雑念とは?熟練瞑想者が教える 上手な付き合い方と対処法

瞑想中に様々な思考が浮かんでくる「雑念」。多くの実践者が直面するこの課題について、今回は読者の皆様からいただいた具体的な質問にお答えしていきます。

連載『瞑想のステップアップ論』では、瞑想のステップを4つの段階に分け、これまで
・第一段階の「カーヤ(身体)
・第二段階の「ヴェーダナー(感受)
までお伝えしてきました。

今回は瞑想ステップアップ論 Q&Aとして、前回の「瞑想の姿勢の保ち方」に続き『雑念』について、ヨガインストラクター(RYT500)で弁護士のMasaさんにお聞きしていきます。

瞑想実践者の方からいただいた、雑念に関する3つの質問

  1. 雑念の種類に個人差はありますか?
  2. 雑念が湧いてきた時にどのように気づき、対処しますか?
  3. 瞑想の継続によって雑念の扱いや反応はどう変化しましたか?

これらについて順番に伺っていきます。

Q1, 雑念の種類の個人差とは?

s子:まず、「雑念の浮かび方は人によって違うのでしょうか?」という質問です。

辞書的な意味での雑念とは
 「気持ちの集中を妨げる様々な思い・考え」
とされています。
しかし一言に「思い・考え」と言っても、人によって湧いてくる雑念の形態が、言葉、イメージ、音、声など異なるとの声がありました。そこで、雑念の種類や個人差について、Masaさん、小島さん、お2人のご意見をお聞したいと思います。

Masa:雑念は脳の中で起こるため、その人の脳の発達特性によって変わってきます。
私の場合は映像として現れることが多く、夢を見ているような感覚であるシーンが浮かび、それが発展していくパターンが最も頻繁です。

ただし、雑念は個人差も大きく、音や声だけの方、言葉として浮かぶ方、あるいは匂いとして感じる方など、様々です。

小島美佳:そのほかの雑念の例として「体感覚」もあります。
例えば、座っている特定の場所が急にムズムズし出すとか、体に痛みが生じたりすることがあります。これは特に感覚の敏感な方に多く見られる傾向だと感じています。

Q2, 雑念が湧いてきた時にどのように気づき、どう対処していますか?

s子:次の質問は、雑念に気づいた時の対処法についてです。
具体的に、雑念が湧いてきた時にどのように気づき、また気づいた時に雑念を見守るべきか、執着を手放すべきか、という点も含めてお聞かせください。

Masa:対処法はその時行っている瞑想のタイプによっても異なりますが、基本的には本来の瞑想の集中対象に意識を戻すことです。

最も簡単なのは、まず呼吸に意識を向けることです。私は何もコントロールをしていない自分の自然な呼吸に意識を向けることを実践していますし、教える時もそうお伝えしています。
具体的には、雑念が浮かんできたら、それをひとまず置いておいて、自分の吸う呼吸と吐く呼吸に意識を向けます。そして、ある程度集中が戻ってきたら、元々の瞑想対象に意識を移していくよう促すことが多いです。

Source : 瞑想チャンネル for Leaders



s子:ありがとうございます。
瞑想対象に戻る前に、まず自然な呼吸に意識を戻すというのは新たな気づきでした。特に一人で瞑想をしている時、思考が彷徨っていることに気づいても、長い呼吸に戻ろうとして逆に雑念ループに陥ることがありました。
これからは長くて深い呼吸を意識する前に、まずは今その時の自分の呼吸を観察するという方法を試してみようと思います。

小島美佳:ビジネスマンの場合、交感神経優位でアドレナリンが出ている状態で瞑想をすると、ブレインストーミングが続いてしまうこともあります。

瞑想初期の頃は、この状態に気づかずにひたすら考えて終わってしまうことも多いでしょう。しかし、これも経験の一部として面白く捉えればよいと思います。

継続していくことで、気づきも早くなり、どういう状態で瞑想をすると雑念が多くなるかも次第に分かってくるはずです。

また雑念をどう排除するか?に固執される方もいらっしゃいますが、「雑念は悪いもの」と考えないことが重要です。水中から出る空気の泡のように、雑念も「何か出てきたな」程度に捉え、元々作りたかった自分のマインドの状態に戻る、ということをただぼんやりと繰り返し続ける感覚でもよいでしょう。
水に飛び込んだ時に出てくる泡が時間の経過と共に徐々に消えていくように、雑念も次第に減っていき静けさに変わっていくと考えるとよいかもしれません。


Q3, 瞑想の継続による雑念への対応の変化

s子:ありがとうございます、最後の質問です。
瞑想を続けていくことで、雑念への対応はどのように変化するのでしょうか?気づきのスピード、頻度、手放しやすさなど、様々な観点からお聞かせください。

Masa:瞑想の継続により、雑念が起こりにくくなる傾向はあります。
日常生活では常に思考が変化していますが、瞑想は一つのものに集中したり何も考えないなど、通常とは異なる脳の使い方をします。筋トレで体が変化していくように、瞑想を続けることで脳も変化し、雑念が起こりにくくなります。

さらに、雑念への対応も変化します。本来の瞑想状態と異なる脳の動きに気づいたら、すぐに切り替えることができるようになります。


強い雑念が湧いてきたときの対処法

小島美佳:関連して私の方からもMasaくんに質問したいのですが、とても強い雑念がやってきた時にどう感じ、どう対処されていますか?

