新年度に入りそろそろ一ヶ月、新しい職場への異動など環境の変化で緊張していた分、この時期起こりやすくなるのが、五月病です。
五月病の主な症状としては、集中力や意欲の低下、イライラした気分の変化など、心身のバランスが崩れることが挙げられ、これらは業務に支障をきたしかねないため、ビジネスマンとしては可能な限り予防したいものです。
しかし、五月病の本質は単なる “春疲れ” ではなく、心理的な要因が隠されています。
今回は、陰陽五行の観点から五月病と春バテ・春疲れについて解説し、予防するための方法なども解説していきます。日々の生活習慣・食生活に陰陽五行の知識を少し取り入れるだけで、心身共に最良のコンディションを手に入れられるはずです。
目次
五月病とは
五月病は春先の季節の変わり目に多く見られる現象で、主に新年度のスタートに伴うストレスや環境の変化が原因で、心身のバランスを崩してしまう状態を指します。特に、ゴールデンウィークが終わり、仕事や学校が再開される5月上旬に不調を感じることからこの名前がついています。
自律神経の乱れが根本的な原因とされ、心身両面での症状が現れます。
五月病は日本特有の社会生活のリズムと気候の変化に関連しているため、日本で特に認識されている現象です。
五月病の主な症状
五月病の具体的な症状は以下のようなものになります。当てはまるものがもしあれば、後述する予防や改善策を参考にしてみてください。
- 疲労感やだるさが続く
- 集中力や意欲の低下
- 気分の浮き沈みが激しい
- 睡眠障害や食欲不振
- 頭痛やめまいなどの身体症状
- イライラや不安などの精神的症状
春疲れ・春バテとは
一方で、春疲れ・春バテは、季節の変わり目に伴う気温や湿度の変化、花粉症などのアレルギー症状、冬に蓄積した疲労が原因となって自律神経が乱れ、体がだるくなったり、疲れやすくなる症状を指します。春バテは、春一番が吹いて暖かくなり始める季節に入った辺りから起こることが多いです。
春疲れ・春バテの主な症状
- 倦怠感や疲労感:体が重く感じられ、普段の活動が億劫になる。
- 気力の低下:やる気が出ず、何をするにも意欲が湧かない。
- イライラや不安:些細なことでイライラしたり、不安を感じやすくなる。
- 頭痛や肩こり:緊張やストレスによる身体の不調。
- 食欲不振:食事に対する興味が減少し、食べる量が減る。
- 腹痛・下痢:消化器系の不調。
- めまい・立ちくらみ:血圧の変動や貧血感による症状。
- 睡眠の質の低下:寝つきが悪くなったり、浅い睡眠が増えたりする。
五月病と春バテの違い
このように五月病と春バテは両者は似ているようで異なる原因に由来するものです。
五月病は心理的な要因が大きく、春バテは物理的な環境変化が主な原因です。適切な対処法を知ることで、これらの春の不調を乗り越えることができます。
五行論での春は『木』
春は五行でいう「木」の季節で、肝臓と胆嚢の機能が活発になる時期です。「木」の気は成長と拡張を象徴し、自然界では芽吹きや成長が見られるように、人間の体内でも活動的なエネルギーが増加します。
しかし、この時期は
- 日照時間が伸び、
- 気温も上がり、また
- 1日の中でも朝晩と昼での寒暖差も大きい
- 新年度など環境の変化などによるストレスの蓄積
など外部環境の変化によって「木」の気が過剰になると、相対的に「土」の臓器である脾臓と胃の働きを抑制してしまいます。
五行の理論では、各要素は互いに影響を与え合ってバランスを保つことが望ましいとされますが、「木」の気が強すぎると「土」の気を圧迫し、その結果、消化不良や疲労感、不安定な感情などの症状を引き起こすことがあります。
このような五行のバランスの崩れが、自律神経バランスの乱れを招き、五月病の主因となっているのです。
つまり、季節の変わり目の不調を予防したり改善するためには、単なる疲労やストレスの解消だけでなく、陰陽五行の視点から自律神経系のバランスを取ることが重要になってきます。
五行の「木」と「土」と自律神経の関連
自律神経とは、脳や脊髄から末端器官へ伸びる神経系の一部で、意識的な意思とは関係なく、体内の各器官の機能を自動的に調整・コントロールする神経系です。
