脳はどのように情報を処理しているのか?
私たちは日常的に様々な情報を脳で処理していますが、その仕組みは非常に複雑であり、まだ完全に解明されていない部分も多くあります。
外からの刺激・情報は、感覚器官(目、耳、鼻、口、皮膚)で受容し、脳へと伝わります。私たちは目でものを見て、耳で音を聞いていると思っていますが、これらの感覚器官は刺激を受け取るのみで、実際は脳に伝えられた後に電気化学信号に変換され、脳内の神経細胞のネットワークで情報処理されることで知覚しています。この過程では、脳内での信号の伝達速度やニューロンの数などによって、感覚器官ごとに情報処理の時間や方法が異なります。
例えば、視覚情報は聴覚情報よりも多くのニューロンを使って処理されるため、シナプス遅延により視覚は聴覚より数ミリ秒程度遅れて認識されます。しかし、私たちはこのわずかな遅延を意識することはありません。それは、脳の時間的なずれを補正する情報処理によって、同時に起こっているように感じさせてくれるからです。
また、脳は記憶された体験・経験をもとにして視覚情報を解釈します。そのため、錯視と呼ばれる現象が起こります。錯視とは、脳が記憶から「きっとこうに違いない」という像をそれが事実であると認識し、実際に見えるものとは異なっている錯誤です。さらに、私たちが動いているときに見える景色は、カメラで撮影した映像のようにブレたりしないことも、脳が情報処理を上手く行っている証拠です。脳は体の動きや位置、振動を考慮して、視覚情報を安定させています。
神経ネットワークの可視化については2018年のNHKスペシャル人体の『脳』でCG映像が参考になります、ご興味があれば見てみてください(こちらのNHKのサイトで見られます)。
習慣化・自動化で省エネする脳
『脳は習慣化を好む』という話はこのコラムでも何度かお話してきました。
脳は習慣化することでシナプス接合と神経ネットワークをより強固なものにし、意識したり考えたり悩んだりすることなく行動を選択し実行できるように、自動化することで、脳を省エネ化しているとのことです。というのも人間の脳は成人で約1.2 kg程度と体重当たりの重量で考えると2-5%程度の小さな臓器ですが、1日の平均消費カロリー2,000 kcalのうち脳だけでその約1-2 割も消費する燃費の悪い臓器とも言えるからです。
習慣化した行動は私たちの日々の行動の約半分を占めているとも言われています。「無意識の行動がそんなに!?」と思うかもしれませんが、例えば、母国語と外国語で話すときにどのくらい意識を使うか?を考えれば、日々いかに母国語で話したり文字を読むのに無意識を使っているかわかりますし、毎日の通学通勤経路に慣れてしまうとぼーっとしているうちに家に着いていた、という体験のある方もいらっしゃるかもしれません。
では脳の省エネのためにも習慣化・自動化が有用ならば、なぜ意識があるのでしょうか?本書では『意識は予想外のことが起こったときに、次に何をすべきか考えるために必要なもの』と述べています。また意識はCEOのようなもの、日常的な細かな活動にはほぼ関わらない代わりに、会社の長期的展望を考えたり非常事態への対応などを担っている、とも例えられています。
マインドフルネスとは、自分の呼吸や感覚に注意を向けることで、今の瞬間に集中することです。このような練習をすることで、脳の働きにどのような変化が起こるのでしょうか?最新の脳科学の研究により、マインドフルネスが脳に与える驚くべき効果が明らかになってきました。
【10分間マインドフルネス】日常生活で「ゆったり」とした感覚を取り入れる
Source : 瞑想チャンネル for Leaders