ビジネスパーソンに特化したマインドフルネス講座を全24回に渡ってお届けしています。
第6講までは基本編をお伝えしました。今回からはリーダーシップ 思考編ということで、頭で考える思考についてフォーカスし6回に渡ってお話ししていきます。思考編 第1回の今回は、リーダーに必要とされる自己認識力を高めるための集中力とその鍛え方についてお話しします。
目次
近年注目されている『オーセンティック リーダー』とは?
『リーダーシップ研究』と一言で言っても色々ありますが、特定のリーダーシップという研究分野はなく、現状は優れたリーダーへのインタビューから抽出したエッセンスを語られることが多いです。
その中で、近年注目されている
『オーセンティック・リーダーシップ(Authentic Leadership)』
とは直訳すると
『本物の(真正の)リーダーシップ』です。
右のハーバード・ビジネス・レビューの書籍では次世代のリーダーとして、
- 偽りのない自分、自分らしさや価値観を活かせるリーダー
- 自己認識(自己理解)とモラルを大切にするリーダー
- 変革型リーダー
など時代の変化に柔軟に対応でき、かつ流されない、などの多様なリーダーが求められている、と書かれていました。従来の、カリスマ性など生まれ持った気質で牽引するリーダーだけが通用する時代は終わりつつあるとのことです。
なぜ自己認識力が重要なのか?
これらの条件の中でも、多くのリーダーが口を揃えてリーダーシップの重要な要素として挙げるのが『セルフ アウェアネス(self-awareness, 自己認識)』です。
なぜなら、身分が上に行けばいくほど、自分自身の状態が周りの他者へ多大な影響与えますので、リーダー自身が自分の状態に気づいている、つまり自己認識ができているという事がとても重要だと言われています。また自分のことを理解できていないリーダーは、他者、すなわちチームや社内のメンバーを理解することも難しく、継続的で良好な人間関係を築いていくことも難しいと考えられます。
このような生産的な自己洞察を繰り返し自己認識力を高める上で、自己に集中する力は不可欠であり、そこにマインドフルな集中はとても役立つと考えます。
自己認識力を高めるためには、自分に集中する
集中力は、対象によって以下の3つに分類されます。
- 自分に向けた集中力
- 業務・タスクへの集中力 (外への集中)
- 他者への集中力
中でもリーダーシップで重要とされる自己認識力を高めるための集中は、基本的には1の『自分に向ける集中力』ですが、そこで培われた集中力は、2, 3の外や他者への集中にも応用可能です。
集中することが難しい理由とは?
ビジネスパーソンの皆さんは集中力に関心があると思いますが、皆さん集中力はある方でしょうか?
よく子供の頃、親や先生から「集中しなさい」と言われたことがあるかと思いますが、「ではどうやって集中したらよいの?」と困惑するなど、そもそも具体的に集中するための方法を教えてもらった経験のある方は少ないのではないでしょうか? 以前の私もそうでした。
一方で近年の脳科学の研究成果から、マインドフルネス瞑想は集中力を鍛える上で有効なトレーニング方法の1つである、ということが明らかになってきています。
またマインドフルネス瞑想以外にも、さまざまなことが集中力のトレーニングになり得ます。例えば運動や学習といった子供の頃からメソッド化された方法で学んだりトレーニングを行うと、集中力が研ぎ澄まされ、注意力も相乗効果的に上がるようになります。
なので優れた学習メソッドなどを継続して行うことも、集中力が鍛えられるようになってくると思います。
集中力と注意力は意識を向けるという点では似ていますが、以下のような違いがあります。
集中力とは、ひとつの物事に意識を継続的に向ける力。読書に没頭するなど。
注意力は、ひとつの事物に集中しながらも周りに意識が払える力。例えば、車を運転しながら歩行者や周りの状況に意識を払うなど。
引用元:マナラボ『注意力と集中力の違い』
マインドフルネスで自分と向き合い、自己集中力が高まる
日々行なっている仕事、学習、家事など諸々のタスクも、それらを無意識のまま流れ作業でやるよりも、一つ一つの作業を意識的にやることで『今ここ』に集中する力は培われますし、意識的に行うことで集中力を鍛えている時間も長くなり効果はさらに増します。
さらに一つ一つの作業や『今ここ』に集中することが習慣化され、極まっていくと、さらなるパフォーマンス向上にも繋がっていくはずです。
集中力に関係する脳の仕組み
マインドフルネス瞑想による集中力を鍛える効果については脳科学でも証明されている、と以前お話しました。
具体的には、集中力に関与しマインドフルネスで鍛えられることが分かっている脳領域として、前頭葉を中心とした脳内ネットワークが知られています。
