脳は約1000億個の神経細胞で構成される情報処理装置
人間の脳は頭蓋骨の中に収納された髄膜、神経細胞(ニューロン)、グリア細胞、血管、髄液などによって構成されています。
情報伝達を担う神経細胞(ニューロン)は脳内に1,000億個ほど存在し(RIKEN BSI 脳の構造)、ニューロンとは別にグリア細胞は1,000億から数兆個存在すると言われています。このように多数存在するグリア細胞の機能は長い間不明でしたが、最近、主に脳内でのニューロンの位置の固定や、栄養供給、ミエリン(髄鞘)の形成などニューロンの恒常性維持に働くことが分かってきました。
中枢神経系での情報伝達の仕組み
ニューロン(神経細胞)の構造は大きく分けて以下の三つがあります(下図参考)。
- 遺伝情報を含む核やミトコンドリア等の細胞内小器官を含む細胞体
- 次のニューロンへ電気信号を伝える軸索
- 他の神経細胞からの信号を受け取る樹状突起
ヒトニューロン の細胞体の大きさは直径3〜18μm程度、軸索の長さは数mm程度にもなると言われています。軸索は電気信号(活動電位)を伝える電気ケーブルとしての役割のみが知られていました。しかし最近の研究で、軸索の電気的伝導速度は一定ではなく、一本の軸索の中でも細胞体に近く太い部分は、末端の細い部分よりも活動電位の伝搬速度が約3-4倍も速いことが分かってきました (Nature Communications, 2013, 日本語のプレスリリース)。さらに同じ軸索でも日によって伝搬速度が変わったり、異所的な薬理刺激による速度の変化が観察されたことから、軸索は単なる電気ケーブルではなく、能動的に脳内の情報処理に関与している可能性が示唆されました。
高校の生物で、軸索は電気的伝導による情報伝達とさらにミエリンでの跳躍伝導により伝達速度が速く、軸索の末端のシナプスにおける情報伝達は神経伝達物質の授受を介した化学的伝達なので伝達速度が遅い(シナプス遅延)、と習ったことは覚えている方も多いかと思います。
ニューロンだけでは脳の働きを説明することはできません。ニューロン同士がつながってネットワークを形成し、そのネットワークがさらに高次機能を可能にし、脳は思考や感情、記憶などのさまざまな現象を実現しています。
脳波とは
脳波とは、脳の神経細胞が活動する際に発生する微弱な電気信号のことです。具体的には、軸索を伝達する活動電位とシナプス電位 (神経伝達物質を受け取る側のシナプス後細胞が、受容体に神経伝達物質が結合した後に発生する電位。これによってシナプス後細胞へ刺激が伝わり、次のニューロンへと刺激が伝わる)の総和です。
頭皮につけた電極によって脳波を測定することで、脳の機能や状態によって変化することが分かり、そのパターンや周波数によっていくつかのタイプに分けられます。脳波を測定することで、脳の活動状態や意識レベルを推測することができます。
脳波の種類 | 周波数 | 主な状態 |
アルファー波 | 8〜13 Hz | 集中、リラックス |
ベータ波 | 14〜30 Hz | 通常状態から心配・緊張 |
ガンマ波 | 30 Hz以上 | 怒り・興奮 |
デルタ波 | 0.5〜3 Hz | 熟睡 |
シータ波 | 4〜7 Hz | 熟睡と覚醒の間、まどろみ |