瞑想が退屈で続かない人へ – プロの指導者が教える継続のための解決法

静かに座って呼吸に意識を向ける。そんなシンプルな行為が、なぜこれほど難しいのでしょうか。
グーグルやアップルといったテック企業のリーダーたちが実践し、その効果を語る「マインドフルネス瞑想」。しかし、多くの人が実践の初期段階で「退屈さ」「集中できない」という壁に直面し、継続を断念してしまいます。

本記事では、企業のエグゼクティブへマインドフルネス指導を行う松村憲氏と、20年以上の瞑想実践でエグゼクティブコーチも勤める小島美佳さんのお二人が、「退屈」を「深い気づき」に転換するための具体的アプローチをご紹介します。

マインドフルネス瞑想が退屈で集中できないのはなぜか?

小島美佳:瞑想で挫折しがちなパターンを考えてみると以下の2つのタイプに大まかに分けられます。

  1. 入口で「ただ座る」ことが退屈という人
  2. 「続けても変化がない」と行き詰まりを感じている実践者

今回は、特に1のタイプに焦点を当てて、退屈を乗り越えるための方法をご紹介します。

(2のタイプの方はこちらをチェック)

なぜ瞑想を退屈に感じるのか?

松村憲:私たちの脳は、常に新しい刺激を求めています。スマートフォンやSNSが日常となった現代では、その傾向がさらに強まっているのです。マインドフルネス瞑想が退屈に感じられるのは、実は脳の自然な反応であり、克服可能な一時的な状態だと理解することが重要です。


ビジネスパーソンが直面する瞑想継続の3つの壁

特にビジネスパーソンの場合、以下の3つの心理的壁が、瞑想の継続を妨げていると考えられます。

  1. 生産性の罠 :「何もしていない時間」を無駄だと感じてしまう傾向です。
  2. 成果主義的思考: 短期的な成果を求めすぎることで、瞑想本来の効果を見失ってしまいます。しかし瞑想は筋トレのようなもので、1ヶ月、3ヶ月といった長期的な視点で評価することが重要です。
  3. 完璧主義の落とし穴 :「正しく」瞑想しなければならないという思い込みが、かえってストレスを生む原因となっています。「瞑想に正解も不正解もありません」と小島氏は強調します。「むしろ、不完全な実践の中にこそ、気づきのチャンスが潜んでいるのです」

これらの壁は、実は瞑想の効果を最大限に引き出すための重要な気づきのポイントでもあります。


♦︎ 退屈さを乗り越えて集中力を高めるには?

小島美佳:マインドフルネスの入り口で「ただ何もせずに静かに座っていることが退屈」という人には、残念ながらこれさえやれば大丈夫!というような処方箋的な解決法はなくて、とにかく「最初は何とかそこを乗り越えてください」とお伝えしています。

松村憲:そうですね、しかし瞑想に取り組み始めた最初の退屈感を乗り越えることが、実は重要なんです。
なぜなら、神経科学の知見によれば、マインドフルネスの効果は継続的な実践を通じて脳内に新たな神経回路が形成されることで得られるからです。 (Neuroimage, 2011, Front Hum Neurosci, 2012)


「集中できない」を解決する具体的アプローチ

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小島美佳:瞑想の実践で最も多い悩み「退屈」「集中できない」問題に対して、段階的なアプローチはありますか?

松村憲:そうですね。特に初心者の方には、最初から長時間の実践を求めないことが重要です。
たとえば、3分でも1分でも良いから呼吸に意識を向ける時間を作ってみてください、とお伝えしています。「3分ならできそう」という心理的ハードルの低さが、継続の鍵となるのです。
そして、やはり継続が大切なので、今この瞬間だけに集中する・意識を向ける時間を毎日少しでも作って、騙されたと思って1週間続けてみてください。
もし、それすらも難しい場合は、「月曜瞑想」という著書でも勧められている、週の初めの月曜日に週一回だけ行うものや、または1日10秒だけ、という方法もありますので、ご自分に合った方法でやってみてください。


小島美佳:その他にも、ガイド付き瞑想の活用も効果的です。
また、正座やあぐらなどスタイルにこだわる必要はありませんので、背筋さえ伸びていれば壁にもたれかかって行うのでも十分です。大切なのは、その人に合った「続けられる形」を見つけることですから。

Source : 瞑想チャンネル for Leaders




他にも、書く瞑想・ジャーナリングや、家の中でも動作に意識を向けるだけでできる歩く瞑想もいいと思います。

松村憲:とにかく「今ここ」にいることに意識を向けて、過去や未来、やるべきことなどの雑念が浮かんできてもその度に「今ここ」に戻る訓練をすることで、「今ここ」にいる感覚を獲得し、集中力を育むことが可能になります。

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Source : 瞑想チャンネル for Leaders


