オーセンティック リーダーと瞑想|自己への集中力を高める

 ビジネスパーソンに特化したマインドフルネス講座を全24回に渡ってお届けしています。
 第6講までは基本編をお伝えしました。今回からはリーダーシップ 思考編ということで、頭で考える思考についてフォーカスし6回に渡ってお話ししていきます。思考編 第1回の今回は、リーダーに必要とされる自己認識力を高めるための集中力とその鍛え方についてお話しします。

近年注目されている『オーセンティック リーダーシップ』

Source : Amazon

 『リーダーシップ研究』と一言で言っても色々あるんですけれども、実は特定のリーダーシップという研究分野はなく、現状は優れたリーダーへのインタビューから抽出したエッセンスを語られることが多いです。

 近年注目されている『オーセンティック・リーダーシップ(Authentic Leadership)』とは直訳すると『本物の(真正の)リーダーシップ』です。こちらの著書に書かれていた次世代型リーダーとは?を意訳すると、カリスマ性など生まれ持った気質だけで牽引するリーダーだけが通用する時代は終わりつつあり、次世代のリーダーは、
・偽りのない自分、自分らしさや価値観を活かせるリーダー
・自己認識(自己理解)とモラルを大切にするリーダー
・変革型リーダー
など時代の変化に柔軟に対応でき、かつ流されない、などの多様なリーダーが求められている、とのことです。

 これらの条件の中でも多くのリーダーが口を揃えて言うのが『セルフ アウェアネス(self-awareness, 自己認識)』の重要性です。
 なぜなら、身分が上に行けばいくほど、自分自身の状態が周りの他者へ多大な影響与えますので、リーダー自身が自分の状態に気づいている、つまり自己認識できているという事がとても重要だと言われています。また自分のことを理解できていないリーダーは、他者、すなわちチームや社内のメンバーを理解することも難しく、継続的で良好な人間関係を築いていくことも難しいと考えられます。

 このような生産的な自己洞察を繰り返し自己認識力を高める上で、自己に集中する力は不可欠であり、そこにマインドフルな集中はとても役立つと考えます。

自己に集中する = 自己認識力が高まる

 集中力は大まかに分けて、

  1. 自分に向けた集中力
  2. 業務・タスクへの集中力 (外への集中)
  3. 他者への集中力

と3つに分類されます。

 リーダーシップで重要とされる自己認識力を高めるための集中は基本的には1の『自分に向ける集中力』ですが、そこで培われる注意力は、2, 3の外や他者への集中にも応用可能です。

「集中しなさい」とよく言われるけれども、、、

 ビジネスマンの皆さんは集中力に関心があると思いますが、皆さん集中力はある方でしょうか?
 よく子供の頃、親や先生から「集中しなさい」って言われたかと思いますけれども、「ではどうやって集中したらよいの?」と困惑するなど、具体的に集中するための方法を教えてもらった経験のある方は少ないのかなと思います。 実際私もそうでした。

 近年の脳科学の研究成果から、マインドフルネス瞑想は集中力を鍛える上で有効なトレーニング方法の1つである、ということが明らかになってきています。

 またマインドフルネス瞑想以外にも、さまざまなことが集中力のトレーニングになり得ます。例えば運動や学習といった子供の頃からメソッド化された方法で学んだりトレーニングを行うと、集中力が研ぎ澄まされ、注意力も相乗効果的に上がるようになります。
 なので優れた学習メソッドなどを継続して行うことも、集中力が鍛えられるようになってくると思います。
 集中力と注意力は意識を向けるという点では似ていますが、以下のような違いがあります。

集中力とは、ひとつの物事に意識を継続的に向ける力。読書に没頭するなど。

注意力は、ひとつの事物に集中しながらも周りに意識が払える力。例えば、車を運転しながら歩行者や周りの状況に意識を払うなど。

引用元:マナラボ『注意力と集中力の違い』 

マインドフルネスを行うと自己集中力が高まる

 日々行なっている仕事、学習、家事、など諸々のタスクも、それらを無意識のまま流れ作業でやるよりも、一つ一つの作業を意識的にやることで『今ここ』に集中する力は培われますし、意識的に行うことで集中力を鍛えている時間も長くなり効果はさらに増します。
 さらに一つ一つの作業や『今ここ』に集中することが習慣化され、極まっていくと、さらに皆さんのパフォーマンスアップにもつながっていくと思います。

集中に関わる脳領域

 マインドフルネス瞑想による集中力を鍛える効果については脳科学でも証明されている、と以前お話しました。

 具体的には、集中力に関与しマインドフルネスで鍛えられることが分かっている脳領域として、前頭葉を中心とした脳内ネットワークが知られています。

(前頭葉:wikipedia, 脳科学辞典 )

前頭葉 – 高等生物で発達している脳領域 –

前頭葉の位置 Source : wikipedia

 前頭葉は大脳の葉の1つで脳の前の部分に位置しています。前頭葉の中で前方の部位の前頭前野(前頭前皮質)は特にヒトで発達していて、自発性、情動、理性、社会規範への適応や長期記憶、等など人間らしさの中心を担う脳領域です。実際、この部分を事故などで損傷したり、脳の病変などによって機能が低下すると、社会規範よりも自分の感情を優先させたり、性格もがらっと変わってしまうと言われています。
 また、前頭葉の発達は大体25歳ごろに成熟すると言われていて、これは子供の発達過程においてだんだん明晰になっていく、認知機能が発達していく過程と非常にリンクしていることもわかっています。子供が成長と共に社会規範に適合し、情動をコントロールできるようになってくるのも前頭葉の発達によるものと言われています。

