マインドフルネスを新たな次元へ 〜覚醒と発達の統合〜

ビジネスパーソンにおいて、常に自分を中心に置くことや、広い視座を持ち続けることは誰もが望むことではないでしょうか?それは難しいと感じてらっしゃるかもしれません。

一つの方法としてマインドフルネスが有効と言われています。マインドフルネスがもたらす効果は様々に語られてきました。同時に、マインドフルネスの本質を知っていくと、単に実践するだけでは足りない、あるいは勿体無いこともあると思います。

 

マインドフルネスをよく知り、その可能性をさらに探求することはリーダーシップの開発のみならず、人生のクオリティを高めてくれるものになるでしょう。

 マインドフルネスのルーツ

マインドフルネスは科学的な研究が進み、また宗教性を排除することで広がりを見せましたが、そのルーツには仏教があります。ブッダ自身が、呼吸に注意を向けなさい、と実際に教えていたことからも分かる通り、この瞑想は単なるパフォーマンスアップのためのものではありません。

今ここにいること、物事をありのままに観察することは、とてもシンプルなように見えます。しかし、実践を本気で続けるならば生活、心身を含めて人生のあらゆる部分に変化が現れ始めます。

物事をありのままに観察して判断しない能力がつけば、仕事においてもより客観的に出来事を見通せるようになるでしょう。究極的には、仕事や他人のみではなく、自分の言動すら冷静に見透すメタ認知力となるでしょう。

そのためにはマインドフルネスにはトレーニングが必要です。瞑想もまた筋力トレーニングがいるので、それが日々の瞑想実践ということになります。

 マインドフルネスと覚醒のステップ

トレーニングを続けることは大事ですが、どこへ向かおうとしているのかを知らなければ黙々と練習に励むだけになります。マインドフルネスには覚醒に至るステップ、その秘密が隠されています。

トレーニングでは呼吸を見つめ、身体の感覚を見つめ、生じているあらゆる出来事に気づきを保ちます。まず、自分の肉体への気づきが高まるでしょう。同時に外側にも注意を向けられるようになれば、日々の視野も開かれていきます。やがては、自分と言うもの自体がより客観的に洞察できるようになる。ここまでくると一つの成果です。

ハイパフォーマーは自然と身につけている可能性のある力ですが、「自分を天井から眺めている感じ」「外から自分を見ている感じ」などがそれに当たります。自分の主観に依存しがちで周囲が見えなくなるのが人間の心の特徴なので、メタ認知が高まれば自分の感情や思考に囚われることも少なくなります。客観的な意思決定、中立的な判断も行いやすくなるでしょう。

ステップとしてはます肉体を観察し、次に自分の感情や主観的な体験を観察します。さらに次のレベルでは自分を離れて自分すら客観的に見つめ始めます。このステップは仏教に限らず、東西の瞑想の伝統で実践され語られてきた内容に一致します。このステップの完了は、自分すら客体化しそれを見ているのが「私」ということになります。主体が見るもの、そのものに移行するならば、マインドフルネスのレベルも相当に高まっているということです。

さらに、その先にもう一つ上のステップがあります。「悟り」として語られてきた内容に近いもので、ティクナット・ハンがマインドフルネスとして語っている内容の中にはこのレベルが含まれます。それは、見ているものと見られている客体が一体であるという境地です。俗に言われるワンネスと呼ばれる体験に近くなるでしょう。

意識の状態という視点で見るならば、私たちの意識も日々変化しています。夜寝ている時は誰もが、心身が分離していない意識状態にあると言われており、夢を見て、やがて目覚めてくる中で、私は小さな「私」へと分化されていきます。あるいは気持ち良く酔った時、恋人たちのピークエクスペリエンスなどもこの一体感を垣間見る体験でしょう。比較的誰にとっても体験のある意識状態と言えますが、マインドフルネスの実践は意識状態の広がりと深さを強化するものとなります。

 マインドフルネスをアップデートする

マインドフルネスが現代に蘇ったことの意味は、現代までに私たちが得た成果と瞑想が統合できることを示唆しています。心の領域の発展はフロイト以降の100年ほどで急速に発展しました。心理学や教育の分野で発達理論が研究されてきたのもここ100年の歴史です。

世界中の発達理論を研究したケン・ウィルバーによれば、多くの理論家の発達は6~8段階ほどのものに集約され、非常に似通っているということです。人はこのステップを辿って成熟していけるという地図が考えられています。

さて、この心理発達と瞑想の成長軸は異なります。多くの瞑想の師たちが覚醒者として尊敬されつつも、心理的な発達部分で未成熟であったというケースが多く報告されています。

瞑想をしているだけでは心理発達を知ることはありません。それは隠された地図です。心理発達を学ぶことがなければ、自分がどの発達ステージにいるのかは隠されたままです。発達段階を学び、意識を向ける必要があります。そして、この発達に意識を向ける時にマインドフルネスを応用することができます。これは先のウィルバーが推奨するマインドフルネスの新しい形ですが、非常にパワフルな効果をもたらします。

マインドフルネスが瞑想と心理発達の両方向から統合される時、現代のマインドフルネスがアップデートされるでしょう。特にリーダーたちがこうした知見を持ち、実践することは彼らに落ち着きと広い視野をもたらし、かつ影響を与える多くの人の恩恵にもなるでしょう。

次回は心理発達の部分を扱います。その次の回ではマインドフルネスの覚醒ステップについて検討する予定です。

記事に関連したセミナーが企画されています。
2017年8月5〜6日
【マインドフルネス】次元を超えた成長を実現する

詳細は下記リンクを参照ください。
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ABOUTこの記事をかいた人

瞑想経験15年以上。大阪大学大学院博士前期課程修了。認定プロセスワーカー。臨床心理士。
マインドフルネス瞑想の土台となっている10日間のヴィパッサナー瞑想リトリート(※)に15回参加。タイ、インドなどの長期りトリートで修行を積む。
 深層心理学のユング心理学にルーツを持つプロセスワークの専門家。身体性やマインドフルネスを早くより研究、実践し、個人の心理のみならず、関係性やグループ、組織を対象に仕事をしている。ビジネスシーンにおいては、個人のポテンシャルやリーダーシップを深く引き出すコーチングや、バランストグロース・フェローとして専門性を活かして、組織開発やコンサルティングに従事。近年は企業におけるマインドフルネス研修にも取り組む。
著書に『日本一わかりやすいマインドフルネス瞑想”今この瞬間”に心と身体をつなぐ』BABジャパン2015、共訳書にアーノルド・ミンデル著『プロセスマインド』春秋社2013などがある。