マインドフルネス瞑想の実践において、多くの人が共通の壁に直面します。それは中々変化の実感が得られないこと、そして「ただ座る」瞑想の退屈さで継続できないことです。
しかし、マインドフルネスの真価は継続的な実践にこそ宿るのです。
本稿では、ビジネス界で活躍しながら20年以上のマインドフルネス実践を重ねた2人のベテラン、小島美佳と松村憲が、その長期的な実践によって得られる効果と退屈さを克服するコツを語ります。
私たちの経験は、マインドフルネスが単なる一時的な気分転換ではなく、ストレス管理、集中力向上、対人関係の改善など、多岐にわたる効果をもたらすことを示唆しています。習慣化の過程で遭遇する停滞感や困難は、実は成長の兆候なのです。本記事を通じて、読者の皆様は継続の価値と、それがもたらす予想外の恩恵を理解されることでしょう。
目次
マインドフルネスを20年以上続けた結果がもたらす変化
小島美佳:前回の記事の続きとして、「マインドフルネスの次のステージ」についてお話しします。
ある程度続けてみたものの、「結局これで何が変わるの?」と感じている方や、行き詰まり感を抱えている方にとって、今回の内容は特に参考になるのではないでしょうか。
マツケンさん、そういった方々へのアドバイスはありますか?
♦︎ 「修行」とは異なるマインドフルネスの意義
松村憲:この点は美佳さんも同じだと思いますが、マインドフルネスはお坊さんの修行とは異なり、明確なゴールが存在ません。そのため、ただ座り続けていると次第に退屈さを感じることもあるかもしれません。
実際、進展のないまま「これが大事なんです」とマインドフルネスを教え続ける人や、変化を感じないまま座り続ける人も少なくありません。そういった状況で興味を失い、離れていく人も多いのです。
マインドフルネスは「無」になることがゴールではない
しかし、マインドフルネスの本質は単に「無」になることではありません。継続的な実践により、マインドフルな脳神経回路が形成され、認知や思考・感情の変化が起こることが脳科学的にも実証されています。この新たに形成された神経回路と得られた感覚を日常生活に活かすことで、より顕著な効果や変化を実感できるのです。
♦︎ マインドフルネスで日常生活がパワフルに – 実践者に聞く具体的な活用法
松村憲:僕が強調したいのは、マインドフルネスの効果がビジネスシーンに限らず、人間関係や日常生活の様々な場面で発揮されるということです。日常生活の中でマインドフルネスを実践することで、より充実した人生を送ることができる、と思っています。
小島美佳:確かに最初は、多くの人は集中力向上や睡眠の質改善といった効果を期待して始めることが多いと思います。実際、座っているときの静かなマインドが作り出せるようになってくると、ちょっと気持ちをリセットをさせたり、集中力の向上、寝る前に瞑想することで睡眠での回復効果が増す、といった効果を実感できるでしょう。
しかし、マツケンさんもおっしゃるように、瞑想の継続で得られたマインドフルな状態を日常生活でも維持できるようになってくると、さらに大きな変化を感じられるはずです。そのためには、マインドフルネスを通して自己を深く探求し、自分自身にどのような変化が起きているのかを観察することが大切です。実践を重ねるごとに、新たな自己理解が深まり、より豊かな日常が送れるようになります。
♦︎ 瞑想の効果は内省プロセスにある
小島美佳:例えば、通常ならすぐに反応的になってしまうようなビジネスシーンでも、マインドフルネス瞑想時の状態をほんの30%でも自分の中で保つことで、自分自身を全く新しい視点で見ることができます。その結果、新たな発見が生まれたり、自分自身や周囲の状況に対する理解が大きく広がったりするのです。
松村憲:今の美佳さんの話を伺って、改めてマインドフルネスの重要性を感じました。
マインドフルになることで変化にも気づき、その内省プロセスも日常生活に応用できることが非常に重要です。
瞑想は座って行うだけでなく、日常生活での気づき増やし、結果として豊かさを生み出すことができるのです。ぜひ筋トレのように継続的に取り組み、自己成長や仕事への取り組みに活かしていただきたいと思います。
美佳さんのお話を伺って、改めてマインドフルネスの重要性を感じました。マインドフルになることで変化にも気づき、その内省プロセスを日常生活に応用できることが非常に重要です。瞑想は座って行うだけでなく、日常生活での気づきを増やし、結果として豊かさを生み出すことができるのです。ぜひ筋トレのように継続的に取り組み、自己成長や仕事への取り組みに活かしていただきたいと思います。
20年続けた瞑想実践者の体験談
♦︎ 自分が変われば人間関係も変わる
ネガティブな思考パターンに気づける力が身につく
s子:私の場合、マインドフルネスの実践を通じて、自分を罰するようなネガティブな思考パターンに気づく力が身についてきました。例えば、忘れ物をした際の自己批判的な思考に気づき、「また自分を罰しているな」と認識できるようになりました。そこから、より建設的な思考へと切り替えられるようになったと実感しています。
コミュニケーション力の向上にも役立つ ! 新たな発見も
小島美佳:私の経験も似ていると思います。
家族との関係において、イライラを感じる前にマインドフルネスの感覚を思い出し、「あれ?なんかちょっとイラッとしてない?」と自分の感情に気づくことができるようになりました。自分が気づいたからこそ、より穏やかな言葉遣いを意識的に選択できるようになり、家族も以前のようなケンカ腰を取らなくなってきました。
このサイクルを繰り返すことによって、面白いことに家族との関係性にも良い変化が現れてきました。このような実験をたくさん積み重ねていくことは、非常に興味深い過程だと感じています。
松村憲:わかりやすい良い例ですよね。
一般的に、不快な状況では相手に変化を求めがちですが、それはうまくいかないことが多いものです。しかし、美佳さんの話のように、自分自身が異なるパターンを持ち込むと、不思議と相手も変化するのですよね。