自律神経には大きく2つの部分があり、交感神経と副交感神経からなります。
自律神経について、東洋医学や陰陽五行の視点で考えると、以下のことが挙げられます。
木行(春・肝臓・胆嚢)
肝臓は生命の根源である木の気を司る臓器で、活動性、創造性、情動の中枢的役割を担います。
肝臓の機能が充実していると、自律神経のうち交感神経が優位になり、活動性が高まります。一方で、肝気の鬱滞が生じると副交感神経が相対的に強まり、うつ状態や不安感が生じやすくなります。
土行(季節の変わり目・脾臓・胃)
脾臓は消化吸収と精神的な安定を司る土の臓器です。
土の気が充実していると、副交感神経が優位となり、消化吸収が良好で心身のバランスが保たれると考えられています。逆に、土の気が低下すると、消化不良やストレス反応が高まります。
Source : 瞑想チャンネル for Leaders
陰陽五行を日常に取り入れ、春バテ・五月病を予防するには
東洋医学の五行理論の五行相克・相生相克の原理に基づいて考えると、五行同士を適度にバランスを取ることが重要です。春バテ・五月病では「木」の気が強まり「土」が抑制されている状態を整えるためには、相生の関係を利用して「土」を強化し、「木」の過剰な影響を和らげる食材を選ぶことが重要です。
「土」に対応する食材は、消化を助け、脾と胃の機能をサポートする甘味のある食べ物です。
具体的には以下の食材がおすすめです。
- 穀物: 白米、玄米、オーツ麦など
- 根菜類: さつまいも、かぼちゃ、にんじん、じゃがいも
- 豆類: ひよこ豆、レンズ豆、黒豆
- 果物: バナナ、デーツ、干し柿
これらの食材は、自然な甘みを持ち、脾と胃を強化し、消化を助ける効果があります。また、これらの食材は「土」の気を補い、五月病による心身の不調を和らげるのに役立ちます。
その他、木の気を高める柑橘系の香り・アロマ(レモン、オレンジ等) よりも、穏やかな木の香り(白檀、ひのき等) もおすすめです。
分子栄養学で、五月病・春バテに伴う自律神経の乱れを整える
東洋医学以外にも、分子栄養学では未病を防ぐために日々の食生活に取り入れると良いとされる栄養素などについても研究されています。
ここでは、五月病に伴う自律神経の乱れを整えるのに、おすすめの栄養素と、それらを含む食材をご紹介します。
1, ビタミンB群
- ビタミンB1 (チアミン)、B6 (ピリドキシン)、B12 (コバラミン) は自律神経の調節や適切なストレス反応に重要です。
- 玄米、レバー、卵黄、緑黄色野菜などに含まれます
2, ω-3脂肪酸
3, マグネシウム
- ストレス応答や筋肉の弛緩に関与します。
- 玄米、豆類、緑黄色野菜、ココアなどに多く含まれます
4, テアニン
- 茶に多量に含まれるアミノ酸の1種で、グルタミンのアミドの部分が、アンモニアからエチルアミンに変わった化合物。血圧や心拍の安定化や脳波のα波(リラックス)を強めると言われています(Source : 太陽化学株式会社)
- 緑茶に多く含まれています
どれも過剰に摂取するのではなくバランスの良い食事と、生活習慣を整えることでも自律神経のバランスを整えることは可能です。
Source : 瞑想チャンネル for Leaders
日照時間の変化にも柔軟に対応を
また、生物時計・体内時計の一つである概日リズムは、約25時間周期で変動する生理現象で、昼と夜の合わせて自律神経のバランスを制御します。
具体的には日中は交感神経を優位にして活動的になり、夜は副交感神経が優位になりリラックスし睡眠に入る準備をします。
このような生物時計は、光による明暗、温度、食事などの外部刺激によって生物リズムが調節され、外部刺激が乱れた状態では体内時計もくるってしまうこともわかっています(Source : 大阪府立大学プレスリリース「体内時計の「生物リズムが失われた状態」を世界で初めて解明!」)。
よって、朝にしっかりと朝日を浴びる、また夜寝る前には強い蛍光灯の光やスマホなどは控える、といったちょっとしたことでも、季節の変わり目をスッキリとした心身共に健康な状態で過ごせるようになるはずです。