仕事とプライベートの効果的なオンオフ切り替え:心理学者が伝授する実践的アプローチ

ビジネスの世界で成功を収めるには、仕事への熱心な取り組みとプライベート時間の充実のバランスが不可欠です。しかし、多くのビジネスパーソンが、この2つのモードを効果的に切り替えることの難しさに直面しています。

本記事では、心理学と脳神経科学の知見に基づいて、仕事とプライベートのオンオフのスイッチを上手に切り替える実践的な方法を紹介します。

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Source : 瞑想チャンネル for Leaders


オンオフ切り替えの重要性:ストレス軽減と生産性向上

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ストレスを溜め込まず、高いパフォーマンスを発揮し続けるには、仕事時間とプライベート時間のメリハリをつけることが不可欠です。最近の研究によると、勤務時間中の定期的な休息は仕事の効率と質を向上させることが明らかになっています。
また著書「神時間術」によると、ハイパフォーマーな人々は仕事中の隙間時間でもリラックスをしたり、ストレスを解放することで、上手に休息を取り、オンオフの切り替えをしているとのこと。

一方で、日本人は勤務時間中の休憩でもほとんどリラックスできておらず、ストレスを溜めやすい傾向があるとも言われています。このような状況は、長期的には生産性やクリエイティビティに悪影響を及ぼすだけでなく、ストレスや疲労も溜まってしまいます。

脳科学の観点からも、オンオフ切り替えの重要性が指摘されています。最近の研究では、重要な経営方針の決定など認知機能を多用したタスクを長時間行うと、脳内にグルタミン酸が蓄積し、脳疲労で認知機能を担う前頭葉の機能が低下することが明らかになっています。さらに、適切な休息によってこのグルタミン酸の蓄積が解消するとのこと。

つまり、勤務時間中も勤務終了後も、適切な休息を取ることができないままでいると、脳疲労が回復せず、仕事のパフォーマンスも低下してしまうのです。



このように、効果的な仕事スイッチのオンオフの切り替えは、単なるリフレッシュ以上の意味を持ちます。
では、どうすれば効率的にオンオフの切り替えができるようになるのでしょうか?そのコツは、自律神経のバランスを整えることにあります。


自律神経とオンオフバランス:心身の健康の鍵

交感神経と副交感神経の役割

自律神経は、交感神経と副交感神経からなり、それぞれが異なる役割を担っています。
交感神経は緊張や興奮の状態になると活性化され、副交感神経はリラックスや回復の状態になると活性化されます。この二つの神経がバランス良く働くことで、心身の健康が保たれています。

※注 自律神経とは

神経は「中枢神経」(脳と脊髄)と体中に張り巡らされている「末梢神経」に分けられます。
末梢神経は、さらに意思によって身体の各部を動かす「体性神経」と、
意思に関係なく刺激に反応して身体の機能を調整する「自律神経」の2つに分けられます。

具体的には、暑いときに手で仰ぐのは体性神経、汗が出るのは自律神経の働きです。

Source : 厚生労働省 e-ヘルスネット

図1:交感神経と副交感神経の関係
多くの臓器は、交感神経系と副交感神経系のどちらか一方によって主に制御されていますが、1つの臓器に対して両方の神経系がそれぞれ反対の作用を及ぼしている場合もあります。例えば、交感神経系は血圧を上昇させますが、副交感神経系は血圧を低下させます。交感神経はアクティブな方向に働くだけでなく、緊急事態には不要な消化(胃の粘膜の分泌や腸のぜんどう運動)や排尿は抑制します。
全体として、2つの神経系が協調して機能することで、体は様々な状況に対して適切に反応できるようになっています。
MSDマニュアルより引用改変)


仕事中の自律神経バランス

仕事中や日中活動をしている際は交感神経が優位になりがちです。脳幹からはノルアドレナリンが出て、その刺激を受けてさらにアドレナリンが放出され交感神経を活性化し、高揚している状態、いわゆる戦闘モードに入ります。活動する上では交感神経の働きが必要ですが、そのまま放置して交感神経が活性化したままだと副交感神経が働きにくくなり、リラックスしたり十分に休むことができません。その結果、疲れやストレスも解消されないまま蓄積し、睡眠不足に陥ったりする可能性があります。

つまり自律神経は、どちらか一方だけでなく、1日の中でもオン・オフに合わせて交感神経・副交感神経をバランス良く働かせることが大事になってきます。また、仕事モードからオフモードに切り替えるためには、副交感神経を活性化させることが必要です。

