s子:前回のセルフコーチングに引き続き、心理学者の松村憲さんに『脱フュージョン、脱同一化』について伺ってみたいと思います。
目次
脱フュージョン・脱同一化とは?
s子:こちらもマツケンさんのマインドフルネス24講の第8回「思考観察のコツと手放す方法」の記事へのアクセスでの検索ワードで多かったものです。
下の図は早稲田大学の熊野先生の記事『新世代の認知行動療法 行動活性化療法とアクセプタンス& コミットメント・セラピーを中心に』から引用改変させていただいたものですが、素人には難解だったので、分かりやすく教えていただけたらと思いました。
松村憲:まずは、脱フュージョンと脱同一化は、ほぼイコールだと思っていただいて大丈夫です。
小島美佳:脱フュージョンの前に、まずは『フュージョン』の意味を教えていただけますか?
フュージョンとは
s子:フュージョンは心理学用語の認知的フュージョンとほぼ同義と捉えていました。
認知的フュージョンとは、
『自分の考えや思考 = 現実である』
と混同してしまっている状態のことです。
自分や周囲の思い込みなどに囚われてしまうと、現実を正しく理解できなかったり、感情も適切に対応できなくなってしまい、苦しさを感じてしまうこともあります。
そのような状態にあることに気づいて、思考と自分を切り離すことを認知行動療法の一つのACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)療法やマインドフルネスで行います、と熊野先生の記事にも書いてありました。
マインドフルネスで思考と自分を切り離す際には思考観察瞑想を行う、ひいてはそれが脱フュージョンにつながるという理解であっていますか?
脱フュージョンという視点を知るだけでも効果がある
松村憲:合っています。
もう少し詳しく説明すると、この脱フュージョンという視点や考え方を持っているだけでも、かなり変わってくると思います。私自身も悩みにとらわれて、脱フュージョンのことも忘れてしまっている時に、この視点がふっと思い出されるだけでも楽になることがあります。
思考=自分、ではない
人というのは無意識のうちに、自分で「自分はこういう人間だ」というふうに勝手に考え、自分自身を追い込んでしまったりしているんです。「思考内容=現実、思考内容=自分」と思っている方がほとんどだと思います。
こういった「思考内容は現実ではなく、あくまでも現実によって心の中で引き起こされる出来事」といった視点は、普通の学校教育や成長過程においてほとんど習わないですし、慣れていないと なかなか難しいですよね。
セルフコーチングのやり方でも述べましたが、問いを立てて書き出し、それによって出てくるものは思考です。その後『見返す』ことによって、書き出された思考を外側から見る感じになり「あれ、何で私ってこう思ってるのかしら?」と気付けるんです。
「何々に違いない」のように勝手に思い込み、信じている自分に気付くだけでも、思考と自分のフュージョンを切り離すことになり、脱フュージョンしていきます。
脱フュージョンには、マインドフルな観察が効果的
さらに脱フュージョンしていく上でマインドフルネスがパワフルで効果的なのは、考えや雑念が湧き続けたときに「〜と考えているに過ぎない」と常に相対化していくことができる点です。
「私はこうこうこうで、できないから」「私は何々何だから」「あの人が何々してくれないから」といった思考パターンって結構ありますよね。しかし、そういった思考にも全て末尾に「〜と考えている」とつけるだけでいいのです。
- 頭の中で考えているだけ
- それって思考にすぎない
- 思考と私は別物である
これらのことが分かってくると、脱フュージョンが起こってきます。
その結果、お悩みから解放されて、今ここの自分に戻り、次のステップも見えてくるようになるかと思います。
このプロセスは瞑想とも似ていると思います。
Source : 瞑想チャンネル for Leaders
ビジネスでも有効な脱フュージョンの効果
脱フュージョンによって心理的柔軟性を高めることは、ビジネス現場においても以下のようなメリットが期待されます。
- ネガティブな思考や感情に囚われず、自分の価値観に沿った今やるべき現実的な行動ができるようになる
- 他者からの意見や批判も冷静に聞くことができ、自分の考えを伝えられるようになる
- 次のステップに意識が向くことで、創造性や問題解決能力を高めることができる
s子:ありがとうございます、この話は次の「観照と観察の違い」にも繋がるかと思いますので、次回、引き続き伺いたいと思います。
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