 さらに感情を司る脳領域(大脳辺縁系と前頭葉は密接に連動していて、集中力が途切れるとかリーダーが明晰さを失う時には、実際に前頭葉の働きが弱まっています。また脳疲労と言われる長時間の思考・学習や重要な判断などを多数行った後に頭が疲れてぼーっとした感覚の時、前頭葉に精神疲労の原因物質が蓄積していることも明らかになっています。

 一方でマインドフルネスはこの部分を鍛えることができ、前頭葉からのネットワークを強化・活性化させ、集中力を高めることも明らかになっています。
 ランニングとマインドフルネスによって集中力を鍛えられることが科学的にもよく知られていますが、ジョギングしている方も同じような集中力を高める効果が生まれていると思います。

神経可塑性によって脳が変化する

 脳の神経可塑性(Neuroplasticity)って聞いたことがあるかもしれません。長い間、神経細胞の数は20歳ごろをピークに加齢と共に減っていく一方だと考えられていましたが、実は何歳になっても神経回路のつながりが強化されたり不要となった回路が消失したり、と受け取る刺激や情報に合わせて神経回路を整理・更新させ、機能的にも構造的にも変化し続けることがわかってきています。

 実際、瞑想初心者の方にマインドフルネス瞑想を一定期間実践してもらった前後で脳の違いを調べると、脳の特定の領域が活性化していたり大脳皮質の厚さが変化していた、という論文も出ています。

 つまりマインドフルネス瞑想は「なんとなく良くなってる」という実践者の主観的な感想だけでなく、神経系の可塑性によって脳自体も変わることが脳科学的にも明らかになっているんです。

【実践】集中力を高める瞑想

意識が離れたら集中する を繰り返す

 マインドフルネスでは、何かに集中したいときに過去や未来に意識が飛んだ場合、注意を『今ここ』に戻すというトレーニングを行います。

 Googleの研究者は「集中力を高めるという事は、すなわち集中していない状態にあることに気づくことによって、逆に集中力が鍛えられるんだ」みたいなことを言ってました。
 これはまさにその通りで、過去や未来などあちこちに注意が行って「雑念がすごいなぁ」と集中していない状態に気づいたら、雑念を止めるというよりその状態から注意をググっと『今ここ』に戻してまた集中する、ということを繰り返していくことがトレーニングになります。

 その結果、『今ここ』にいる時間が長くなり、集中力に関わる神経回路が強く太くなっていく、マインドフルネス瞑想は前頭葉や注意力・集中力を強められる神経トレーニング、みたいなイメージを持っていただけると良いかと思います。

 集中力と注意力は厳密には異なりますが、例えばスポーツの試合の時に「集中!」と声かけしたとき、今その場で起こっていることに気づき続ける、広い視野を持ち敵の位置や動きを把握しつつ行動することが求められます。このような注意を分散させ幅広く認識する俯瞰的・客観的な視点もマインドフルネス瞑想で鍛えられるので、多くのプロスポーツ選手たちも瞑想を実践しているのでしょう。

集中力を高めるマインドフルネス瞑想【前頭葉と集中】(約6分半)

 注意力を鍛えるトレーニングはいろいろあるんですけれども、今回は特にサマタという伝統的な方法をやっていきたいと思います。

 毎回呼吸に意識を向けてくださいとお伝えしていますが、今回はさらに鼻の端、入り口の鼻腔を通る呼吸にさらに意識をフォーカスしてみてください。今回もガイドがありますので、こちらを聴きながら注意・焦点をぎゅっと絞る感覚を意識してみてください。


次回は『囚われ思考から自由になる』をお伝えします。

マインドフルネス おすすめ情報

ABOUTこの記事をかいた人

大阪大学大学院博士前期課程修了。認定プロセスワーカー。臨床心理士。 瞑想経験20年以上。 マインドフルネス瞑想の土台でもある、10日間のヴィパッサナー瞑想リトリート(※)に15回以上参加。タイ、インドにて長期トリートで修行を積む。  深層心理学のユング心理学にルーツを持つプロセスワークの専門家。身体性やマインドフルネスを早くより研究、実践し、個人の心理のみならず、関係性やグループ、組織を対象に仕事をしている。ビジネスシーンにおいては、プロセスワークのコーチングや、組織開発やコンサルティングに従事。企業におけるマインドフルネス研修や、大手フィットネスクラブのマインドフルネス・プログラム開発や指導者養成も行う。著書に『日本一わかりやすいマインドフルネス瞑想"今この瞬間"に心と身体をつなぐ』BABジャパン2015、共訳書にアーノルド・ミンデル著『プロセスマインド』春秋社2013、ジュリー・ダイアモンド著『プロセスワーク入門』などがある。

(株)BLUE JIGEN 代表取締
バランスト・グロース・コンサルティング(株)取締役
(一社)日本プロセスワークセンター ファカルティ
日本トランスパーソナル学会 常任理事

(※) 10日間 話さずに座り続けるもの