前頭葉 – 高等生物で発達している脳領域 –
前頭葉は大脳の葉の1つで脳の前の部分に位置しています。前頭葉の中で前方の部位の前頭前野(前頭前皮質)は特にヒトで発達していて、自発性、情動、理性、社会規範への適応や長期記憶、等など人間らしさの中心を担う脳領域です。実際、この部分を事故などで損傷したり、脳の病変などによって機能が低下すると、社会規範よりも自分の感情を優先させたり、性格もがらっと変わってしまうと言われています。
また、前頭葉の発達は大体25歳ごろに成熟すると言われていて、これは子供の発達過程においてだんだん明晰になっていく、認知機能が発達していく過程と非常にリンクしていることもわかっています。子供が成長と共に社会規範に適合し、情動をコントロールできるようになってくるのも前頭葉の発達によるものと言われています。
さらに感情を司る脳領域(大脳辺縁系)と前頭葉は密接に連動していて、集中力が途切れるとかリーダーが明晰さを失う時には、実際に前頭葉の働きが弱まっています。また脳疲労と言われる長時間の思考・学習や重要な判断などを多数行った後に頭が疲れてぼーっとした感覚の時、前頭葉に精神疲労の原因物質が蓄積していることも明らかになっています。
一方でマインドフルネスはこの部分を鍛えることができ、前頭葉からのネットワークを強化・活性化させ、集中力を高めることも明らかになっています。
ランニングとマインドフルネスによって集中力を鍛えられることが科学的にもよく知られており、実際ジョギングしている方も、マインドフルネスと同様な集中力が高まる効果を感じられているかと思います。
瞑想で脳が変化する – 神経可塑性 –
脳の神経可塑性(Neuroplasticity)って聞いたことがあるかもしれません。長い間、神経細胞の数は20歳ごろをピークに加齢と共に減っていく一方だと考えられていましたが、実は何歳になっても神経回路のつながりが強化されたり不要となった回路が消失したり、と受け取る刺激や情報に合わせて神経回路を整理・更新させ、機能的にも構造的にも変化し続けることがわかってきています。
実際、瞑想初心者の方にマインドフルネス瞑想を一定期間実践してもらった前後で脳の違いを調べると、脳の特定の領域が活性化していたり大脳皮質の厚さが変化していた、という論文も出ています。
つまりマインドフルネス瞑想は「なんとなく良くなってる」という実践者の主観的な感想だけでなく、神経系の可塑性によって脳自体も変わることが脳科学的にも明らかになっているんです。
【実践】瞑想で集中力と自己認識力をアップする
簡単な瞑想の手順とコツ
意識が離れたら集中する を繰り返す
マインドフルネスでは、何かに集中したいときに過去や未来に意識が飛んだ場合、注意を『今ここ』に戻すというトレーニングを行います。
Googleの研究者は「集中力を高めるという事は、すなわち集中していない状態にあることに気づくことによって、逆に集中力が鍛えられるんだ」みたいなことを言ってました。
これはまさにその通りで、過去や未来などあちこちに注意が行って「雑念がすごいなぁ」と集中していない状態に気づいたら、雑念を止めるというよりその状態から注意をググっと『今ここ』に戻してまた集中する、ということを繰り返していくことがトレーニングになります。
その結果、『今ここ』にいる時間が長くなり、集中力に関わる神経回路が強く太くなっていく、マインドフルネス瞑想は前頭葉や注意力・集中力を強められる神経トレーニング、みたいなイメージを持っていただけると良いかと思います。
集中力と注意力は厳密には異なりますが、例えばスポーツの試合の時に「集中!」と声かけしたとき、今その場で起こっていることに気づき続ける、広い視野を持ち敵の位置や動きを把握しつつ行動することが求められます。このような注意を分散させ幅広く認識する俯瞰的・客観的な視点もマインドフルネス瞑想で鍛えられるので、多くのプロスポーツ選手たちも瞑想を実践しているのでしょう。
動画で学ぶ!集中力・自己認識力を高めるトレーニング(約6分半)
集中力・自己認識力を鍛えるトレーニングはいろいろあるんですけれども、今回は特にサマタという伝統的な方法をやっていきたいと思います。
毎回呼吸に意識を向けてくださいとお伝えしていますが、今回はさらに鼻の端、入り口の鼻腔を通る呼吸にさらに意識をフォーカスしてみてください。今回もガイドがありますので、こちらを聴きながら注意・焦点をぎゅっと絞る感覚を意識してみてください。
Source : 瞑想チャンネル for Leaders
Source : 瞑想チャンネル for Leaders
次回は『囚われ思考から自由になる』をお伝えします。