

小島美佳:そうですね。多分ぼんやりとある課題を元に、本質的に一番解決したいところをAIが明確にしてくれる、という感じです。

あと「すぐに解決に向かわない事」というプロンプトを入れてるんですが、ChatGPTさんは、それでも解決に向かいたいらしいです。仮にそれがもし来たら、「いや、今はまだそこには向かってほしくないんです」と言うと「大変失礼いたしました」と言って、やり直してくれました(苦笑)。いろいろ楽しみつつ、活用していただけると面白いかなと思います。

s子:ありがとうございます。使ってみたいと思います。
次の記事では脱フュージョン・脱同一化について伺っていきます。

今回の対談のアーカイブです。マインドフルネス研究所 vol. 6-1

Source : 瞑想チャンネル for Leaders

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ABOUTこの記事をかいた人

大阪大学大学院博士前期課程修了。認定プロセスワーカー。臨床心理士。 瞑想経験20年以上。 マインドフルネス瞑想の土台でもある、10日間のヴィパッサナー瞑想リトリート(※)に15回以上参加。タイ、インドにて長期トリートで修行を積む。  深層心理学のユング心理学にルーツを持つプロセスワークの専門家。身体性やマインドフルネスを早くより研究、実践し、個人の心理のみならず、関係性やグループ、組織を対象に仕事をしている。ビジネスシーンにおいては、プロセスワークのコーチングや、組織開発やコンサルティングに従事。企業におけるマインドフルネス研修や、大手フィットネスクラブのマインドフルネス・プログラム開発や指導者養成も行う。著書に『日本一わかりやすいマインドフルネス瞑想"今この瞬間"に心と身体をつなぐ』BABジャパン2015、共訳書にアーノルド・ミンデル著『プロセスマインド』春秋社2013、ジュリー・ダイアモンド著『プロセスワーク入門』などがある。

(株)BLUE JIGEN 代表取締
バランスト・グロース・コンサルティング(株)取締役
(一社)日本プロセスワークセンター ファカルティ
日本トランスパーソナル学会 常任理事

(※) 10日間 話さずに座り続けるもの