自己を丁寧に見つめ直し自己成長につながる
小島美佳:瞑想の継続により、自分自身をより丁寧に観察する力が養われます。
これにより、自分が持っている根深いパターンに気付くことができたり、成長の種となるものを発見したりすることができます。往々にしてこれらは隠れていて見えづらいものですが、マインドフルネスの実践はそれらの種を探す助けとなります。
♦︎ マインドフルネスが鍛えるリーダーシップ
松村憲:ビジネスパーソンやリーダーにとって、マインドフルネスによって培われる要素は必須になってくると思っています。自身のリーダーシップを振り返り内省することは、ほぼ瞑想に等しいと言えます。この内省プロセスには、心理学モデルの活用も有効です。
人は外部からの刺激に対して、内部で感情や思考などの反応を生み出し、それをアウトプットしています。人間関係においても同様で、マインドフルネスが身につくと、この過程をより意識的に観察し応用できるようになります。
例えば、誰かから何かを言われた際、そのインプットを「きた」と認識できるようになり、自分の内部で起こる反応を拡大して詳細に観察することができるようになります。さらに、「なぜ自分がこのような反応をするのか」という内省が可能になり、一拍おける、一瞬立ち止まって考える余裕が生まれます。この気づきは、これまでとは異なる選択を可能にし、自己変革のきっかけとなります。
気づきを促し内省力を高める
松村憲:例えば、「こういう言動をする人は嫌い」という固定観念があった場合、通常はそれに対して否定的な反応を示すかもしれません。しかし、マインドフルネスの実践により「ちょっと待てよ」とその反応を一旦手放し、相手の発言を客観的に聞くことができるようになります。すると、実はその人は自分のことも心配してくれているのかもしれない、といった新たな解釈が可能になります。
このような思考の変化は、自分の言動にも影響を与え、実際の変化をもたらします。
自分自身を振り返っても、このような気づきが高まっているからこそ、変化を実感できています。リーダーシップのコーチングにおいても、同様に内省と気づきが変化を促進していることを実感します。これらの変化の根底にあるのは、マインドフルネスの応用である気づきと内省力なのです。
マインドフルネス実践を発展させる秘訣 ! 行き詰まり解消法
♦︎ 「ただ座る」では進展しない? 効果的な実践方法とは
松村憲:先ほどのマインドフルネスの応用についての話は非常に重要です。「マインドフルネスをやり続けているとこうなります」という固定観念だけを信じて実践していると、解消されない問題が多く残ってしまいます。
例えば、自分の中で起きているネガティブな思考プロセスに気づいても、それを放置してしまうことがあります。あるいは、自分自身に駄目出しを続けて、それに反応し続けてしまうこともあります。これは辛い状況ですよね。
小島美佳:そうですね。マインドフルネスだけでは、不快な感覚を観察するだけになってしまうこともありますね。
限界を感じたら、心理学の知見も取り入れよう
松村憲:一方で、精神的に症状が重い方にとっては、マインドフルネスだけをやっていると、負担が大きくなる場合もあります。そういった状況では適切な支援が必要であり、心理学的アプローチなど、より包括的な取り組みを行うことで、より容易に困難を克服できる可能性があります。そして、それによって実践がより楽しいものになっていくと思います。
s子:確かに、瞑想中に身体の痛みを感じると、そちらに意識が向いてしまうことがあります。しかし、ガイドによって「リラックスすることに集中して」と促されると、体の緊張に気づき、力を抜いて思考から離れることができ、いつの間にか痛みも消えていたりします。
こういった切り替えも経験が重要だと思うので、初めて瞑想する場合や一人で実践する際は、マインドフルネスだけで全てを解決しようとせず、ストレッチや散歩などで気分転換をしたり、心理学や瞑想のプロの方からアドバイスを受けたりするのも良い方法だと思います。
♦︎ 仏教観にとらわれすぎず、日常生活にマインドフルネスを活かそう
松村憲:一般的に紹介されているマインドフルネスの多くは、仏教をベースにしています。そのため、実践が座ることや特定の方法に集中してしまい、心理学な側面が抜け落ちてしまうことがあります。
仏教も極めて心理学的でもありますが、俗世・現代を生きる私たち個々人の人生にはそこまで関与していないので、日常生活にそのまま適用するには限界があります。「この世をよりよく生きよう」という観点では、物足りなさを感じたり、面白くないなと感じられる方もいると思うので、より日常生活に取り入れやすい実践的なアプローチが必要だと考えています。
小島美佳:そうですね、多くの人はいわゆる山に入って悟りを開くことを目指しているわけではないと思うので、、、
マインドフルネス瞑想で得られた穏やかさや客観的な感覚を日常生活の中で応用してみて、そこで起こる変化を楽しむことで、どんどん効果も感じられ、身になっていくって思います。
ですから、新しく始めた際に感じた「瞑想ってこんな感じなのかな」という感覚や、よく言われる『無』のような状態、あるいは今までとは少し異なる新しい感覚を得られたかもしれないと仮に思ったとしたら、その感覚を日常生活の中で意識的に呼び起こし、再び味わってみる、ということをお勧めします。
松村憲:そうですね。
「ここから先は自己成長だよね」「ここから先は自己解放だ」といった個人的な成長だけでなく、他者やチーム、そして組織への貢献を考える際にも、「この態度が必要だよね」とか、そんな風にマインドフルネスで得た感覚を生活や仕事に応用していけるようになると、より豊かな経験ができるのではないでしょうか。
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