マインドフルネス瞑想で広がる新たな可能性

小島美佳:私もそう思います。
興味深いことに、今回のテーマでもある瞑想が「退屈」と挫折してしまう人は、実は元々クリエイティブだったり活動的で沢山のスケジュールをこなすことが得意な方々が多いと感じています。けれども、そのサイクルだとか思考パターンだけでずっと来て、「ほんとうにこれだけでいいのかな?」と行き詰まりを感じている人こそ、マインドフルネスを続けてみてはどうですかとオススメしたいです。
なぜなら、そういった方こそ、マインドフルネスの実践で大きな気づきを得られる可能性があるからです。

s子:プロ・アスリートの方でも日常的に、あるいは試合前にマインドフルネスを取り入れ、その効果を語っている方もいらっしゃいます。またビジネスエリートなど成功された方々の多くは1分1秒も無駄にしたくないであろう多忙な人たちで、彼らが実践し続けていた理由ってなんだろう?どんな効果があるんだろう?きっと何かあるはずだ、と探究するような視点で続けてみるのもいいかもしれませんね。


♦︎ 成功者が語るマインドフルネスの効果とは

小島美佳:そうですね、ビジネスマンでもスポーツマンでも、これまである一定のパターンで成功したきたけれども「新しいパターンを手に入れたいな」「ブレイクスルーが必要だ」と思った時、一度持っているパターンを手放さないと新たなものは手に入らないですよね。ですから最初は退屈と感じても、色々と自分に合った方法を模索しつつ、効果や変化が感じられるまで頑張ってみてほしいですね。

実際、マインドフルネスを続けていくことによってほんとうに開かれてくると思いますし、スティーブ・ジョブズのような革新的な経営者がずっと瞑想や禅を実践していたのも、既存の思考パターンを超えて、新しい視点や発想を得るためだったと考えられます。


♦︎ 初心者でもできる – マインドフルな感覚を掴む 「タイガーレッスン」とは

松村憲:ビジネスパーソンのための実践的な手法として、「タイガーレッスン」をご紹介したいと思います。これは、正座や胡座といった特別な姿勢を必要とせず、短時間で効果的にマインドフルネスの本質を体得できる方法です。

小島美佳:タイガーレッスン、初めて聞きました。具体的にはどのように行うのでしょうか?

松村憲:まず、目の前に虎がいるとイメージします。ここで重要なのは、その虎を「操作」しようとしないことです。「撫でてみよう」とか「座らせてみよう」といった意図的なコントロールは一切行わず、ただ観察に徹するのです。

例えば、イメージした虎が勝手に動き出すことがあります。その時は「面白いな」と感じながら、ただ見続けるだけです。この「ただ見る」という経験が、実は私たちの思考や感情を観察する時の基本的な態度と同じなのです。

小島美佳:興味深いですね。ビジネスパーソンにとってどのようなメリットがあるのでしょうか?

松村憲:

大きく3つあります。第一に、集中力の向上です。第二に、予期せぬアイデアや直感が生まれやすくなる。そして第三に、最も重要な点として、物事を「評価・判断しない」という姿勢が身につきます。これは創造的な問題解決において非常に重要なスキルとなります。

さらに、先ほど話題に上がった「瞑想が退屈で続かない」という課題に対しても、このタイガーレッスンは効果的です。なぜなら、具体的なイメージを用いることで、「今ここ」への集中がより自然にできるようになるからです。

以下の3分程度のタイガーレッスンのガイドを録音しましたのでぜひ練習してみてください。


<松村憲さん3分間 タイガーレッスン瞑想ガイド>

Source : 瞑想チャンネル for Leaders

次回は、マインドフルネスを続けてみたものの、「続けた結果、どうなるの?」と行き詰まりを感じている方々に向けて、実践者の体験談を交えながら対談を行います。

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ABOUTこの記事をかいた人

瞑想歴20年以上。 15歳までヨーロッパで育つ。慶応義塾大学を卒業後、アクセンチュアで組織戦略・人材開発のコンサルティングに従事し異例のスピードで昇進。アクセンチュア・ジャパン 史上 最も若い女性マネジャーとして抜擢される。その後、独立系コンサルティング企業でビジネス開発に携わる傍ら、キャリアコンサルタント及びコーチとして活動。不確実な時代の波を乗りこなす事業の在り方やビジネスパーソンとしての生き方について考えはじめる。 2003年、瞑想に出会い習慣化するようになる。2010年よりビジネスの世界で活動をつづけながら、年間500名以上のクライアントへ瞑想的なテクニックを活用したカウンセリングを行っている。株式会社バランスオブゲーム代表。 監訳書:『コーチング術で部下と良い関係を築く』 共著:『「ハイパフォーマーの問題解決力」を極める』