マインドフルネスは、この自律神経の切り替えや、休む・リラックスするというところで効果を発揮します。具体的には、以下の方法が有効です。

【実践】6つのオンオフ スイッチを切り替える方法

1, 身体をほぐしてリラックスを促進

仕事中は無意識のうちに身体に力が入り、緊張していることが多いです。特に首や肩、背中は凝りやすく、そのままにしておくと血行不良や頭痛、肩こりの原因となります。このような状態を改善するためには、身体をほぐすことが効果的です。

そこで仕事の合間や終了後に、簡単なストレッチを行ってみましょう。
例えば、
・首の後ろに手を当ててゆっくり回す、
・肩を上下に動かしたり、力を入れてから脱力する、
・背中を丸めたり伸ばす、伸びをする
・お腹や胸に手で触れる
だけでも効果があります。

またストレッチができない環境にある場合は、手のひらなどのツボを押してみたり、身体のどこが凝っているか意識を向けるだけでもリラックス効果が得られます。

その他にも、顔の表情を意識的に緩めることも重要です。笑顔を作ったり、舌を出したり、目を閉じたりすることで、顔の筋肉がリラックスし、心身の緊張状態が和らぎます。これらの動作は、仕事モードで高ぶっていた交感神経を落ち着かせ、副交感神経を活性化させ、リラックスモードへの切り替えを促進します。


2, 呼吸法で心を落ち着ける

呼吸は心身の状態に大きく影響しますが、多くの人は日常的に呼吸を意識することはあまりありません。特に仕事中は、呼吸が浅くなったり速くなったりしがちで、これは交感神経が優位になっている証拠です。

そこで一息入れたい時などに、意識的に呼吸を整えることをおすすめします。仕事の合間や休憩時間に、深呼吸を行ったり、ふぅーっと口から意識的に少し長めに息を吐き出したりしてみましょう。特に、吐く息を長くすることで副交感神経が刺激され、リラックス効果が高まります。

わずか1分間でも呼吸に意識を向け、呼吸を整えるだけで、副交感神経が優位になり、心拍数や血圧が下がって緊張状態が和らぎます。

Source : 瞑想チャンネル for Leaders

<呼吸に集中する瞑想ガイド 4分間>

Source: 瞑想チャンネル for Leaders


3, グラウンディング:地に足をつけて無心に

グラウンディングは、大地や地面に意識を向けることで自分の存在感や安定感を高める方法です。これは呼吸法と組み合わせるとさらに効果的です。
例えば皆さんが立っているときや座っているときに、息を吐くタイミングで足裏やお尻など地面との接点を意識してみてください。すると自然と重心が下がり、リラックス感も得られるはずです。

Source : 瞑想チャンネル for Leaders

また、歩くことや走ることもグラウンディングの一種として有効です。その際には、意識的に頭で考えごとをせず、歩いていることや走っていること自体に意識を向けます。どのように身体や筋肉が動いているかを意識したり、足の裏の感覚に注目することで、頭に偏っていた意識や血流が全身に広がり、心身のバランスが整います。

Source : 瞑想チャンネル for Leaders


4, デジタルデトックス:スマホやPCから離れる

現代社会では、PCやスマートフォンが日常生活に深く浸透し、多くの人がこれらのデバイスを手放せない状況にあります。しかし、これらのデバイスからは過剰な情報や刺激が入ってくるため、目や脳に負担をかけるだけでなく、記憶力や集中力の低下などの認知機能の低下にもつながる可能性も指摘されています。

近年ではスマホ認知症という言葉も注目されています。

スマホ認知症とは

記憶力・集中力の低下や注意力の散漫、言語障害のような認知症と同じような症状が発生します。
症状は一時的なものが多く回復することが多いものの、放置すると睡眠障害や健康障害、若年性認知症に繋がる恐れもあります。
スマホ認知症の原因はスマホからの過剰な情報収集です。

Source : 健達ネット『スマホ認知症とは?

