【ヴィパッサナー瞑想合宿 体験談】10日間の修行で得た心の成長

 前回ご紹介したTwitter 元CEOのジャック・ドーシーさんが好んで実践していたとされるヴィパッサナー瞑想。その中でも、どなたでも参加できる10日間の瞑想合宿での私、松村憲の体験をお話します。
 瞑想の修行って少し興味があるけれど、具体的にどんなことをやるんだろう?と気になっている方のご参考になれば幸いです。

ヴィパッサナー瞑想とは

 ヴィパッサナー瞑想とは、自分の心や身体に起こる変化をありのままに観察し、その性質を理解することで苦しみから解放されることを目指す瞑想法です。
 「ヴィパッサナー(Vipassana)」は、仏教のパーリ語という古い言葉で、ブッダがもう悟った当時に教えていたと言われている瞑想法です。その中でも日本語で洞察瞑想と呼ばれるものをヴィパッサナー瞑想といいます。
 『ヴィ』とは 「離れて見る」、
 『パッサナー』は「観察する」
という意味なので『ありのままを見る』という、まさにマインドフルネス瞑想の根幹・原則はここから来ています。


ヴィパッサナー瞑想の効果

 ヴィパッサナー瞑想には様々な効果がありますが、主なものは以下の通りです。

  • 幸福度が上がり、自分への思いやりが増える
  • 不安感が軽減し、感情をコントロールしやすくなる
  • 睡眠の質が上がり、ストレスが軽減する
  • 注意力が上がり、仕事や学業のパフォーマンスが向上する

これらの効果は科学的な研究によっても裏付けられています。

 次にドーシーさんも10日間のヴィパッサナー瞑想の修行をされていたとインタビュー記事などに書かれていましたが、私も若い頃に15回以上瞑想合宿に参加したことがあるので、その内容や体験したことをお伝えしたいと思います。


10日間のヴィパッサナー瞑想合宿について

どんな人が参加しているの?

 まずどんな人が来ているかというと、ビジネスマン、普通の会社員の人が来ていたり、主婦の方も来られますし、若い方だと学生さんとかもいらっしゃいます。あとは、ほんとに自分を変えたいとか、心理的にいろいろ不安定で変わりたい、みたいな人もいたりします。その辺は主催者側と相談しながらになりますけれども、参加していたりもします(疾患などある方は、必ず事前に主催者の方に相談しましょう)。

 このように、ヴィパッサナー瞑想合宿は、年齢や性別、職業や宗教などに関係なく、誰でも参加できるものです。


合宿・修行生活での過ごし方やルール

 それから『プチ仏教修行』みたいなところがあるので、実際に始まると戒律を守らなければいけないっていうのがあります。具体的には以下のようなルールがあります。

1, 沈黙を守る

 「10日間 人とは喋りません」というルールができます。なので10日間は沈黙(話すこと、筆談も不可)しなければならない、ということを守りながら毎日瞑想を続けていきます。もちろん困ったことがあったりしたらいつでもスタッフに話を聞いてももらえるし、修行で瞑想を行う中での困り事があればいつでも先生に質問や相談はできます。
 しかし、本当に厳格なルールとして『沈黙、何もしゃべらない』があります。

2, 五戒を守る

 他にも五戒と言われる、仏教において一番位の低いというか俗世間の我々(在家信者)も守るべき戒律が存在します。といっても、「生き物を殺さない」とか、「嘘をつかない」とかその程度のものなんですけれども。

※五戒とは:殺生しない・盗まない・不正行為をしない・嘘をつかない・酒や薬物を摂らない、の5つの戒律


3, 1日2食のベジタリアン食

 五戒の中の「動物を殺さない」という戒律を守るということで、動物を食べない、10日間 野菜中心のベジタリアン食になります。
 そして修行は、お寺の修行みたいな感じになるので食事回数も1日2食になります。朝食べてお昼に食べた後は、夕食・夜食は抜きです。夕方にフルーツぐらい出たかもしれませんが、夜のフルーツは修行進めている人には出ないことで、夕方以降はずっとお腹が空いたまま朝まで静かに過ごす、というような生活が続きます。


4, 娯楽の禁止

 インターネットや携帯電話などの電子機器の使用の禁止、さらに音楽や読書も禁止とされています。



瞑想合宿の修行は具体的に何をしているの?