Masa:はい、大きく分けると以下の2つの方法があります。


1, 呼吸だけに集中する単純な瞑想に切り替える

1つは、呼吸だけに集中する単純な瞑想に切り替えることです。
より大きくて力強く持続的な対象である呼吸に意識を向けることで、雑念を強制的に排除し考えないようにすることができます。


2, 諦める

もう1つは、諦めることです。
例えばスポーツで体が疲れきってる時に無理に練習をしても怪我のリスクがあるように、今の脳の疲労度や考え事の重要性を考慮して、「今日は無理だな、仕方がない」と判断します。そして、その日は瞑想の練習を中止して、考え事に徹底的に集中するか、お風呂に入ってリラックスして早めに休むなどします。



小島美佳:なるほど。
「今日はそういう日だったんだな」と受け入れる姿勢はいいですね。
感情が激しく揺さぶられた直後に瞑想をしても、その感情が巡り続けるのは自然なことだと思うので、そういう時は「私はかなり怒っているらしい」と自己認識して諦めることも大切かもしれません。

Masa: そうですね。
雑念が起こってくる時は物理的な体の疲れが原因であることも結構多いと思います。ですから、そのような疲労をまず取り除くことも重要だと思います。

小島美佳:確かに、ストイックさも大切ですが、他の選択肢を持っておくことも大事ですね。

Source : 瞑想チャンネル for Leaders


瞑想の継続によって雑念の種類も変化する

小島美佳:また私自身の経験では、瞑想を続けていくと、やってくる雑念の種類も変化していく面白さがあります。先日のヴェーダナー(感受)の解説でスカ(楽)とピーティー(満足)の違いについて説明しましたが、瞑想の継続によってピーティーの種類が変化したり、何とも言えない独特な心地よい魅力的なエネルギーの感覚が訪れたりします。


すると、雑念そのものが興味深くなり、「こんなのが来るんだ」と体感覚的にも面白い感覚や新鮮に感じることもあります。

雑念そのものは完全になくなるわけではありませんが、徐々にやってくる頻度も減少し、来る時も「へえ、そう来たか」と楽しめるものに変化していきます。そうなってくると、むしろ雑念を新たな気づきの源泉として活用できるようになるかもしれないと思っています。



s子:雑念の質が変わるというのは非常に興味深いです。これから観察の対象にしてみたいと思いました。

また、瞑想を続けることで、雑念への気づきやスイッチの切り替えも早くなり、自分の脳の状態をより理解できるようになる、は言い過ぎかもしれませんが、少し理解ができる気がしています。
例えば、脳疲労を減らすために瞑想を始めてみたものの、やってみたら予想以上に疲れていることに気づいて、場合によっては諦めるなど、より適切に対応できるようになってきていると感じます。そういった変化や面白さがあると知って、さらに瞑想を継続していきたいと思いました、ありがとうございました。


雑念はなくならないものなので、少しずつでも継続を

Masa:そうですね。
さらに追加するとしたら、雑念は簡単にはなくなりません
ですから「雑念がどんどん湧いてくるから私は瞑想に向いていません」とおっしゃる方が結構多いのですが、辞めてしまうのではなくてトレーニングを継続しましょう、ということを強くお伝えしたいです。

s子:やはり様々な瞑想の本に書かれている「雑念はなくなりません」というのが真実なんだと知りつつ、淡々と続けることが大切なのでしょうか。

Masa:そうですね。
筋トレと同じで、瞑想も日々の積み重ねによって徐々に変わっていくものです。そんなにインスタントには変わりませんが、正しいやり方で続けていけば必ず変化が現れます

s子:実際、瞑想の継続で脳神経回路も確実に変化することもわかってきています。
例えば、

・呼吸に集中する瞑想によって、マインドワンダリング状態で働くデフォルトモード・ネットワーク(DMN)が抑制されることが脳科学の論文でも報告されています (Hasenkamp W, et al, Neuroimage, 2012)。

・さらに、瞑想によってマインドワンダリング、雑念が浮かんでいる状態に気づきやすくなる、と言われています。脳内で論理的思考を担うセントラル・エグゼクティブ・ネットワーク(CEN)と、思考が彷徨うマインドワンダリングの状態(DMN)、そしてその二つを繋ぐハブの役割を担うセイリエンス・ネットワーク(SN)という3つのネットワークの接続状態も瞑想によって強化されます (Bremer B et al, Sci Rep, 2023)。

このように、科学的にも瞑想の効果は証明されつつあるので、続ければ本当に変わるという学術的証拠をお伝えしつつ、私も続けていきたいと思います。

小島美佳:ぜひ、雑念がたくさん湧いている自分自身を評価判断せずに続けていただければと思います。
ありがとうございました。

Source : 瞑想のステップアップ論、瞑想チャンネル for Leadersより


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ABOUTこの記事をかいた人

瞑想歴20年以上。 15歳までヨーロッパで育つ。慶応義塾大学を卒業後、アクセンチュアで組織戦略・人材開発のコンサルティングに従事し異例のスピードで昇進。アクセンチュア・ジャパン 史上 最も若い女性マネジャーとして抜擢される。その後、独立系コンサルティング企業でビジネス開発に携わる傍ら、キャリアコンサルタント及びコーチとして活動。不確実な時代の波を乗りこなす事業の在り方やビジネスパーソンとしての生き方について考えはじめる。 2003年、瞑想に出会い習慣化するようになる。2010年よりビジネスの世界で活動をつづけながら、年間500名以上のクライアントへ瞑想的なテクニックを活用したカウンセリングを行っている。株式会社バランスオブゲーム代表。 監訳書:『コーチング術で部下と良い関係を築く』 共著:『「ハイパフォーマーの問題解決力」を極める』