こうした問題に対処するため、デジタルデトックスを実践することが効果的です。これは、デジタルデバイスから一定期間離れることで、ストレスを減らし、脳の疲れを解消する方法です。
例えば、仕事後はスマホやPCを使わない時間帯を設けたり、特定の日に電源をオフにするなどの工夫をすることで、集中力や創造力を高め、仕事の効率を向上させることができます。

またアメリカの起業家やCEOの間では『モンクモード』というタスクに集中する方法が話題になっており、その中でも携帯電話などを切る方法が有用と言われています。(参考記事 『起業家やCEOたちの間で人気! 生産性を高める「モンクモード」とは』)


簡単!一瞬で仕事モードをオフにする4分間瞑想

Source : 瞑想チャンネル for Leaders


5, アクティブな休憩時間の活用

休憩時間を単に過ごすだけでなく、積極的に活用することで、より効果的なリフレッシュが可能になります。過度の疲労がある場合は十分な休息を取ることが最優先ですが、それ以外の場合は、好きなことや気分転換になるアクティビティに時間を使うことが大切です。

例えば、休憩時間や仕事の区切りごとに、軽い運動をする、短時間の散歩、また本や音楽などの趣味の時間、気分転換になるアクティビティを取り入れてみてください。

マインドフルネス瞑想もうまく活用することで、短時間でリフレッシュすることができるのでお勧めです。仕事に集中していた状態から自分自身へと意識を向け、心身の状態を再認識することで、ストレスの軽減や集中力の回復につながります。さらに、ゆっくりとした呼吸により副交感神経を活性化させ、心や脳を休めることができます。

<休憩時間にオススメの聞き流す瞑想・ストレスを解放しつつ、集中力を高める>

Source : 瞑想チャンネル for Leaders


6, タスク整理による頭の切り替え

多くのビジネスパーソンが、大量のタスクに追われ、優先順位をつけるのに苦労しています。さらに、未完了のタスクが残っていると、仕事後のプライベートの時間にも気が散ってしまい、十分なリラックスができない状況に陥りがちです。

この問題を解決し、効果的にオンオフを切り替えるために、To-doリストの作成とタスク管理が非常に有効です。
書き出すことで頭の中の思考を整理し、雑多な情報を頭の中に留めておく必要がなくなります。これは「書く瞑想」と同様の効果が期待でき、心理的なストレスの軽減にもつながります。

さらに、仕事の優先度を明確にし、仕事とプライベートの時間を意識的に分けることで、よりスムーズなオンオフの切り替えが可能になります。タスク管理を効果的に行うことで、仕事時間中の生産性が向上し、同時にプライベート時間の質も高まります。

Source : 瞑想チャンネル for Leaders


おわりに

この記事では、仕事モードからオフモードに切り替えるための6つの方法をご紹介しました。これらの方法は、いずれも日常生活の中で簡単に実践できるものばかりです。まずはできそうなことから少しずつ試してみてください。

AI技術の進展により、私たちに求められる仕事の質と量は日に日に高まっています。しかし、そのような状況だからこそ、休息の重要性と効果を深く理解し、実践することが重要です。適切なオンオフの切り替えは、単に疲労回復だけでなく、長期的な仕事のパフォーマンス向上にもつながります。

ストレスを軽減し、創造性を高め、持続可能なワークライフバランスを実現するために、これらの方法を日々の生活に取り入れてみてください。効果的なオンオフの切り替えは、あなたの仕事の質を高め、同時に充実したプライベートライフを送るための鍵となるでしょう。

(編集 : s子)

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ABOUTこの記事をかいた人

大阪大学大学院博士前期課程修了。認定プロセスワーカー。臨床心理士。 瞑想経験20年以上。 マインドフルネス瞑想の土台でもある、10日間のヴィパッサナー瞑想リトリート(※)に15回以上参加。タイ、インドにて長期トリートで修行を積む。  深層心理学のユング心理学にルーツを持つプロセスワークの専門家。身体性やマインドフルネスを早くより研究、実践し、個人の心理のみならず、関係性やグループ、組織を対象に仕事をしている。ビジネスシーンにおいては、プロセスワークのコーチングや、組織開発やコンサルティングに従事。企業におけるマインドフルネス研修や、大手フィットネスクラブのマインドフルネス・プログラム開発や指導者養成も行う。著書に『日本一わかりやすいマインドフルネス瞑想"今この瞬間"に心と身体をつなぐ』BABジャパン2015、共訳書にアーノルド・ミンデル著『プロセスマインド』春秋社2013、ジュリー・ダイアモンド著『プロセスワーク入門』などがある。

(株)BLUE JIGEN 代表取締
バランスト・グロース・コンサルティング(株)取締役
(一社)日本プロセスワークセンター ファカルティ
日本トランスパーソナル学会 常任理事

(※) 10日間 話さずに座り続けるもの