 では10日間の修行中に実際何をするかというと、まず朝夕に1時間程度、参加してる人全員でホールに集まって座る、という時間があります。これは必ず参加しなければならない時間で、日本でも結構流行っているヴィパッサナー瞑想の基本的な方法を行います。7-80人が一斉に集まって座って瞑想する、みたいなことをやっています。

 その他の時間はホールで座ってもいいですし、自分の部屋の中で自分のコーナーが与えられるので、そこで過ごしても大丈夫です。ただ、とにかくひたすらに修行をしなさいということで、大体1時間位ごとに区切られてゴーンゴーンと鐘の音が鳴り、その時間はスケジュールに従って静かに座って教えられた瞑想をするというふうに過ごします。


合宿で習い行う瞑想方法

 合宿で教えられる瞑想としては、前半はひたすら呼吸への集中瞑想を行います。集中瞑想はサマタと言われていて、マインドフルネスでも呼吸に集中して集中力を鍛えましょうという話はよくありますが、このひたすらに呼吸に集中にするという瞑想を3日間位続けます。

 そこですごいひたすら集中を続けて集中力が高まるのですが、中には帰りたくなる人や雑念が湧いてきて苦しむ人、悪夢を見始める人とかもいるんですよね。ずっと呼吸に集中していると心の汚濁のような心の中の奥深くに眠っていた不純物がいっぱい出てきて苦しい、みたいなことを経験したりします。

 そして合宿の後半は観察瞑想(ヴィパッサナー)を行います。集中瞑想で出てきた雑念や不快な感覚も含めて、出てくるものは何でも起きるままに放っておきながら、今ここに集中していく、感覚の変化を見る、という瞑想を行ないます。マインドフルネスでいうところの「ありのままを見る」ということを、ずっと集中と観察を組み合わせながらやっていきます。

 そして最後の帰る間際には、慈悲の瞑想を少し取り入れて優しい気持ちになって終わりました。慈悲の瞑想はメッターと言われていて、自分や他人に対して幸せや平和を願う瞑想です。


10日間 瞑想合宿を体験した感想

 各々いろんな経験をされると思います。
「すごく、いい体験だった」「自分の心や身体の感覚に気づくことができた」「心に大きな変化を感じた」という人もいるし、「もう二度と来るか!」って思う方もいらっしゃるかと思います(苦笑)。
 ドーシーさんも合宿期間の10日間は携帯電話やPCを自由に触れず、じっと座り続けることを最初は苦痛に感じた、とおっしゃっていました。
 呼吸に集中することも難しいと感じて最初は眠気に襲われたり、体の感覚が研ぎ澄まされて痛みや痒みを強く感じたり、不快な感覚に苦しむ方もいます。

 けれど、10日間やり切ることで最後には本当ににスッキリするので、修行も深まると感じます。私自身も合宿が終わった後に大きな変化を感じ、それこそ20代の頃はまとまった時間があれば通い、15回以上瞑想合宿に参加しましたし、そこで得られた体験や感覚は今も活きていると思っています。

 瞑想を修行的に集中して体験してみたい方には何かしら得られるものがあると思いますので、もしこの記事を読んで興味を持っていただいたとしたら、ぜひ一度チャレンジしてみてください。

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ABOUTこの記事をかいた人

大阪大学大学院博士前期課程修了。認定プロセスワーカー。臨床心理士。 瞑想経験20年以上。 マインドフルネス瞑想の土台でもある、10日間のヴィパッサナー瞑想リトリート(※)に15回以上参加。タイ、インドにて長期トリートで修行を積む。  深層心理学のユング心理学にルーツを持つプロセスワークの専門家。身体性やマインドフルネスを早くより研究、実践し、個人の心理のみならず、関係性やグループ、組織を対象に仕事をしている。ビジネスシーンにおいては、プロセスワークのコーチングや、組織開発やコンサルティングに従事。企業におけるマインドフルネス研修や、大手フィットネスクラブのマインドフルネス・プログラム開発や指導者養成も行う。著書に『日本一わかりやすいマインドフルネス瞑想"今この瞬間"に心と身体をつなぐ』BABジャパン2015、共訳書にアーノルド・ミンデル著『プロセスマインド』春秋社2013、ジュリー・ダイアモンド著『プロセスワーク入門』などがある。

(株)BLUE JIGEN 代表取締
バランスト・グロース・コンサルティング(株)取締役
(一社)日本プロセスワークセンター ファカルティ
日本トランスパーソナル学会 常任理事

(※) 10日間 話さずに座り続けるもの